2009年6月24日0時6分
鳩山前総務相は西川善文日本郵政社長の続投を批判して「正義の問題」と発言した。麻生首相は問題が何かは全く関心がないかのように「政府が民間会社に介入するのはいかがなものか」と言うだけであった。このように政権政党内で問題がすれ違い明確な討論もなく、筋の通った合意もない。このような状況を異常と言わずして何と表現すればよいのか。
今回の問題の出発点は、かんぽの宿の資産一括売却問題である。たたき売り価格での一括売却は不透明だという指摘を含む業務改善命令に対して、24日にも提出される報告書において西川社長はすべてを透明にできたかという点をこそ問うべきではないか。
これは国民資産の処分をめぐるステークホルダー(利害関係者)への説明責任問題であり、社会的責任問題でもある。さらに、これは同時にコーポレートガバナンスという現代企業経営の基幹的テーマでもある。単なる正義、非正義の問題といった大岡裁き的問題にしてはいけない。それに対して「民間に介入するのは……」というコメントではその知性や常識のレベルが疑われるであろう。
社長続投が是か非かという議論だけが先行したが、この報告書が、不適正な資産処分の責任の所在を明確にしたのか、また、社会的責任も含め納得に足るものであるかを問うべきである。これは民間、政府のいかんにかかわらず、株主なら最優先に問うべきことであろう。経営者が責任をもってこの問いに答えているなら続投させるし、答えられなければ解任する。まさにこのような正常なコーポレートガバナンスのプロセスが日本郵政という株式会社に行使できるのかが現在問われている。(龍)
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「経済気象台」は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです。