テレビ通販大繁盛! 対面以上の双方向重視が視聴者を動かす東洋経済オンライン6月11日(木) 13時12分配信 / 経済 - 経済総合
成長が続くテレビ通販。ここ1〜2年伸び率は鈍化しているが、前年割れが常態化する他の小売業態に比べ、その元気さが目立つ。業界最大手、ジュピターショップチャンネル(JSC社)の売上高は1000億円超、5年間で2.6倍になった。 テレビ通販といえば、スタジオでの演出に目が行きがちだ。が、JSC社の林賢太郎テレビセールス統括にいわせると、出演者はアンカーでしかない。 生放送のスタジオと別フロアにある副調整室。テレビモニターやパソコン画面が並ぶこの部屋に黒子がいる。「残り600!」「コートの裏地をよく見せて!」。部屋の最後方に陣取るセールスプロデューサー(SP)が、電話やネットの受注状況、コールセンターからの問い合わせなどに応じて、矢継ぎ早にスタジオに指示を出していく。 コールセンターの応対が追いつかないと見るや、ネットの窓口への誘導をキャストに伝える。「SPがお客様の反応を見ながらアピールの仕方を変える。混んできたら新しいレジを開けてお客様を誘導する。SPは店長なんです」(林氏)。 番組ができるまでには多くのプロセスがある。番組企画を勘案しながら、マーチャンダイザー(MD)が商品を買い付ける。スーパーバイジングプロデューサー(SVP)は番組コンセプトを練り上げ、ビデオ素材やスタジオでの実験を準備する。 SVPを束ねる堀切浩一テレビ制作部マネージャーは、かつてダイソン製の掃除機販売で、壁とタンスの間に小型カメラを仕込んだセットを用意。スタジオ実演でその吸引力を視聴者に“見せつけた”。1日で掃除機6億円以上を売り上げ、堀切氏は社内の賞を獲得した。 ■人と機械のタッグが支える最先端の物流インフラ どれだけ上手に売ろうとも、商品を届けるまでに何日もかかったり、商品を違えたら返品や顧客を失うことにもなりかねない。 JSC社の今井敏夫物流センター所長は「物流に求められるのは柔軟性と高品質、高効率」と説明する。 通常、深夜零時までに注文を受けた場合、翌日の夕方5時までにセンターから商品を出荷する。1週間に約700の多種多様な商品、日によって2万〜10万個の出荷量の変動にも対応しなければならない。今後の成長に備え、拡張性も必要だ。 千葉・習志野市にある物流センターでは、最先端の自動装置と人間を組み合わせ、こうした困難な要求に応えている。深夜、自動倉庫が翌日配送する商品を出荷棚に移し、出荷しない商品を保管棚に戻す。 メインフロアで活躍するのはハイテクのピッキングカート。多様な商品アイテムのピッキングは人間の役目だが、最大30人分の注文に対応できるカートが最適ルートを表示し、ピッキング時にはバーコードを使ったチェック機能で、効率化とミス回避を実現している。 梱包でも同様だ。単品の梱包なら自動で対応できるが、複数商品の同梱なら人の手に頼らざるをえない。その際でもバーコードでのチェック機能を活用し、間違い発生率は限りなくゼロに近い。ちなみに同梱されるカタログ類も顧客ごとに変えている。ほかにも、複数商品を最適な一つの箱に詰め込む工夫や、小さい商品でもすぐに見つけられる梱包法、端材の再利用など小さなカイゼンを続けている。 2007年にエクササイズDVD、ビリーズブートキャンプを大ヒットさせたオークローンマーケティング(OLM社)。同社は海外のヒット商品を独占販売するが、最重視するのは日本の顧客の反応だ。 ■携帯との連携に走るOLM すべては顧客との関係強化 徹底的にテストマーケティングを繰り返し、プロモーション方法を検討する。ここで活躍するのがコールセンター。OLM社は小規模だった00年から、24時間運営の自社コールセンターを置いて、直接顧客と対話してきた。OLM社のハリー・ヒル社長は「今では毎日1万人の顧客と話している」と胸を張る。 コールセンターを通じて顧客との関係を強化する。口で言うのは簡単だが実現は難しい。「オペレーターは合理的に作られた応答集に従うが、時には自分の経験からアドバイスする臨機応変さが必要。丁寧でなければならないが、丁寧なだけでもいけない。何より正確性が大事だがスピードも大切。加えてエンターテインメント性も欲しい……」(同)。 そのOLM社は顧客との関係強化に新しい一歩を踏み出した。この4月にNTTドコモから310億円、51%の出資を受け入れた。「携帯を使えば、お客様一人ひとりとの関係を強化できる」(同)。 テレビ通販は顧客と直接対面できないゆえに、一般小売業より顧客との関係構築に貪欲に取り組んでいる。その姿勢が不況下でも強い理由かもしれない。 (週刊東洋経済) 【関連記事】 ・ 業界異端児・大阪ガスの「オール電化」切り崩し大作戦! ・ パイオニアまで救うのか? 問題山積の公的資金による資本増強 ・ 490円商品も拡充! ファストリ傘下のジーユーが「990円ジーンズ」に続く超低価格商品発売 ・ ブックオフへ出資、出版連合6社の狙い ・ 一匹狼ヤオコーの大一番、都心進出に名乗りを上げる驚異の地場スーパー
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