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2009年6月22日

着エロ撮影後「女の子と連絡取れなくなりました」

 福岡弁護士会が6月15日、裁判員制度を検証するための「市民モニター制度」を導入すると発表しました。

 事前に登録した人から選ばれた1人が、裁判員裁判を初公判から判決まで傍聴して、手続きの分かりやすさなどのアンケートに答えるそうな。他には判決を予想してもらって、実際の判決と比較することも考えているらしい。

 もし、市民モニターに選ばれたら傍聴券の抽選に当たらなくてもいいわけだけら、裁判員裁判を観たい人は応募しない手はないですね。6月29日に説明会があるらしいので、福岡の方はぜひ。ちなみに、日当も8000円ほど出るらしいです。
 っていうか、傍聴席を1つ用意するんだから、福岡地裁も協力してる制度なのかね。

 さて、今回は6月19日に行われた神崎修一被告人の裁判傍聴記。罪名は、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に係る法律違反幇助。今年3月30日に紹介した事件の続報です。詳細はこちらから。
 (「着エロかポルノか…この裁判は長そうだ」参照)

 事件の概要を簡単に説明しておきましょう。
 08年6月、芸能プロダクション「ピンキーネット」社長の神埼らが無職の16歳少女をモデルに、貸しスタジオ内で児童ポルノを製造したとして逮捕、起訴された事件です。水着を身につけるなどして、胸や下半身を露出しない映像は「着エロ」とも呼ばれますが、児童ポルノとして摘発されるのは異例。モデルになった無職の少女が「恥ずかしい姿を撮られた」と警察に相談し発覚したと伝えられました。

 被告人は、DVDの内容は知らなかったと否認しているので、今回は検察官が用意した証人への尋問です。その証人は、実際にDVDの撮影、監督をした男性。
 検察官が請求した証人なんだから、「被告人は撮影内容を事前に知っていました」って証言するのかと思いきや…。
 まずは、検察官からの質問。

 検察官 「去年6月22日に証人が撮影したのは、ジャンルで言うとなんですか?」
 証人 「えーーと、それはイメージビデオです」
 検察官 「イメージビデオって言っても、広いと思いますが、さらに絞り込むと?」
 証人 「比較的過激なものだったと思います」
 検察官 「いわゆる、世間では着エロと呼ばれているものですね?」
 証人 「僕からは何とも言えませんが、そう言われても仕方ないですね」

 事前に打ち合わせをしていないのか、主尋問とは思えない噛み合わなさです。

 検察官 「被告人と知り合ったのはいつですか?」
 証人 「(事件の)半年前だと思います」
 検察官 「(被告人から)紹介されて何人くらいの撮影をしましたか?」
 証人 「5~6人とか」
 検察官 「それらの内容は、本件のと比べてどうでしたか?」
 証人 「本件の内容よりは、過激だったと思います」

 どうやら起訴されたDVDが一番ソフトな内容だったようです。あくまで証人視点だけど。

 検察官 「被告人とは仕事しやすかったですか?」
 証人 「穏やかな人ですし、優しい人なので付き合いやすかったと思います。中には(撮影中)不条理に文句言ってくる人もいるので」
 検察官 「本件の撮影前に、被告人から言われたことはありますか?」
 証人 「(モデル)本人が嫌がることはしないでほしいと。あと、陰部は露出しないように気を付けてほしいと。児童ポルノに類似する表現にならないようにと」

 児童ポルノにならないように気を付けていたのは被告人だったんですね。それにしても、どこが検察側の証人なのやら。

 検察官 「児童ポルノに類似する表現方法を超えないために何をしましたか?」
 証人 「似たような作品をいくつか観ました」
 検察官 「それでどんな工夫しました?」
 証人 「説明は、難しいと思います。わかりやすく、なんだろうなぁ、表現の露骨度を抑えるというとこですかね」
 検察官 「どうやれば、露骨になりすぎないんですか?」
 証人 「難しい問題ですね。(他の作品は)ソーセージを使うんですけど、露骨になりすぎるので、果物を使ったりとか」

 ソーセージは露骨で、バナナは露骨じゃないってことなんでしょう。どっちも変わらないような気がするが。
 結局、被告人の主張に反する証言が出ないまま、質問終了です。
 次は、弁護人から。

