【第41回】 2009年05月29日
タイムワーナーがCATVに続きAOLも分離へ
メディア・コングロマリットは死んだのか?
いずれにしても、1989年から米国のエンターテイメント業界を支配してきた垂直統合型メディア・コングロマリットの代表とも言うべきタイムワーナーが20年の歴史を閉じ、メディア/コンテンツ業界のコアコンピタンスであるコンテンツ制作部門に特化を始めたことは、特筆すべきことです。ネットのメディア/コンテンツに対する破壊力の凄まじさが改めて示されたと言えるのではないでしょうか。
ネット上での新たな囲い込みの進展
一方で、米国のメディア・コングロマリットの中には別の動きも起きています。“オープン化されたネット上での囲い込み戦略”とでも表現すべきかもしれません。
ウェブ2.0の狂騒の最中、メディア・コングロマリットの一翼を担うテレビ局がネット上で取った戦略は、出来るだけ多くの動画サイトに番組を提供して自社の番組を見る目の数を最大化する、というものでした。これは、ネット上では基本的に無料で番組が提供される中で、ネット上の広告収入を最大化しようというものでした。
そうした中、四大ネットワーク局(日本でいうキー局)のうち二つ(NBCとFox)が共同で「Hulu」という動画サイトを1年ほど前に開設しました。リアルの世界では自前のブランドの流通経路を持つメディア・コングロマリットが、ネット上では共同で新ブランドのチャンネルを立ち上げたのです。
今やHuluは、テレビ番組などの“プロのコンテンツ”を提供する動画サイトとしては全米で最も有名かつ成功したサイトとなりましたが、4月末になってディズニーがHuluの株式の30%を取得し、傘下のテレビ局ABCも番組を提供することになりました。米国の四大ネットワーク局のうちCBS以外の三局が同じウェブサイトで番組を提供することになったのです。
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岸 博幸
(慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授)
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。
メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。