リウマチ最新治療 生物学的製剤に注目 回復に効果、少ない副作用
6月23日7時56分配信 産経新聞
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◆戻った握力
「手がこわばり、20年間、赤ん坊と同じくらいの握力だったが、生物学的製剤を使い始めてからは痛みもとれ、トラクターをまた運転できるようになった」
こう話すのは、56歳で関節リウマチを発症した茨城県行方(なめがた)市の農業、斉藤久四郎さん(78)。昨年7月から生物学的製剤治療を行う病院に転院したところ、急速な回復に驚いたという。
【グラフ】非生物学的製剤と生物学的製剤の売上額推移
リウマチは、主に関節リウマチのことを指し、手やひざの関節が痛んで腫(は)れたり変形したりするのが特徴で、全身症状が出る。原因は、滑膜(かつまく)(関節を覆う関節包の裏側部分)に、正常な細胞を攻撃するサイトカイン(炎症や免疫にかかわる物質)「TNF−α」や「IL−6」が過剰発生して炎症を起こし、軟骨などが壊されるためだ。
厚生労働省によると、40歳以上の中高年に多く、31万人が通院し、このうち女性が8割を占める。非通院者も含めると、発症者は60万人近くと推定されている。
◆日本人の臨床データ
「ステロイド剤投与など従来の治療法は、痛みを軽減するだけで関節破壊の進行を抑えることができず、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)や動脈硬化など副作用が出やすかった。これに対し、生物学的製剤は、関節破壊の進行を抑えることができ、副作用が少ない」
生物学的製剤を治療に使っている茨城県つくば市の筑波学園病院リウマチ科の尾登(おのぼり)誠科長(47)は強調する。
リウマチ治療で、最初の生物学的製剤「インフリキシマブ」が認可されたのは平成15年。現在、4種類の生物学的製剤が認可されている。このうち初めて日本で開発され、昨年認可された生物学的製剤が「トシリズマブ」。
尾登科長は「他の生物学的製剤は別の薬と併用することで効果が倍増するが、この薬は単独で効果がある。また、TNF疎外薬に比べ、結核に対するリスクが少ない」と説明する。
生物学的製剤を使った治療費(自己負担分)は年間70万〜40万円(体重による)と決して安くはない。しかし、生物学的製剤は、非生物学的製剤と比べて売上額の規模はまだ小さいものの、伸び率では上回っている。
◆ストレスが引き金
生物学的製剤は一方で、細菌感染を隠してしまう作用もある。このため、「投与中は肺炎や結核などに注意が必要。専門医のもとで治療することが大事だ」と東京リウマチ・股(こ)関節治療センターの天本藤緒院長(46)はアドバイスする。
500人以上の患者に生物学的製剤治療をしている同センターでは、細菌感染症を防ぐために原則、肺炎球菌ワクチンやカリニ肺炎予防薬を使用患者全員に投与している。
予防法がないとされているリウマチだが、日本予防医学協会によると、「最近はストレスが免疫の仕組みを狂わす引き金になることが分かってきた」という。
まずは、規則正しい生活と栄養のある食事を取ることに努めたい。
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【リウマチ治療の生物学的製剤】 過剰に生成されることにより正常な細胞を攻撃してしまうこともあるサイトカイン「TNF−α」や「IL−6」の働きを抑制する薬。バイオテクノロジーでマウスなどを利用して作る。国内で認可されているのは、インフリキシマブ(商品名・レミケード)▽エタネルセプト(同エンブレル)▽アダリムマブ(同ヒュミラ)▽トシリズマブ(同アクテムラ)−の4種類。
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最終更新:6月23日11時34分