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友人のY君は、確かに、自分の大学生たちに「テレビを見るときには、テレビに話しかけなければならない」と言ったのですが、それは「テレビに話しかけろ」と言っていたわけではないと思います。彼が言いたかったのは、「テレビを相手に自らの主体性を確保することはとても難しいです」と言いたかったのだと思います。 私に88歳のアルツハイマーの母がいます。今はもう満足に歩けない状態ですが、3年ほど前、「歩けるうちに、母さんが会っておきたい人を訪ねておこう」という私の提案で、彼女の友人たちをふたりで訪ね歩きました。その折、彼女と同年輩のある友人は、「あんたはテレビばかり見ていたからボケたのよ。私のように趣味を大切にしなかったから、ボケたのよ」と手厳しいことを口走りました。目の前のふたりの違いは歴然としていましたので、(自分は母のようにはなるまい)と思ったことでした。 先年亡くなられた社会学者の鶴見和子さんは、病院の天井を睨みながら、若いころ親しんだ和歌を詠むことで、左片麻痺と闘ったといいます。彼女は湧き上がる「人生への想い」によって、人間としての主体性を奪還し、一時期は体も奇跡的に回復していたといいます。もし、動けなくなった鶴見和子さんが、安易にテレビを見ていたのなら、再び動けるようにはならなかっただろうと思います。 高知県の中山間地には、一人暮らしのおばあさんたちがいっぱいいますが、都会のおばあさんたちとは一味違います。テレビの世界に逃げ込んでいないので、心も体もとても若いのです。多くのおばあさんたちは、家の前の畑で自分の食べる野菜は自分で作っています。鶏を飼っている人も多いです。おばあさんたちは、自然をいつくしみ、自然とたたかうことで、主体性を確保しているので、かくも生き生きしているのだろうと、私は考えています。それが不可能になるのは、やはり時間の問題なのですが……。 (関連記事) ・続・テレビなんか要らんな 2009/01/29 ・テレビなんか要らんな 2009/01/24 |
6月15日〜20日
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