保護者から仕事で帰れないと連絡があったその日に夜。
碇シンジは、とうとう実行に踏みきることにした。
上機嫌に夕飯のハンバーグを平らげ、リビングへと引き上げていく少女。
彼女の背中を見つめながら、洗い物をする少年の手は、身が入らないこと夥しい。
アスカは気づいただろうか?
今日、ハンバーグを作るのに、ボールが二つあったことを。
そして、彼女の分の挽肉の中には、無味無臭の睡眠薬が投入されていたことも。
震えるシンジの手が、スポンジを握りつぶす。
彼の中で未だ葛藤が続けられていた。
まだ引き返せると訴える自分。
構わず突き進むよう囁く自分。
中途半端に洗い物を止め、エプロンで手を拭いながらシンジはリビングへと向かう。
聞こえてくるTVの声に複雑な思いを抱えながら。

…思えば、これが分水嶺だったのかも知れない。
TVを点けっぱなしのまま、リビングの床で、ラフな部屋着のまま眠っている少女。
薄い布地から伸びる眩しい剥きだしの手足を見て、彼は黒い誘惑に身を委ねた。







************************




発端は、先週送られきた自分宛ての荷物だった。

「シンジ! アンタ宛てに荷物来てるわよ!」

同居人の少女の声に、慌ててシンジは玄関へと走る。
無造作に放置された段ボール箱を見て、彼は首を捻った。
宛先が『碇シンジ様』になっているが、差し出し人の欄が空欄。
誰が送り付けてきたもなのか、皆目見当がつかない。

「邪魔だからさっさと持っていきなさいよ!」

なぜか玄関で腕組みをする少女に急かされ、シンジは段ボールを抱えた。

「なんか美味しいものだったら、ちゃんと分けてね〜」

とのアスカの声に送られ、自室へと運搬。
首を捻りながら蓋を開け、彼は凍り付く。
エアキャップで無造作に梱包された幾つもの塊。
それの一つ一つが、今までにお目にかかったことのないような代物だった。
いや、見たことがないわけでもない。こっそり隠している秘蔵の成人雑誌やなにやらで。
その雑誌の通販コーナーのページにあるのに似たものが、段ボールの中にごっそり詰め込んである。
いわゆるアダルトグッズと呼ばれるもの。
バイブレーター各種、拘束帯、そして、革製の団扇みたいな…これはなんなんだろう?
おそるおそる手に取りながら、シンジは考える。
もちろんこのようなものを直接手にするのは初めてのことなのだが、彼は自分が興奮してきていることを感じていた。
単純に使ってみたいと思う。もちろん相手は…。
頭を振り、それらを乱暴に箱の中に戻す。
何考えてるんだよ、僕は。
こんなもの、頼んだ覚えはない。送られる覚えもない。
きっと、誰かと間違えて送られてきたんだ…。
なのに、段ボールの中に同封された封筒を見つけたことにより、予想はあっさりと覆される。

<Dear shinji ikari>

B5サイズの封筒に書かれたその文字が、これが他人宛のものでないことを否定していた。
少しだけ躊躇って、シンジは封筒を開ける。
―――それが底知れぬ暗い闇からの招待状だとも知らず。
封筒の中は、数枚のレポート用紙。そこに記されている内容こそ、悪魔の計画とでもいうべきものだった。

『惣流・アスカ・ラングレーを、貴男のモノにしてみませんか…』

ワープロで打たれた文章は、そう始まっていた。
通常、ありうるべきではない手紙の書き出し。
人倫に反する唾棄すべき文章の連なり。
なのに。
夢中で、まるで憑かれたように、シンジはそれを貪り読んでいた。
無機質な文字を追う少年の瞳は、おぞましさより好奇心の方が遙かに勝っている。
手紙の主は、最初、訥々と、シンジの現在の状況を描写していた。
やがて、徐々に、彼の不遇を訴える内容に切り替わる。
そして最後は、そのような悪環境の根元たる惣流・アスカ・ラングレーを誅するよう結ばれていた。
このレポートだけだったら、シンジもタチの悪い手紙だと破り捨てたかもしれない。
しかし、これに続く数枚には、事細かにアスカを籠絡するまでの手順が記してあった。
シンジは、同封されているもう一つの小さな封筒を開ける。
中から出てきたのは小型の瓶。満たされているのは毒々しい液体。
これは強力な睡眠薬で無味無臭。なにかに混入して飲ませるだけで、対象は2時間は目覚めることはない。

