最終更新: 2009/06/23 00:37

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ER方式の産科救急でハイリスクな分べんにどのように対応しているのか取材しました。

ER方式の産科救急でハイリスクな分べんにどのように対応しているのか取材しました。
すべての患者を受け入れるER方式の産科救急で、ハイリスクな分べんにどのように対応しているのか、厳しい現場を取材しました。

午前3時、沖縄県立中部病院のER救命救急センターに運び込まれた妊娠35週の妊婦は、予定日より1カ月早く陣痛が始まり、逆子の状態であることから、緊急帝王切開を行うことになった。
午前4時49分、手術が開始された。
子どもの取り出しにかかるのは、4年目の研修医・角 暢浩医師だが、逆子のために、体がうまく引き出せない。
交代した指導医の徳嶺辰彦医師は、ひねりを入れながら、一瞬のうちに下半身を引き上げる。
そして、再び角医師に託した。
生まれたのは、体重2,525グラムの男の子だった。
早産のため、慎重を期して、子どもはNICU(新生児集中治療室)の管理となった。
2日後、母親は「あっという間の出来事でしたね。もう無事に生まれてきてくれて、ありがとうっていう気持ちでした」と話した。
ハイリスクな妊婦の救急搬送でも必ず受け入れるER型総合周産期母子医療センターを設置している県立中部病院には、9人の経験を積んだ産科医がそろい、年間800例を超すハイリスクな分べんを行いながら、後輩の研修医教育に力を入れている。
産科部長の橋口幹夫医師は「われわれが、やはりきちんとした仕事をして、それをまた次の世代をつくっていかなければですね、この地域の医療が守れないんだと思っています」と語った。
2年目の研修医・上野晃子医師は高知大学出身で、医学生が敬遠しがちな産科医の道をあえて選んだ。
上野医師は「次の世代を育てていくことにかかわれるという意味で、すごく魅力を感じています」と話した。
研修医・上野医師に、橋口部長から電話が入った。
上野医師にとって初となる帝王切開手術の呼び出しだった。
中部病院では、2年目の研修医から経験させているが、帝王切開の難易度は高い。
研修医・上野医師の初めての帝王切開手術が始まった。
厳しい指導を受けながら、上野医師は、いよいよ子宮にメスを入れる段階に入る。
メスを入れた子宮から噴き出す血液に、上野医師の両手が宙に浮いたまま固まった。
橋口部長は、出血個所を手で押さえて止血しながら、上野医師に指示を出す。
初めての帝王切開で、上野医師は子どもを取り上げた。
ただし、おなかを閉じるという大切な作業を残して、気は抜けない。
上野医師の針を持つ手が震えるが、リラックスさせるため、橋口部長は言葉をかけた。
そして、1時間55分を要して、手術は終了した。
橋口部長は「きょうちょっと、大きな血管が走ってたから、そこから大出血が起こった分、ちょっと彼女には酷だったかもしれないけれど、自分が思ったよりできないということがわかっただけでも、いいんじゃないですか」と語った。
上野医師は「緊張して手が震えてしまって、イメージしていたのと、全然違っていましたね」、「患者さんにも、何ていうか、すごい感謝の気持ちでいっぱいです」と話した。
5月、沖縄北部の県立病院は、1人の産科医が辞めたことで、週末の産科救急を中止すると決定した。
その分をカバーする中部病院の負担が極めて重くなるが、有効な解決策は見つかっていない。
橋口部長は「ほかのそういう総合周産期センターの先生方も、本当にバタバタと辞めていかれている現実からすると、決してやっぱり未来に対する明るい希望っていうのは持てない」、「これ以上、やはり仕事がきつくなると、いつ崩壊してもおかしくない状況だと思います」と語った。
若き医師を育てる伝統と、使命感が支えてきた産科救急最後のとりで。彼らの思いに今、社会が応えるときが来ている。

(06/23 00:23)


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