ＮＨＫ　民放のドル箱を狙って本格参戦か！？

　いま、邦画界に新しい波が起きている。

　今月６日に全国公開された映画「ハゲタカ」が好調な滑り出しを見せた。初日と翌日の２日間で動員約１１万８０００人、興収約１億５０００万円を記録し、「映画興行成績ランキング」で３位に食い込んだ。

　この「ハゲタカ」は外資系の天才ファンドマネジャーが、経営不振に陥った日本企業を冷酷非情なまでに買い叩いていくストーリーで、大きな反響を呼んだＮＨＫ土曜ドラマの映画化だ。

　映画ジャーナリストの大高宏雄氏は映画「ハゲタカ」のヒットをこんなふうに見る。

「経済エンターテインメントという難しい分野だけに、若干の危惧を持っていたが、作品から伝わる“粘り”がそれを吹き消した。大森南朋、柴田恭兵をはじめとした俳優陣の粘りのある演技、これでもかと畳み掛ける粘りのあるストーリーが健闘の要因。土日ではなく平日の劇場にスーツ姿の観客が多く、２０代、３０代にも支持されているのがこの映画の特徴ですね」

　作品を手がけたＮＨＫエンタープライズの訓覇（くるべ）圭プロデューサーは「時代にマッチしたもの、時代と共に生きていることをテーマに掲げました。多くのビジネスマンが共鳴し劇場に足を運んでくれるのは本当にうれしい」と手応えを語る。

　実は今回の連続ドラマの映画化は、ＮＨＫにとって大きな賭けだった。テレビ局の映画製作は民放では積極的に行われており、収入源の柱のひとつになっている。かつてヒットドラマ「踊る大捜査線」を映画化して莫大な興収を得たフジテレビなどは、これを機に民放ナンバーワンの地位を不動のものにしている。

　だが、この「ハゲタカ」の映画化はＮＨＫには初の試みである。

「ＮＨＫ関係者にすればすべてが手探りの状態だけに、具体的な数字が出るまではヒヤヒヤものだったでしょう。民放なら映画化が決まれば自局で好き放題宣伝できるが、ＮＨＫにはそれができないハンディがある。テレビでドラマを見ていた人たちだけが頼りという心もとない状況ですからね。もし『ハゲタカ』が惨敗していれば、ドラマの映画化企画はこの『ハゲタカ』が最初で最後になっていたと思う」（映画記者）

　それが吉と出た今、ＮＨＫは次の展開を考えているのは間違いない。大河ドラマ、朝ドラ、ドキュメンタリーなど豊富で多彩な作品群の映画化だ。民放のドル箱に本格参入し、この分野でもＮＨＫが主導権を握りそうだ。

（日刊ゲンダイ2009年6月16日掲載）