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きょうの社説 2009年6月22日
◎ラッピングバス 本格導入前倒しも検討を
昨秋から金沢市内で試験的に運行されているラッピングバスを、市民の約8割が好意的
に受け止めていることが、初めて実施されたアンケート調査で分かった。デザインの印象については「インパクトがある」「楽しい・華やか」「都会的」といった回答が目立ち、車両全体を広告で彩ったラッピングバスが、まちに魅力を付け加える存在として、積極的に支持されている様子がうかがえる。市は、「2年間は実験期間」という当初の予定にこだわらず、本格導入の前倒しを検討してもよいのではないか。金沢では現在、市の屋外広告物審査会の厳しいチェックをパスした10台のラッピング バスが、兼六園周辺の歴史的・伝統的地区を避けて走っている。今回のアンケート調査を通じて、同審査会の判断基準の妥当性も認められたと考えてよいだろう。「事前審査で金沢にふさわしくないデザインや色彩などを排除する」という一線さえ堅持しておけば、台数などについてはさほど神経質になる必要はないように思われる。 むしろ市には、ラッピングバスを「走るアート」と見立て、優れたものを考案した広告 主を表彰するなどして「デザイン競争」を促すくらいの前向きな姿勢を求めたい。ラッピングバスのデメリットばかりに目を向けないで、より魅力的な景観を形成する手段の一つとして活用するために知恵を絞ってほしい。 2014年度に北陸新幹線が開業すれば、新幹線効果を駅からまち全体に広げる二次交 通網の役割はますます重要になってくる。金沢の場合、路面電車が残っている富山などと違って、柱になるのはバスしかなく、その利便性向上を図るためには、行政などの努力とともに、バス事業者の協力が欠かせない。 先ごろ、近江町市場前のバス停留所にお目見えしたバス接近表示システムを搭載した大 型モニターは、国土交通省や県、市の補助金などに加え、ラッピングバスの広告収入も使って整備された。ラッピングバスが事業者の新たな収入源として定着し、設備投資意欲を喚起することにつながれば、一石二鳥である。
◎「公の施設」サービス 第三者評価も考えたい
指定管理者によって運営される「公の施設」のサービス向上を図るため、石川県は今年
度、利用者アンケートを本格的に実施する。指定管理者制度は石川、富山県とも2006年度に導入され、丸3年が経つ。その成果と問題点をきちっと検証するためにも利用者の生の声を聞くことは重要であり、県の所管課が行っている指定管理者の評価を利用者の側から補強することにもなる。これを機に「第三者評価」の仕組みも含めて指定管理者評価の在り方をさらに考えてもらいたい。指定管理者制度は、民間のノウハウを生かして「公の施設」のサービス向上と効率化を 図るため、民間企業や地域団体にも管理・運営を任せる制度で、官業の民間開放の一つである。 石川県の07年度の評価では、51の指定管理者のうち「適正で優れた実績を挙げてい る」のA評価(優)を受けた管理者は前年度より5増の11で、残り40は「適正」のB評価(良)、可・不可のC・D評価はゼロだった。施設利用者は前年度より7・4%増、料金収入も1%増えて、実質的な県負担額が2%減るなど、指定管理者制度の成果が示されている。 指定管理者による「公の施設」の管理とサービスを一層良くするには、適切な評価やモ ニタリングが欠かせない。しかし、所管課の評価にばらつきがあるなど、各県の評価方法はまだ試行錯誤の状況といえ、富山県行政改革委員会も昨年まとめた指定管理者制度活用の報告書で、評価方法の充実と結果の公表を求めている。 利用者アンケートは、「公の施設」の実際のサービス状況をチェックし、評価に反映さ せることはむろん、行政サービスに対する住民ニーズを掘り起こすうえでも有効な方法といえる。 また、金沢市などが既に導入している「第三者評価」も一つの方法である。所管課だけ でなく、市民による第三者評価委員会の目も通して、より適正な評価をめざす仕組みである。行政主導でなく、民間機関・団体による第三者評価制度を取り入れている自治体もあり、参考にしてもらいたい。
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