政府が「骨太の方針2009」で社会保障費の年二千二百億円抑制方針を断念した。公共事業費など他の分野でも歳出拡大圧力は強い。政府は歳出増への新たな歯止め作りを急がねばならない。
高齢化に伴う社会保障費の自然増は毎年約一兆円に及ぶ。放置すると際限なく膨らんでしまうので、自然増分を五年間で一兆一千億円(地方を除く)削減する方針は三年前の骨太06で決まった。
以来、骨太06が歯止めになって年二千二百億円の削減を続けてきたが、実質的には昨年の段階で限界を迎えていた。昨年は後発医薬品の活用で二百三十億円を削減したが、残りは年金特別会計の“埋蔵金”取り崩しなどで賄ったにすぎない。
本来なら、社会保障費だけでなく公共事業費などその他の歳出も含めて、もっと早い段階で実効性ある新しい歳出削減の枠組み作りに着手すべきだった。
ところが、折からの経済危機で歳出拡大を余儀なくされたと思ったら、一転して税制の中期プログラムで増税への思惑が先行し、中長期の歳出削減を展望する論議はなおざりにされてしまった。
今回の骨太09をめぐる政府・与党のどたばたぶりは、そのつけが一度に回ってきた感がする。
カネは天から降ってこない。二千二百億円の抑制が現実的でないというなら、政府・与党は一兆円の自然増をどう賄うのか、あるいは大胆な制度見直しに進むのか、国民に持続可能な財政と社会保障のあり方を提示すべきだ。
来年度予算編成はこの後、主要経費について上限を定める概算要求基準(シーリング)作りに入る。社会保障費の抑制方針が崩れたことで、その他分野でも関係省庁や与党内の族議員から歳出増の圧力が高まるのは避けられない。
衆院解散・総選挙を控えているだけに、公共事業の3%削減も風前のともしびだ。当面、来年度はどうするのか、中長期の議論とは別に歳出抑制の新たな工夫も必要だ。社会保障をアリの一穴にしてはならない。
今回の決着は小泉純一郎政権からの遺産ともいえる骨太06を実質的に見直す重要案件であったにもかかわらず、麻生太郎首相は指導力を発揮した形跡がない。
いかにも政権末期を感じさせるが、近い将来の総選挙では社会保障のあり方や財政再建、さらには来年度予算編成への考え方も必ず問われる。それは民主党はじめ野党にとっても同じである。
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