『まず、これを彼女に秘密裏に服用させなさい』

マニュアルにはそう書いてある。
更に、段ボール箱の奥を漁ったら出てきたデジタルカメラ。

『これで、彼女が眠っているうちに、彼女の痴態を撮るのです』

脅迫だ。脅迫して、彼女を意のままにする。
可能だろうか?

『もちろんただ脅迫しただけでは彼女は屈しないでしょう。そこで…』

読み終えたシンジは、ひどく疲労したように顔を上げた。
なのに天井を見上げる彼の両眼は爛々と光っている。
だが、その瞳の色もたちまち薄くなる。
彼とて馬鹿ではない。どれだけのリスクが伴うかくらい計算できる。
論外だ。
シンジはそう結論づける。
なのに。このプランは魅力的な妖しい光を持って彼を惹きつけた。
単に14歳という性欲旺盛で多感な時期であることも一因だろう。
…それでも、ダメだ。

誰がこんなものを送りつけてきたのは分からない。
送り主がこれだけ身近なことを知っているという不気味さもある。
それらが生来の臆病な性格に及ぼした影響も否定できまい。

そのうち、捨てに行こう。
うん、いずれ、きっと。
全てを段ボールに詰め直し、箱自体は押入の奥深くに押し込んだ。
即座に破棄を選択しえない時点で、良心が誘惑に敗北していたことを、少年は知らない。





************************






煌々と蛍光灯の明かりが降り注ぐリビングで、シンジは足下に倒れ伏した少女を見下ろしてる。
無造作に散らばった紅茶色の髪の毛に、胸の動悸が更に高まる。
そろそろと、彼女の肩に手を伸ばす。
揺する。

「ねえ、アスカ。こんなとこで眠ると、風邪ひくよ…?」

応えは、ない。
ぐびりと、シンジの喉仏は上下する。
肩を押さえた手に力を込める。
ゆっくりと、うつぶせの少女の身体を反転させた。
仰向けになる彼女は、やはりピクリともしない。
隆起した胸に目を細め、シンジは再度肩を揺さぶる。

