あの人は今こうしている

　最近、雑誌やテレビでしばしば目にする「浜田卓二郎事務所」の広告。浜田卓二郎元参議院議員の法律事務所のＰＲで、現在、弁護士として活動している。ところで、“ハマタク”先生といえば、忘れられないのが東大卒の才色兼備の“女傑”、麻記子夫人だ。９０年代、歯に衣着せぬ発言でワイドショーやトーク番組に引っ張りだこだった。今どうしているのか。

●ずっと無給。「まだ赤字体質を引きずっているのに、いただくわけにはいきません」

　会ったのは地下鉄日比谷線八丁堀駅から歩いて３分、オフィスビル４階の「シアター・テレビジョン」。女性社員に案内されて応接室に入るや、「お待たせしてごめんなさい」といいながら、浜田さんが飛び込んできた。差し出された名刺には「取締役社長」とある。

「去年の１０月に就きました。ここの大塚隆一会長は私どもの勉強会の仲間で、大学の先輩でしてね。その大塚さんがシアター・テレビジョンはこれまで若い人の芝居公演やお笑い芸人さんたちのライブ中継をしてきたが、これからは別のジャンルのクオリティーの高い番組を放送したいとおっしゃって。私といえば、物事すべて良質でないと嫌っていう性分でしょ。そんなことから考えが一致して、社長をお引き受けしたんです。もちろん、旧経営陣の方はお辞めいただきました。でないと、新しくスタートするのは困難ですから」

　シアター・テレビジョン（ＣＳ放送）の現在の加入世帯数はおよそ８０万世帯。

「番組はたとえばオペラでいえばパリのオペラ座、イギリスのロイヤル・オペラハウスの公演、ミュージカルだったらブロードウェーの舞台を見ることができます。映画も『モロッコ』『ナイアガラ』『嵐が丘』などの名作をどんどん流してますし、近い将来には邦画の名作も考えてます」

　さて、浜田さんがマスコミに登場したのは９０年代初めのこと。政治家夫人が総選挙や都知事選に出たということで話題になり、これがきっかけになってワイドショーやトーク番組のコメンテーターとして活躍した。また、米ハーバード大学に招かれ、同大のフェローとして活動。帰国後は建築会社を立ち上げ、そのかたわら会員制月刊誌「ぺるそーな」を発行してきた。

「雑誌は編集人をお願いしてた元週刊新潮の亀井龍夫さんが高齢を理由に身を引きたいといわれ、発行から１０年目の今年４月に区切りをつけました。でも、雑誌の精神はこのテレビが引き継いでいるんですよ。時事問題、文化論などを各界の気鋭の論客が語る番組がそれです。ウチはＣＭがないため広告主に媚（こ）びたり、おもねる必要がなく、すべて本音で勝負。中曽根康弘先生のトーク番組『定点観測』なんか、まさにその見本のような番組でしょう」

　社長に就任して以来、無給で働いている。

「まだ赤字体質を引きずっているのに、いただくわけにはいきません。お給料は利益が出るまでお預け。いただくときは、社員みんなに決めてもらおうと思ってます」

（日刊ゲンダイ2009年6月18日掲載）