またか、である。
国土交通省発注の公用車管理業務指名入札をめぐる談合疑惑で、公正取引委員会は職員が業者に情報を漏らしていたとして官製談合防止法を適用し、省に改善措置を要求した。
07年には水門設備工事で同法が適用され、08年は北海道開発局をめぐる河川改修の談合で同省現職局長が札幌地検に逮捕されている。そして今回と、同省を舞台にした談合不祥事は3年続けて摘発された。
国の公共事業発注の約8割を担当し、談合一掃の先頭に立つべき巨大官庁が問題の常連のように不正を指摘される。公共事業全体の信用を失いかねない。省は「国民の信頼を著しく裏切り、深くおわびします」としたが、何をどう改めるかを早急かつ具体的に示すのが責務だ。
本紙は公用車談合疑惑を提起して追及報道し、その構造的な問題を指摘してきた。役所とOB天下り先業者とのなれ合い。公用車管理業務が果たしてどこまで必要不可欠なものか不透明であることなどだ。
公取委によると、談合を主導したとされる3社は、06年度分でみても8割を受注し、昨年3月時点で計50人が天下っていた。あからさまな「天下り談合再生産」の構図だ。報道で今年、一般入札が導入されたところ、大幅に落札額が下がった。
公用車管理業務は運転と点検である。どれほど外注の必要があるのか、なお徹底的に検証しなければならない。昨秋、国交省は指摘を受けて公用車4123台(06年度末)のうち管理業務を外注していた2656台の半数以上を10年度までに削減すると表明した。できるだけ公共交通機関を使うなど民間なら当然過ぎるような手法だ。旧来の高額落札や公用車の無駄な使用が思い知らされる。
また指名入札は年度末ぎりぎりの3月末で、4月1日には必要人数の運転手を業者がそろえていたこと自体不自然だ。「事前決定」が半ば常識だったという。言い換えれば、それをはばからずやっていたことが談合の常態化を示し、公共事業に携わる者の感覚のまひを端的に物語る。
不況の追加経済対策で、前倒し実施など公共事業拡大が進められる。そこに現職官僚とOBの「天下りなれ合い利権」が含まれていると疑われたら、景気政策全体への信頼や期待さえ揺らごう。自省すべきだ。
なぜ談合体質がはびこり、これまでも発覚の度に「改善」を約束しながら繰り返したのか。OB再就職先と官庁発注事業の関係に新たに実効的なルールを設けられないか。公取委の改善措置要求に応え、不正の経緯をつまびらかに公表し、具体策を引き出して提起しなければ、「またか」の懸念は消えない。
毎日新聞 2009年6月25日 東京朝刊