中日新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 滋賀 > 6月23日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【滋賀】

開腹せず大動脈瘤手術、県内でも開始 適応拡大へ医師確保課題

2009年6月23日

ステントグラフト内挿術で正常な血流を取り戻した腹部大動脈=県立成人病センター提供

写真

 大動脈瘤(りゅう)を開腹せずに治療でき、患者への負担の少ない手術が県内で始まった。足の付け根の動脈から人工血管を入れて患部に装着する方法で、今月11日に県立成人病センター(守山市)が県内1例目を成功させた。草津総合病院(草津市)も25日に予定しており、最先端医療の一つが身近で受けられる環境が整いつつある。

 大動脈瘤は心臓から全身に送り出される血液の圧力で胸部や腹部の大動脈血管壁が膨らみ、破裂すると死に至る危険性がとても高い病気。胸や腹を大きく切開し病変部分を人工血管に置き換える治療が主流だが、高齢者らには負担が大きく、手術できないケースがあった。

 成人病センターは今回、腹部大動脈瘤を持つ80代男性に新たな治療「ステントグラフト内挿術」を実施。血管内治療に使うカテーテルという管に折り畳んだ人工血管を仕込み、足の付け根の動脈から入れて患部に装着した。手術は2時間ほど。開腹手術に比べて体へのダメージが少なく早期に退院できる。

治療前の腹部大動脈瘤

写真

 手術を担当した心臓血管外科部長の山田知行医師は「患者さんは翌日から歩けるほど術後経過が早い。今後は胸部の動脈瘤など適用範囲を広げていきたい」と話す。

 この治療の適応は、患者の健康状態に加えて、動脈瘤の形や位置などによって限られる。新しい治療のため、従来の手術との本格的な比較検討はこれからで、合併症の危険性もゼロではない。

 今後、適応を広げるには症例を重ねて実績を上げることが不可欠だ。同センターと草津総合病院は関連学会からこの治療法の実施病院として認定されているが、県内には指導医がおらず、習熟した医師を確保し増やしていくことが課題となる。

 (林勝)

 

この記事を印刷する

広告
中日スポーツ 東京中日スポーツ 中日新聞フォトサービス 東京中日スポーツ