【第2回】 2009年05月12日
グーグルが「和解」で膨大なコスト負担しても得たいものとは
前回はグーグル和解問題の概要について説明しました。2月末に和解案に基づく告知が出て以来、日本の出版社、著作権者の団体は情報収集に奔走し、説明文書が乱れ飛ぶ混乱した状況が生じています。当初、和解からの離脱(オプト・アウト)期限として設定されていた5月5日までに態度を決するのは、時間的にかなり厳しいというのが関係者の共通した認識でした。これは、どうやら世界各国とも似たような状況だったのか、タイムリミットが迫る先月末、急遽離脱期限が9月4日に延長されることになりました。
日本での動きとしては、日本文芸家協会が、同協会に管理を委託する作家ら2200人がデータベースからの著作物の削除を希望していることを明らかにしているほか、詩人の谷川俊太郎氏らが参加する日本ビジュアル著作権協会は、4月25日の段階で、和解自体から離脱する意向を表明しています。各出版社は、おおむね和解には応じた上で、著作権者の意向を踏まえながら個別に対応を考えていく模様です。
このあたりの対応は今後逐次見ていくつもりですが、今回はこの和解によってグーグルがどのような権利を得ることになるのかを見ていきたいと思います。一体何が行われるのかを正しく把握しない限り、適切な対応はできないだろうと思われるからです。
デジタル化した本を
どのように使うのか
この和解が最終的に決着した時点で、グーグルは、グーグルと契約している図書館の蔵書すべてをデジタル化しデータベース化する権利を持つことになります。では、グーグルはこの権利をどのように使うつもりなのでしょうか。和解案にはいくつかのバリエーションが明記されていますので、それを見ていきましょう。
まずは「表示使用」です。文字通り「本」の中身を画面等に表示して読むことができます。
具体的には、「本」全体の画面での閲覧、4頁までのコピー・ペースト、20頁までの印刷ができます。ただしこれは1回の操作での上限であり、何回でも操作することを厭わなければ本全体をコピペまたは印刷することが可能となります(印刷には「透かし」が入るようです)。
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村瀬拓男
(弁護士)
1985年東京大学工学部卒。同年、新潮社へ入社。雑誌編集者から映像関連、電子メディア関連など幅広く経験をもつ。2005年同社を退社。06年より弁護士として独立。新潮社の法務業務を担当する傍ら、著作権関連問題に詳しい弁護士として知られる。
グーグルの書籍データベース化をめぐる著作権訴訟問題は、当事国の米に留まらず日本にも波及している。本連載では、このグーグル和解の本質と、デジタル化がもたらす活字ビジネスの変容を描いていく。