 弁護人 「撮影に関して、どんな水着や道具を使うからという打ち合わせを被告人としました?」
 証人 「いえ、ないです」
 弁護人 「撮影してから商品化されるまで、内容の打ち合わせは?」
 証人 「ないです」
 弁護人 「パッケージや編集を確認しないプロダクションもあるんですか?」
 証人 「ま、ありますね」
 弁護人 「被告人は、そういうことに口出しはしてこないと」
 証人 「はい。被告人は、無関心なとこがありますね」

 なんと、被告人は以前から撮影内容やDVDの中身に全く興味がなく、それが無罪主張の理由になっているようです。
 最後は、裁判官からの質問。

 裁判官 「あなたは今年の4月24日に判決受けていますけど、これは確定しているんですか?」
 証人 「はい」

 証人は被告人の裁判は傍聴していないんだけど、話の流れから察するに有罪判決だったんでしょう。確定してるってことは、撮影したものが児童ポルノと認定された判決に対して、控訴しなかったということですね。推測ですが。

 裁判官 「撮影内容は、あなたが決めるんですか? 被告人と話し合いはないんですか?」
 証人 「話し合いがちゃんとあるわけじゃないんですけど、被告人が無関心なので」
 裁判官 「この業界の常識として、プロダクションの社長がタレントの撮影内容を知らないってありえます?」
 証人 「被告人に関しては、良い悪いは置いといて、無関心なところがあるので」

 と、被告人は撮影内容に無関心だと、繰り返し主張です。

 裁判官 「被告人に対してどう思っています?」
 証人 「正直、もう少しちゃんとタレント管理をしてほしかったなと」

 ま、正論なんだけど、管理が甘いのを利用して児童ポルノを撮影したともいえるわけで。

 裁判官 「本件DVDが販売されてから、被告人からクレームありました?」
 証人 「“(販売後)女の子と連絡が取れなくなりました”というのが、クレームといえばクレームです」
 裁判官 「“こんな内容のを作って!”とかは?」
 証人 「ないです」

 たぶん、DVDは観てないだろうから、そんなクレームも来るはずはないような気がするんだけど、裁判官としては確認しておきたかったんでしょう。
 結局、被告人のプラスになるような証言しか出ないまま、証人尋問は終了でした。

 それにしても微妙なところを争っている裁判だよなぁ。「児童ポルノにならないように」という被告人の指示を受けて、証人が撮影した着エロ作品が児童ポルノってことなんでしょ。しかも、被告人は内容に関しては無関心。内容を知らなくても、児童ポルノの撮影にモデルを派遣したのが罪に問えるなら、有罪なんだろうけど。犯意はなさそうなんだよなぁ。
 次回は被告人質問らしいので、被告人がどれだけ仕事を適当にやっていたのかを主張するんでしょう。仕事熱心じゃなかったのが、被告人にとって良い方に転がるのかどうか。

注目の裁判

6月22日(月)被告人・平栗真人:強盗(初公判)
<コンビニ強盗事件> 09年4月、住所不定、職業不詳の平栗真人(当時24)は、東京・台東区でコンビニ強盗をして現金23万円を奪った。現場の指紋などから指名手配され1週間後に逮捕された。

6月22日(月)被告人・奥野かおる:殺人(控訴審初公判)
<内縁の夫を殺害した事件> 08年8月、居酒屋従業員の奥野かおる(当時47)は、内縁の夫で居酒屋経営の佐藤茂さん(当時61)を包丁で刺して殺害した。閉店後の作業で文句を言われて激高しての犯行で、1審で懲役8年の判決を言い渡された。

6月22日(月)被告人・野田英孝:金融商品取引法違反(インサイダー取引)(初公判)
<投資会社元会長によるインサイダー取引事件> 09年4月、東証2部上場の投資会社「ジェイ・ブリッジ」元会長、野田英孝(当時54)ら2人が、インサイダー取引で損失を免れたとして、逮捕された。同社が同年3月期の業績予想を下方修正することなどを知り、公表直前に海外に開設された口座を使って、自社株計7万株を計約6500万円で売却した。