「ねえ、アスカ。ねえってば…」

やはり反応はない。
いよいよシンジの頭の奥はジリジリ音を立て始めた。
細かな電流が細くなって弾ける。
異様な興奮が手先を振るわせた。
おそるおそる伸びた手が、アスカのノースリーブのシャツのボタンに触れる。
震える指がボタンを外していく。
一つ。また一つ。
そのたびに、彼女の白い胸元が徐々にあらわになっていく。
白いシンプルなブラジャーが覗いた時点で、シンジは手を止めた。
彼は再度恐怖に襲われている。
このままボタンを止め直してしまえば。
あとは知らんぷりをしてしまえば。
刹那の葛藤。
気が付いたとき、シンジはすべてのシャツのボタンをはずし終えていた。
なだらかな腹部の膨らみ。
白いブラの眩しさに目を細め、彼は喉の乾きを覚える。
異常に興奮していた。
こうなってしまっては、もう止まらない、止められない。
紅茶色の頭の後ろに手を回し、上体を持ち上げて、シャツを完全に脱がす。
さらに、ブラジャーのホックも存外あっさり外れて。
一連の作業、全てに興奮する。
結果、少女の剥きだしの上半身が白日のもとにさらされた。
頭の奥が先ほどより熱に浮かされいるよう。
目の前の光景は、シンジにとって現実離れしたものにすら見える。
…あの、アスカが、上半身裸で…。
下はホットパンツを履いたままなので、余計扇情的に感じる。
白い隆起に、その先端の小さなピンクの粒に、触れたい欲求がわきおこる。
実行までには、ほとんどタイムラグがなかった。
決して大きくない彼女の乳房を、手のひらに収めるように、包むように触れる。
信じられないくらい柔らかい弾力。
アスカの目蓋は固く閉じられたままなのを確認。両方の手で触れてみる。
暖かで、滑らかな手触り。
張りのあるそれが、ゆっくりと自分の手の動きに合わせ、形を変える。
手の中心に当たるしこりのような感触は、乳首が隆起してきたのだろうか。
シンジは、自分がとてつもなく勃起していることに気づく。
胸に触れただけだというのに、この達成感。
このまま、軽く触れ続けるだけで、射精してしまいそうだ。
だけど…!
最後に残った理性をかき集め、シンジは手をもぎ離した。
急にあたりがぜーぜーうるさくなったと思ったら、自分の呼吸だ。
先に、やるべきことはやってしまわないと…。
不意にアスカが目を覚ましたことを考え、わずかに血の気が引く。煮とろけそうになっていた理性が形を取り戻す。
急いで立ち上がったシンジは、小走りで自室へと取って返す。
戻ってきた彼が抱えているのは段ボール箱で、この中の幾つかを使うつもりだ。
とりあえず取り出したのはデジカメで、本来の悪魔のマニュアルに従うなら、あってもなくても構わない代物。
しかし、そこは演出というヤツだろう。
はやる気持ちを抑えスイッチを入れる。バッテリーも十分だ。
そうしておいてから、シンジはいよいよ、アスカの下半身へと視線を送る。
ホットパンツから伸びる、完全に無防備に力の抜けた形の良い足。
なのに、上半身は一糸まとわぬ白すぎる裸身。
鮮やかなまでな対比に、喉が渇く。
今からやろうとしていることを想像するだけで手が震える。
チリチリと頭の奥が痺れるように熱い。
…見てみたい。
猛り狂う興奮の中においても、その欲求はきっと純粋なものだった。
純粋なエロスをもって、陵辱のための両腕を眠りこける少女の下半身へと伸ばす。
存外あっさりとホットパンツが滑らかな太ももの上を滑り落ちる。
中からあらわれた、飾り気のない白いショーツが酷く眩しい。
布地越しに触れてみたい思いに駆られるも、一気にその最後の砦すら奪いさる。
今、少女の全てが蛍光灯の元にさらけ出された。
ぷんと、甘い彼女の体臭が、一際強くなったように思われる。
頭の奥がクラクラと揺れた。
必死で均衡を保とうとするシンジの視線は、彼女の足の付け根に注がれてる。
女性の最も秘すべき場所に。
知識として、女性のそこに恥毛が存在するのは知っていた。
中学生といえど、際どい成人グラビア雑誌などで散見することが出来る。
しかし、実際に目前に見るのとは、まるで違った。それが、同居人の少女のものであるとすればなおさら。
地肌が見えるくらい、いや、肌の上に微かに載せるように散らばっている薄い縮れ毛。
おそらく、彼女の身体のもっとも柔らかい部分が隠されているであろうことを示しているはず。
心臓が跳ね上がる。
年齢に比して、アスカの恥毛は薄いほうなのだろうか。
そっと触れた。
じゃり、といった感触。その地肌はプニプニとした柔らかさ。
手を離し、少しだけ躊躇った指先は、恥毛の丘をゆっくりとスライドして、少女のもっとも秘めたる部分へと触れた。
それは、初めて体験する感触だった。
胸とは違う柔らかさ。温かさ。
