きょうの社説 2009年6月23日

◎白山車両基地に新駅 費用対効果を試算してみては
 北陸新幹線建設促進石川県民会議の総会で、森喜朗元首相らが白山総合車両基地に新駅 を設置する構想に言及した。仮にこれが実現すれば、周辺住民の利便性が高まるうえに、大型駐車場とうまく組み合わせれば加賀地区から新幹線へのアクセスがより便利になる可能性もあり、面白いアイデアだ。ハードルは低くはなさそうだが、費用対効果を試算してみる価値はあるだろう。

 山陽新幹線では、博多駅から博多総合車両所への引き込み線がJR西日本の在来線・博 多南線として活用されている。車両所内には地元の要望を受けて設けられた博多南駅があり、住民の通勤通学などの手段として重宝されているという。博多−博多南駅間はノンストップであり、しかも新幹線ホームにじかに乗り入れる。ほかの在来線などより楽に新幹線に乗り継ぐことができる点も、メリットの一つと言えよう。

 白山総合車両基地の場合、博多総合車両所とは違って、建設予定地のすぐ脇を既に北陸 線が走っている。そこに駅を設けることも不可能ではなく、周辺住民の「生活の足」だけを考えるなら、それでも十分かもしれない。ただ、新幹線へのアクセスでは、車両基地内に駅を設置した方が明らかに便利になろう。

 北陸新幹線の金沢以西については、まだ建設財源の問題に答えが出ていない。それを乗 り越えてすぐに着工したとしても、完成までには相応の時間が必要であり、金沢開業後、当分は金沢が終着駅となるのは間違いない。

 白山総合車両基地内の駅と併せて大型駐車場も整備すれば、能美や小松などからの乗り 継ぎ需要も取り込めるのではないか。車両基地の建設予定地付近なら、金沢駅近辺と比べて用地も取得しやすいだろう。金沢開業効果を広くいき渡らせる「2014年」対策の一つとして、まずはメリットと課題を整理してもらいたい。

 もちろん、こんな構想が語れるようになったのも金沢開業が見えてきたからこそである 。予定通りの開業をより確実にし、できればさらに前倒しするための努力も忘れずに重ねてほしい。

◎防衛力増強論 総選挙で論戦聞きたい
 政府は年末に決める新防衛計画大綱の策定方針として、現大綱下で削減が続いている防 衛予算を増額させ、装備・要員の整備方針を縮減から増強に転換する考えという。北朝鮮の核・ミサイルの脅威や中国の際限ない軍事力の増強という安全保障環境の変化が、日本の防衛力の在り方について再考を迫っているのは確かである。与野党は軍事的脅威の高まりや軍拡レースにいたずらにあおられることなく、次の総選挙で意見を戦わせてもらいたい。

 政府の基本方針は「日本周辺地域の軍事力が近代化、活発化している」現状をにらみ、 「現在の防衛力による各種事態への対応力には限界があり、実効的な対応が必要」として、自衛隊員の増員などを検討するという。

 中国や北朝鮮の軍事力強化は北東アジアの軍事バランスを変化させ、地域の不安定化を もたらす。そのことは、日米同盟の在り方にも重大な影響を及ぼし、米軍の抑止力にいかに実効性を持たせるかの議論も欠かせない。

 衆参両院は先ごろ、世界の核兵器廃絶に向けて、政府の取り組み強化を求める決議を初 めて採択した。両院とも全会一致の採択で、核兵器廃絶をめざす日本の意思を国際社会に明示した。

 しかし、現実の脅威を直視すれば、米国の「核の傘」に効力を持たせる矛盾した目標を 追求せざるをえず、当面の課題としては米軍の抑止力論議の方がむしろ重要であろう。米韓両国は先の首脳会談の共同文書に、米国の「核の傘」による韓国防衛を明記した。米軍の抑止力の実効性を担保する有効な方法といえる。

 また、例えば民主党の小沢一郎代表代行は今春、極東における米軍のプレゼンスは第7 艦隊で十分との考え方を示したが、これは日本の安全保障政策の根幹にかかわる問題である。日本の安全確保のための抑止力に関しては、集団的自衛権行使や敵基地攻撃能力保有の是非など長年論争が続いている課題もある。総選挙ではこうしたテーマも避けずに議論してもらいたい。国民にとって政権選択の重要な判断基準になる。