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【ドラニュース】


<旬撃−竜戦士を直撃> ブランコ大活躍の裏側語り尽くした

2009年6月24日 紙面から

4回に天井スピーカー直撃弾を放つブランコ=5月7日、ナゴヤドームで

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 リーグ2冠となる19本塁打、50打点と大活躍している中日の新外国人、トニ・ブランコ内野手(28)。5月7日の広島戦(ナゴヤドーム)で天井スピーカー直撃弾、翌8日の巨人戦(東京ドーム)では看板越えアーチを放つなど、圧倒的なパワーでも話題を振りまいている。交流戦では11発、24打点でともに両リーグを通じてトップ。すさまじい打棒の裏には何があるのか、本人を直撃した。

 昨季まで主砲を務めていたウッズの代役候補として入団したブランコ。開幕直後は日本の野球に戸惑いがあったのか、打率2割1分台にまで落ち込んだが、5月に入り持ち前のパワーを発揮できるようになった。打率3割6分5厘、8本塁打、21打点で月間MVPの有力候補に。交流戦でも11発24打点と大車輪の働きをした。すっかり日本の野球になじんできた。

 「4月はまだ技術的なことでちょっと苦しんでいて、打つときの腕の使い方とか、足のステップのバランスとか。自分のことばかりで、投手に対して100%集中できていませんでした。5月に入ってから、技術的なことがしっくりきたんです。少し、オープンスタンス気味にしてリズムが出てきたのが、4月と5月以降の違いですね」

 開幕直後の不調の大きな原因は、スクエアスタンスにあった。日本の打者の多くが、スクエアで構えていたのを見て、見よう見まねで試したが、合わなかったのだった。「右打者なら右足に体重を残すという、日本の体重移動の方法をまねしたかったんですけど…」ブランコはもともと、オープンスタンスで構える選手だったという。

 「沖縄のキャンプで日本のスタイルに合わせようとして、スクエアスタンスを一生懸命、練習しているうちに打ち方を忘れてしまって。結果が出なかったんです。それで落合監督や石嶺打撃コーチにアドバイスをもらって、話し合って元に戻すことを決めたんです。僕は投手が足を上げたら、自分もステップするという打ち方ですけど、オープンスタンスにしたら、僕の場合はリズムが取りやすくなったんです」

落合監督から打撃指導を受けるブランコ(左)=4月13日、甲子園室内練習場で

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 落合監督ら首脳陣の意見と真正面から向かい合った。自分で考え、周りの意見も取り入れた。だから成長でき、日本の野球になじめたともいえる。球界には、プライドの高さからか首脳陣の助言をあまり聞かない外国人選手も見られるが、ブランコは違う。なぜか。実はオープン戦期間中、落合監督についていくことを決めた瞬間がある。

 「ナゴヤドームの打撃練習場に呼ばれて、落合監督がアルバムを持ってきてくれたことがあるんです。100枚くらいですかね。落合監督の現役時代の写真がたくさんあって。素晴らしい打者だと分かりました。中には体を開いて打ったものもあったんですよ。この瞬間、しっかり監督の話を聞いていこうと思いました。もともと僕は人のいいところは、聞くようにする性格ですけどね」

 落合監督だけではない。日本の野球になじむべく、以前から活躍している先輩助っ人の話も聞いた。巨人のラミレス。今年で9年目になる強打者。本塁打王1度、打点王3度。昨季はMVPに輝いた。来日してから存在を知ったというが、オープン戦期間中に携帯電話の番号を交換し、相談したという。

 「結果が出ず、悩んでいたことがあって。そんな時、ラミレスが『しっかり準備すれば大丈夫』と励ましてくれたんです。それで安心して野球に集中できました。大好きなキューバ料理のお店も教えてくれました。ライバルのチームですけど、僕の中ではカリスマ的な存在というか、本当に尊敬していますよ」

 野球だけでなく、食べ物にもすっかり慣れてきた。食事が合わなければ長期間、活躍するのは難しくなる。逆に言えば、食事が合えば、それだけ成功の可能性は大きくなる。ブランコは後者になれた。日本での行きつけのお店もできた。

 「最初は味がちょっと合わなく感じたり、塩が少なかったり、野菜が多く感じたりしたこともありますけど、最近は特に問題ないです。奥さんもアジア的な料理が好きで、今は日本の食事を楽しんでいます。自宅の近くにある焼き肉屋さんがすごくおいしいんですよ。デラロサに教えてもらって、家族とよく行くんですけど、お店の人にもよくしてもらって。(母国のドミニカ共和国の首都)サントドミンゴに帰った気がしています」

 たぐいまれなパワーで、話題にもなった。5月7日の広島戦(ナゴヤドーム)では天井のスピーカーに当たる推定160メートル弾。ホームランボールとバットは、ドーム内のドラゴンズミュージアムに展示されている。パワーの源を聞いてみた。

 「神様のおかげというのが一番大きいんですけど、子どものころから常に100%の力でバットを振るようにしていましたよ。それがよかったのかもしれません。ウエートトレーニングはあまりやらないんですよ。否定するつもりはないですけど、僕は週3回ほど、軽く調子を整える程度。腕立て伏せなど自分の体重や自然のものの力を利用した筋力トレーニングは、多少やっていますけどね。でもウエートをたくさんやったタイロン(ウッズ)がすごく成功していますし、どちらがいいとは言えませんけどね」

 まだシーズンを終えたわけではないが、日本で一定の成功を収めたともいえるブランコ。次のステップをどう考えているのか。タンパリング(不正な事前交渉)に当たるおそれがあるので、オファーがあったわけではないが、メジャー球団が興味を示しているという情報も耳に入っているとか。それでも来季も中日でプレーしたい気持ちが強まっているという。

 「自分は今28歳だし、(日本で)あと5年、7年はやりたいと思っています。もちろんチームが必要としてくれて、自分も、今後も活躍をしないといけないですけどね。アメリカでやらないかという誘いのようなものがあるにはあるんですけど、やっぱりそれじゃなくて、日本でやりたいですね。正直、日本はお金もいいですし、お金がいいのはいいモチベーションになりますよ。やっぱりプロですからね」

 日を追うごとに日本の野球や生活に慣れ、成績を伸ばし続けているドラゴンズの新主砲。どこまで進化するのか、今後も目が離せない。

 (構成・清水裕介)

◆<取材後記>ご近所さんです

 実はブランコと僕はご近所さん。自宅近くのスーパーからの帰り道で自転車に乗っていたとき、笑顔で家族と歩いている姿を見かけたこともある。今回のインタビューでは、デラロサに連れていってもらったという、おいしい焼き肉店を教えてくれた。仕事で取材したのに、ちょっぴり役得をした気分ではある。

 「味はおいしいし、経済的にもいいお店だよ」。財布の心配までしてくれて、本当にありがとう。今季入団したブランコと同じく、僕も今年からドラゴンズ担当になり、名古屋に来たばかり。同じものを食べ続けたら、僕も1年目から活躍できるようになるかも!?

 (清水裕介)

 

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