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過酷な労働…辞めるAD 番組制作に支障も

6月23日7時58分配信 産経新聞

 テレビの制作現場を底辺で支えるアシスタントディレクター(AD)の離職が相次いでいる。多くはテレビ局から番組制作の発注を受ける制作会社に所属し、限られた人数でありとあらゆる仕事をこなすが、その過酷さゆえに、早くから見切りをつけて辞めていく若者が後を絶たない。華やかなイメージが強いテレビ業界で今、何が起きているのか。(三宅陽子)

                   ◇

 ◆社員定着率は47%

 「常に眠くて、(仕事をしたいのに)やれない自分にイライラした」

 こう話す女性AD(25)は、1年半で情報番組の制作現場を離れた。勤務時間は朝8時から夜中の1時までで、24時間勤務も週1、2回あった。徹夜で働いた後も家には帰れず、昼まで仮眠を取った後に仕事を再開。仮眠時間は4、5時間程度だったという。

 製作会社127社で組織する全日本テレビ番組製作社連盟(ATP)が昨年4月、非加盟社を含む退職AD9人に実施したヒアリングからは、ADの過酷な労働実態が浮かび上がる。ADの仕事は番組出演者の弁当手配や小道具の配置といった雑用にロケ、収録、編集、オンエアの立ち会いと幅広い。昇格に個人差はあるが、多くの場合、先輩の背中を見ながら仕事を覚えることで、ディレクター、プロデューサーとして成長していく。しかし今、こうしたピラミッドが根本から崩れようとしている。

 ATPが今年2月までの10年間に加盟5社を対象に調べた社員定着率は47%、在職期間の平均は1年7カ月と極めて短かった=グラフ。ある制作会社社長は「昔はテレビをやりたい人は山ほどいて、ADの代わりはいくらでもいたが、今は代わりがいない状態」と漏らす。

 ◆仕事の達成感少なく

 ADが定着しない背景について現代っ子気質を挙げる声は多い。制作会社「ネクサス」の池谷誠一社長は「自分が生まれてきた意味を探すライフワークとして仕事を見なくなった。働いていても自分の時間は欲しいし、好きなこともやりたい。自己実現の意味が違ってきている」と言う。

 だが、そうした若者の意識を変えるような教育を業界がしてこなかったと指摘する関係者もいる。

 ATPの鬼頭春樹専務理事は「一つの仕事に熱を込められるのなら忙しさにも耐えられるが、次々と仕事が振られれば受け身にならざるを得ない。先輩も愚痴だらけで、先が見えてしまう」。

 メディア研究を行う「オフィスN」の西正さんも「中にはADを育てる気がない会社もある。ADを永遠にディレクターの助手として扱っており、若者が見切りをつけるのも仕方がない」と言う。

 民放関係者によれば、テレビ局が発注する番組の多くは、複数の制作会社がディレクターやADを派遣して作る“寄り合い所帯”。AD不足で、受注した制作会社はさらに別の会社にADの派遣を依頼するため、多くのADが複数の番組を掛け持つ状態となる。

 ◆人件費削減しわ寄せ

 テレビ局から制作会社に十分な制作費が払われていない点を指摘する関係者もいる。「人件費を抑えるため、1人のADを使い回さざるを得ない」と制作会社の関係者は窮状を明かす。

テレビ局側も「スポンサー収入が先細る中、ぎりぎりの制作費で作っている番組が多い」(民放関係者)のが実情。「このままいったら番組は作れなくなる」(同)との危機意識も高まっているが、抜本的な改善策はいまだ見いだせていない。

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最終更新:6月23日7時58分

産経新聞

 

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