6月23日(火)被告人・松内純隆:日米相互防衛援助協定等に伴う秘密保護法違反
<イージス艦情報流出事件> 07年12月、海上自衛隊の3等海佐松内純隆(当時34)は、02年に「特別防衛秘密」を漏らしたとして逮捕された。1審で懲役2年6月、執行猶予4年の判決を言い渡された。

6月23日(火)被告人・秋葉克巳:強盗殺人(控訴審初公判)
<3人殺傷した強盗殺人事件> 07年5月、無職秋葉克巳(当時42)は、東京都世田谷区の無職、松沢正太郎さん(当時94)ら3人を殺傷し、現金とキャッシュカードを奪うなどした。1審で無期懲役の判決を受けた。

6月23日(火)被告人・渋沢正見:器物損壊
<路上にクギを置き車のタイヤをパンクさせた事件> 09年3月、東京都世田谷区の飲食店店員、渋沢正見(当時50)は、08年1~8月にかけて、同区の路上にクギを置き、車のタイヤをパンクさせたとして逮捕された。取り調べに対して車の音がうるさく、パンクさせれば交通量が減ると思ったなどと供述した。

6月24日(水)被告人・片石肇:強盗傷害
<プロレスグッズ専門店での強盗事件> 09年2月、千葉県柏市の無職、片石肇(当時28)は他の2人と共謀して東京都千代田区のプロレスグッズ専門店に押し入った。男性店員に暴行を加え、現金15万9000円と、マスク5点などの商品を奪った。

6月24日(水)被告人・高木明真:傷害
<保護者が職員室で生徒と教諭を殴った事件> 09年2月、東京都港区の無職、高木明真(当時46)は、区立中学の職員室で、長男の同級生の男子生徒(当時14)の顔をたたき軽傷を負わせ、止めに入った女性教諭(当時26)の顔を殴り、鼻の骨を折る重傷を負わせた。

6月24日(水)被告人・風間勇二:弁護士法違反(控訴審判決)
<弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉をした事件> 08年3月、大阪市東住吉区の不動産会社「光誉実業」の社長、朝治博(当時59)、共同都心住宅販売の元社長の風間勇二ら10人は、都内のオフィスビルをめぐり、弁護士資格がないのに報酬を得て立ち退き交渉などをしていたために逮捕された。

6月24日(水)被告人・大場武生:証券取引法違反
<金融ブローカーによる風説の流布> 07年10月、金融ブローカー大場武生(当時48)は、5年前に東証2部上場の建設会社「大盛工業」の株価を吊り上げるため、この会社の子会社が「携帯電話がかけ放題になる新規事業を始める」と実現の見通しのない情報を流した、風説の流布の疑いで逮捕された。時効まであと1カ月、逃亡の末の逮捕だった。

6月24日(水)被告人・佐藤栄佐久 佐藤祐二:収賄
<福島談合事件> 福島県知事の佐藤栄佐久は、福島県発注の大型ダム工事をめぐり、実弟の佐藤祐二経営の縫製会社の土地を時価より高値で買い取らせる形でゼネコンからわいろを受け取った。

6月24日(水)被告人・藤本敏晃:傷害致死
<飲酒を強要してホストを死なせた事件> 08年5月、静岡県浜松市の無職藤本敏晃被告(当時30)は、浜松市中区のホストクラブに部下ら7人と押しかけて、男性従業員(当時25)に23分間で焼酎を1リットル以上飲ませ、急性アルコール中毒による脳障害で死亡させた。1審で懲役3年6月の判決を受けた。

6月26日(金)被告人・山上厚:準強制わいせつ(初公判)
<知的障害がある女子生徒へのわいせつ事件> 09年4月、元スクールバス添乗員山上厚(当時73)は、送迎中のスクールバス内で、都内の特別支援学校中学部3年の女子生徒(当時14)にわいせつな行為に及び、逮捕された。


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阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」
阿曽山大噴火(あそざん・だいふんか)
 本名:阿曽道昭。1974年9月12日生まれ、山形県出身。大川豊興業所属。趣味は、裁判傍聴、新興宗教一般。チャームポイントはひげ、スカート。99年にオウム裁判をきっかけに裁判ウオッチに興味を持ち、その後は裁判ウオッチャーとして数多くの裁判を傍聴。自称「インディーズ司法記者」。主な著書に「裁判大噴火」「被告人前へ。」(河出書房)。

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