2009年6月23日
フィルムを専用の映写機にかけ、右側のカメラで撮影してデジタル化する=大阪市北区のIMAGICAウェスト、高津写す
最近のテレビはハイビジョン対応のため、画面の横縦の比が16対9。ところが昔の番組は4対3で撮影されている。古い番組を映すと画面の左右が黒くなったり、左右に引き伸ばされて変形したり……。そんな違和感をなくそうと、旧作をハイビジョン化する取り組みが始まった。完成品は新作のような仕上がりだ。(高津祐典)
大阪市北区の映像編集会社「IMAGICAウェスト」。時代劇専門チャンネルでの放送に向け、95年放送開始の時代劇「御家人斬九郎」(フジテレビ系)のハイビジョン化が進む。
作業にあたるのは当時撮影を担った制作会社「映像京都」の社員らだ。「画面を勝手に引き伸ばされるより、自分たちの手で調整したい」。「御家人斬九郎」でカメラマンだった同社役員の浜名彰さんは話す。
作業はまず、撮影したフィルムの点検から始まる。フィルムの接合部を専用のテープで補強し、洗浄液で表面の汚れを取り除く。
次は専用の映写機で映し出した映像を、ハイビジョンカメラで撮影し、デジタル化する。
その後、画面サイズの調整に入る。「御家人斬九郎」は「スーパー16」という画面の横縦比が4対3より横長のフィルムで撮影された。画面の上下を少し切って16対9に合わせる。
映像の補正にも取り組む。旧作は色がくすんでいたり、フィルムが傷ついていたりする例が多い。デジタル化された映像なら簡単に直すことができる。ただ、安易に補正すると当時の作品のイメージが崩れてしまう恐れがある。
浜名さんらは台本で設定された時間帯に合わせて「もう少し明るく」「朝っぽい感じを出して」などと技術者に指示を出し、調整した。作業に立ち会っている映像京都撮影部の大西考典さんは「当時は台本通りの時間帯に撮れなかった場面も、色の補正によってそれらしい雰囲気を出せる」と話す。
思いがけない作業が求められることもある。横長のフィルムで撮ったため、4対3のテレビでは放送されない左右の端に電線などが写っている場合があるのだ。注意深くデジタル処理で消していく。
画面中央に対象を寄せて撮影していたため、間延びして見える場面もある。
浜名さんは「もっとアップで撮っていれば、というシーンもあるし、当時のままが良いという人には印象が変わって抵抗があるかもしれない。だが、全体としては画質が向上し、画面も見やすくなっているので良くなったと思う」と話している。