(どうする、どうしよう、) その人は、とても綺麗だった。 黒と白。モノトーンのその色があるだけで、世界が違って見えた。 儚くて、美しくて、強い人。 ああ、こんなにも。 (これって恋?) 気が付いたら、自覚してしまったら。自他共に認める単純バカのオレは一直線。 毎日応接室に通って。殴られて、蹴られて。(やり返せる訳なんて、ない!) 慣れたのか、諦めたのか。(多分後者だ。)半径60センチ位までは近付いても何も言われな くなった。(生殺しの距離だけど。) 「山本〜、シャマル先生が呼んでたよ!」 「おー、サンキューな!」 多分この前部活中にした怪我の保険についてとかだろう。 簡単に推測して保健室に向かった。 「失礼しま――」 「分かってんだろ?隠し通せるモンじゃねぇってことぐらい」 「何で、今更、こんなのって、ない」 「お前は女なんだよ。意識よりも先に、体が反応してんだろ」 低く唸るようなシャマルの声と、聞き覚えのあるそれよりは少しだけ高い綺麗な声。 「ヒバ、リ?」 振り返る、雲雀。 何故かその時「ヒバリが女だ」という事実はストンと心に落ち着いたのだ。 トンファーを取り出すこともせず、雲雀は窓から飛び出して行ってしまった。 後に残されたのは馬鹿みたいに呆然と突っ立ったオレと、訳知り顔で頷くシャマルだけ。 「、おっさん」 「坊主、聞いてたろ?――雲雀は女だ」 シャマルは酷くくたびれた顔をして、オレと向き合った。 「そして、女に戻したのはお前だ山本」 「戻すって……オイおっさんどういう意味だよ」 (気付かぬ間に、時計の針は進む。) NEXT