沖縄
2009年6月19日
青く透明な海を背に、沖縄系アルゼンチン人の歌手大城クラウディアさんの歌う「島唄」と三線の音が響く=沖縄・宮古島
「島唄」はザ・ブームの宮沢和史さんが作詞作曲した曲です。
きっかけは、沖縄音楽にのめりこんでいた宮沢さんが91年に初めて訪れた「ひめゆり平和祈念資料館」で受けた衝撃でした。宮沢さんはその時初めて沖縄戦の悲劇を知り、それまでの自分の無知さに猛烈に腹が立ったといいます。資料館を出た後、とぼとぼと歩く先には、サトウキビ(沖縄の言葉で「ウージ」)が風に揺れていました。
東京へ帰ってすぐに書いた曲が「島唄」でした。でいごは5月ごろに咲く沖縄の県花、「ウージの森」とはサトウキビ畑のこと、「ウージの下」とは畑の下にあったガマのことです。「ウージの森で千代にさよなら」という歌詞は、ガマでの集団自死の悲劇を暗示します。旋律は沖縄音階を基調にしましたが、この「ウージ」の部分だけは日本的な音階に戻しました。「彼らを死に追いやったのは、当時の日本の軍事教育。沖縄音階では歌えない」と宮沢さんは判断したと言います。
92年のアルバムに収録後、宮沢さんはシングルカットにこだわりました。「沖縄の人たちにも聞いて欲しい、沖縄の人たちが時を経ても歌える歌を残したい」との思いからです。もちろん本土の人間が沖縄を歌うことへの抵抗感は想像に難くなく、宮沢さん自身にもためらいはありました。
結局、92年末に沖縄限定で沖縄言葉でのシングルカットが決定。CMタイアップもあり、沖縄県内でヒットすると、海を越えて本土へと飛び火し、標準語盤を翌年に発売。ミリオンセラーとなりました。
その後、歌は日本のみならず、世界中へと海を越えて行きました。アルゼンチン、ブラジル、ポーランド…。アルゼンチンのアルフレド・カセーロさんが日本語でカバーした「島唄」は同国で大ヒットし、02年のサッカー・ワールドカップでアルゼンチン代表の公式応援歌になったほどです。
その広がりを、宮沢さんは今、こう言います。「自らの意思とは違う死に方を選ばざるを得なかった多くの魂が、空へと舞い上がり、海を渡っていったのだろう」
歌は沖縄の若者たちの意識も変え、海の向こうでは若者の人生をも変えていきました。
(続きは6月20日付け朝刊の別刷り「be」をお読みください。)
ザ・ブームの「島唄」は92年発売の沖縄言葉盤(ウチナーグチ・バージョン)、93年発売の標準語盤(オリジナル・バージョン)のほか、カセーロさんの歌も収録したマキシシングルCD「島唄Shima Uta」などで聴ける(いずれもソニーレコード)。
ザ・ブームは今年デビュー20周年。休止期間はあったが一度も解散していない。7月にシングル、秋に新譜を発売予定。「バンドの4人だけではここまで来られない。新曲は応援してくれた人たちへのラブソングのつもりで作った」と宮沢さん。7月9日から全国ツアーも始まる。
宮沢さんがプロデュースする大城クラウディアさんの新アルバム「月下美人」は7月22日発売。同日、東京・原宿でデビューライブ。アルバムには、BEGINやモンゴル800など沖縄出身のアーティストらが楽曲を提供した。曲調は民謡、ラテン、レゲエ調と幅広いが、どこか沖縄の風を感じさせる。
沖縄に移住し、沖縄をテーマに映画を作り続けている中江裕司監督の最新作「真夏の夜の夢」(7月25日公開)は沖縄の離島を舞台に人間と精霊(キジムン)が織りなす物語。「かつて僕らは目に見えないあらゆるものたちと共に生きていた。忘れていた世界を思い出すきっかけになれば」と中江さん。
ガイドブックでは知り得ない島の素顔を知るには、沖縄の地元出版社ボーダーインクの著書をぜひ。同社は、沖縄の歴史や文化、時事問題などを独特の視点で編み、本土にもファンが多い。『目からウロコの琉球・沖縄史』『シマ豆腐紀行』『沖縄のうわさ話』など。編集の新城和博さん(46)は「戦争や復帰闘争の直接的な体験を持たない僕らの世代が沖縄を語る『語り口』が島の日常風景やサブカルチャーだった」と話す。
92年にリリースされた、ウチナーグチ・バージョンのシングルCD。「100万つぶの涙」と「島唄」のオリジナル・カラオケ・バージョンを同時収録。
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ミリオンセラーとなった93年の標準語盤。日本国内でのヒットにとどまらず、世界に沖縄の思いを届けた。
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オリジナル・バージョン、ウチナーグチ・バージョン、「島唄2001」という3バージョンに、ボーナス・トラックとしてアルフレド・カセーロの「島唄」日本語カバー・バージョンなどを収録したマキシシングル。
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琉球王国時代を中心に、琉球・沖縄史の面白いエピソードなどをコラム形式で紹介。読めば今まで持っていた沖縄のイメージが変わるかも!?
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延べ1000万人以上が訪れた人気投稿サイト『沖縄のうわさ話』から、「ゆーれいスポット」「沖縄の笑い話」「島ことばのうわさ話」などを厳選して収録。第2弾『沖縄のうわさ話 白版(しろばん)』も発売中。
beは朝日新聞の土曜朝刊に挟み込まれてくる別刷り紙面です。ビジネスの「b」(青のbe)と、エンターテインメントの「e」(赤のbe)から成っています。「うたの旅人」は赤beのフロント紙面で、08年4月から続いている企画です。毎週、一つの歌を題材に、記者が歌にちなんだ土地を旅し、歌にまつわるエピソードを探します。
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