焦点:米政権の通商政策、G8を機に動き出す可能性
[ワシントン 21日 ロイター] オバマ米大統領による通商政策への取り組みはこれまでのところ遅々とした展開となっているが、7月にイタリアで開かれる主要8カ国(G8)首脳会議で主要貿易相手国の首脳と会談する大統領にとって、今後、通商政策の重要性が増す可能性がある。
ロン・カーク米通商代表部(USTR)代表は先ごろ「米国は貿易について、第2の優先順位ではなく、景気刺激策や教育、医療と並ぶ最優先課題として論議を始めなければならない」と語った。
米民主党にとって通商政策は以前から意見の分かれる問題であり、多くの議員は国内製造業セクターの失業の原因として北米自由貿易協定(NAFTA)に批判的な立場をとっている。
オバマ大統領は大統領選でNAFTAへの批判を表明したが、就任後は医療制度改革や地球温暖化分野での法整備をより強硬に進める一方、通商政策については超党派での新たなコンセンサスを徐々に確立するアプローチをとっている。
共和党のグラスリー上院議員は、パナマ、コロンビアおよび韓国との自由貿易協定(FTA)の批准が遅れていることをめぐり大統領と議会民主党を批判し、「オバマ政権はフライングばかりで、議会、特に下院の民主党はますます後退している」と語った。
一方、民主党指導者協議会(DLC)の経済アナリスト、エド・グレッサー氏はこれらのFTAについて、いずれ批准されるとの見方を示す。同氏は「現政権は誕生からまだ5カ月であり、前政権から大きな問題を引き継いでいる。ある程度の忍耐が必要だ」と述べ、保護主義への抵抗を維持しているオバマ大統領を高く評価。その上で、多くの民主党議員が貿易協定を雇用喪失の原因として非難しているからといって、合意済みのFTAの批准を永遠に保留することはできないとし、大統領は「世界経済を阻害する国ではなく、主導し守る国としての米国のイメージを支えるように通商政策に取り組む必要がある」と語った。
オバマ大統領は今後数週間、あるいは数カ月以内に通商政策について演説を行う予定だ。日程は明らかにされていないが、アナリストはこの演説が、懸案となっているFTA批准や世界貿易機関(WTO)の多角的通商交渉(ドーハ・ラウンド)再開に向けた米政権のより積極的な取り組みの始まりとなることを期待している。
オバマ大統領は7月のG8首脳会議でドーハ・ラウンド進展をめぐる圧力にさらされる見通しだ。 続く...