再送:〔ECBフォーカス〕24日に初の期間1年オペ、銀行の調達意欲はおう盛な見通し
*原文参照番号を修正して再送しました。
[フランクフルト 19日 ロイター] 欧州中央銀行(ECB)は24日、期間1年の資金供給オペを初めて実施する。1%の固定金利で1年間資金を借りられるということで、金融機関の需要は強いと予想されている。
ECBは5月、短期金融市場の秩序回復、銀行融資の促進、銀行・企業・個人の資金調達コスト低減を狙った追加的措置として、資金供給オペの期間を6カ月から1年に拡大した。12カ月という長期にわたり資金を貸し出す措置は、主要中央銀行ではすでに日銀が実施しており、ECBが初めてではない。
アナリストやトレーダーは、期間1年間の資金を1%の固定金利で無制限に確保できる機会に対する銀行の需要は強いとみているが、特に注目しているのは供給規模だ。
BNPパリバのアナリスト、アレッサンドロ・テントリ氏によると、供給額の予想レンジは2500億─1兆ユーロ。「これは2009年の流動性所要額のかなりの部分を占めるか、それを超える規模で、ECBがこれほどの需要を想定しているとは信じ難い」と述べている。
ECBは長期の資金を供給することにより、銀行の企業・個人向け融資を拡大し、銀行の資金調達環境をめぐる懸念の払しょくを図りたい考えだが、効果は銀行の調達意欲、調達資金の活用如何にかかっている。ECBは資金の使途に条件を設けていないが、融資拡大につながることを期待している。
ECBの狙いは、期間6カ月─12カ月の短期市場金利を下げ、期間の間の金利差を縮小し、イールドカーブをフラット化させること。
このシナリオに基づけば、効果はユーロ圏の住宅保有者に波及し、成長を支援する。スペインなどでは住宅ローン金利が12カ月物の欧州銀行間取引金利(EURIBOR)に連動しており、ECBの政策金利ほど低下していない。
しかし、銀行がオペで必要以上に資金を調達した場合、イールドカーブの傾斜が短期ゾーンできつくなり、効果が歪む恐れがある。
金融システムに過剰な資金が供給されると、銀行は短期金融市場に資金を出すか、ECBの翌日物預金に預け入れるため、翌日物金利を押し下げる。
これは借り入れコストの低下を望むECBにとっては歓迎すべき状況かもしれないが、資金を1%の固定金利で1年間確保した銀行にとっては損失要因になる。
さらに、財務健全化を目指す銀行が、キャッシュを国際ルールが定める中核的(Tier1)自己資本比率の引き上げに活用する可能性もある。
これは、年内にストレステスト(健全性審査)を受ける予定の欧州の銀行にとって支援要因となる可能性がある。ただ、アナリストは、それが重要な誘因にはならないとみている。
<オペ手法手詰まりも>
銀行の需要状況によっては、ECBは他の流動性供給の枠組みをさらに修正する必要が出てくるかもしれない。ドレスナー・クラインオートのアナリストはリポートで、長期オペに対する需要が強ければ、ECBは今後数カ月に、過剰な資金を吸収するためのファインチューニングオペ制度の修正を迫られる可能性があると指摘した。
「圧倒的な需要がECBのオペ手段を縛ることはないかと問うことは、正当化されるだろう」とした上で、「ECBは資金を吸収するため、ファインチューニングオペとして1日より期間を長くした預金を集める、あるいは債券発行を伴う売りオペを導入することもあり得る」との見方を示した。
BNPパリバは、ECBが将来、オペ金利にプレミアムを乗せる可能性があるとみている。
しかし、これは初期出口戦略という誤ったメッセージとなりかねない。
このため、ECBは上限金利である限界貸出金利と下限金利(中銀預金金利)の差を再び拡大する可能性がある。上限金利と下限金利の差は通常は200ベーシスポイント(bp)だが、現在は150bp。ECBは金融危機が深刻化して以来、上限金利と下限金利の差を3回変更している。しかし、中銀預金金利を現行の0.25%からさらに下げることについてはECB内で反対論が多い。
短期金融市場ウォッチャーは、最近の3カ月、6カ月といった長めのオペの結果をみて、銀行は1年物オペへの準備を進めていると指摘。
3カ月物オペの場合、前回3月の落札額が300億ユーロだったのに対し、その借り換えとなる6月は145億ユーロにとどまった。
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(Marc Jones 記者;翻訳 武藤邦子;編集 山川薫)
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