【第187回】 2009年06月08日
不況を反映し、安くて手軽な「無人カフェ」が京阪神でブーム
相変わらず不景気の昨今、カフェでちょっと一休みの数百円も惜しいと思う人は多いだろう。しかし自動販売機やコンビニの前での立ち飲みはちょっと恥ずかしいし、休んだ気にもなれない。
そんな気分を反映してか、京阪神を中心に無人のカフェが人気を集めつつある。自動販売機の設置や運営を手がける株式会社ウエックスが打ち出した「オートマチックカフェ DRINK STATION」がそれだ。大阪の街をよく歩く人なら、ビルの一角などのちょっとしたスペースに、コンビニかカフェのような外観のこの店舗を見かけたことがあるだろう。中には各種自動販売機と、椅子やテーブルが並んでいる。
気になる価格は紙コップの飲料一杯で80円から100円。座って飲めることを考えれば安い。当然「スタッフの笑顔」などのサービスはないが、逆に言えば客にとっても、店側にとっても、人間相手の煩わしさがない。
同社のスタッフによる巡回や定期的に行われる清掃により、「無人」という言葉から連想する荒涼感はまったくない。単なる「自動販売機が並んでいるスペース」がひと工夫で「カフェ」となり、周辺のイメージも人の流れも変えてしまう。人件費が抑えられるので、普通にカフェを開いたのでは採算がとれない場所にも出店できるから、ビルのオーナーにとっても朗報だろう。
ビルや土地のオーナーでなくても、普通の勤め人も参加できる「無人系」サービスもある。コインロッカービジネスがその一例だ。街中に設置されているコインロッカーの一部は、管理・運営会社を通じて、誰でもオーナーになることができる。うまくいけば毎月、利益の一部を受けとることになるのだ。
コインロッカービジネスには既にそれなりの歴史があるが、ここにきて注目されているのは、あくまで不況下のサイドビジネスとしてである。無人カフェの人気も、やはり不況が後押ししている感は否めない。
合理的にも思える無人店舗だが、現在はまだその数は多くない。人件費が抑えられても案外コストがかかる、セキュリティに不安がある、きめこまかなサービスができないなどの課題はあった。しかし無人カフェの成功を機に、今後は新規参入が増えるかもしれない。カフェ以外にも無人で運営できる店舗は多いはずだから、不景気が続く今、狙い目のビジネスではある。
(工藤 渉)
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