頭の奥が熱に浮かされたように熱い。
欲望のままに、シンジは次の手順を実行する。
太ももに手をかけ、大きく少女の足を開く。
その中心に出現したものに、彼は一瞬だけあらゆる獣欲を忘れて息を呑む。
おそらく、いまだ誰にも汚されていないであろうアスカの女性器。
年齢相応なのかその秘性ゆえか、それは見事なまでの縦一本の細い襞でシンジを出迎えた。
あまりにシンプルな光景に見え、それだけに単純に綺麗だと思う。
どうして女の子はこんなに綺麗なところを隠さなければならないのだろう?
そう不思議に思えるほどに。
保健体育の授業で習ったことも思い出す。
ここが排泄器官であり、性交器官でもあることを承知はしているけれど、それすら疑わしく思える。
縦筋はそのまま臀部の割れ目に直結しており、もう一つの排泄器官もはっきり見えはしない。
もっと良く鑑賞しようとアスカの両太腿に手をかけるシンジ。
そのまま、いわゆるM字型に開脚させた刹那---花は綻んだ。
一瞬歪んだ縦筋は、ふっくらと細長い楕円形の形に開く。
中から零れるようなピンクの肉壁が覗き、左右対称の可愛らしい花びらが二つ苦しそうに舌を出していた。
いわゆる小隠唇であるのだが、そのような散文的な名称など、獣性を再燃させた少年にはどうでも良かった。
今までかいだことのないような匂いが鼻腔を昇り、視床下部を焼く。
一転、複雑な様相を露わにした女性器から軽く視点を下げれば、男女共通の形状をしたもう一つの排泄器官。
そこにあるすみれ色の小さな蕾もたまらない。
―――僕は、アスカの全てを見ているんだ!!
征服感も加わり、シンジの思考はひたすら高揚していく。
もっとも、この過度な興奮状態でそれを意識できるくらい、まだ彼は理性が残っていたといえよう。
本来なら暴走して少女の裸身にむしゃぶりついても仕方のないところなのだが、シンジは身を引きはがす。
ギンギンに痛いくらいに勃起したペニスのまま、少し離れた場所で彼が構えたのはデジカメだ。
ファインダー越しの鮮明な画像。
レンズに映る、全裸のアスカ。
冷静に、機械的に、彼女の秘所へズームアップ。
間接的に見ると、余計生々しい。
渇いた喉へ唾を送り込み、無理矢理渇きを誤魔化す。
震える指が一回シャッターを切り、画像を確認。
さらに女性器のアップを撮ってから、アスカの全身像も何枚か撮る。
メモリースティックを取り出しズボンのポケットに仕舞い込む。
新しいメモリーを入れて、同じ撮影をもう一回繰り返す。
それで、第一段階は終了だ。
デジカメを置いたシンジの視線はやはりアスカに釘付けだ。
しばらく近づくでもなく見守る彼の視線は、やがてゆっくりと段ボール箱の中へと注がれる。
そろそろ一時間くらいに経つかもしれない。
ならば、アスカが目を覚ます前に、もう一つしなければならないことがある。
悪魔のマニュアルに従うつもりではいたが、それでもその行為はなお少年を躊躇わせた。
フラフラと段ボールに近づき、シンジはそれを取り出す。
革製の手枷足枷。
これでアスカを拘束しなければならない。
目を覚まし現状を把握した彼女は、即座に報復に移るだろう。
こちらが脅しの言葉をかける前に、色々と説明する前に、組み伏せられデジカメを奪われでもしたら、目も当てられない。
だから、目を覚ます前に拘束しておく必要がある。
その上で、こちらの優位性を説くことで、彼女の痴態を自覚させることで、ようやく脅迫が成立する。
つくづく大それたことをやっている、とシンジは微かに自嘲したくなった。
でもここまでやったなら、もう後戻りは出来ない―――。
残された時間は決して長くない。シンジはさっそく実行に移る。
まず、彼女の細い両足首に、革製の足枷を二つ履かせる。皮の内側には綿入りの布が撒かれてあるので痕は残らないはず。
足枷の外の部分にはさらにベルトが存在し、これの使い方もシンジは学んでいた。
あらかじめなにげなくベランダの隅に準備しておいたスチール製の棒。
その両サイドにベルトを固定すれば、必然的にアスカは大開脚を晒したまま拘束される形になる。
足を拘束している過程で歪む少女の秘裂に目が吸い付けられはしたが、どうにか下半身の拘束は完了。
続いて両手の拘束に入る。
足枷と同様の構造の手枷は痕は残らないだろうけど、ベルトをどこかに縛り付けようか迷う。
結局、当初の計画通り後ろ手に拘束することにした。
まず両腕に手枷を付ける。続いてアスカの細い肩を支えながら彼女の両腕を背中に回した。
後ろで組み合わせベルトで固定すれば完成なのだが、そのまま仰向けにすれば苦痛だろうと、
クッションを敷いて上体を持ち上げ、直接体重がかからないよう空間を作ってやるあたりがシンジらしいといえばシンジらしい。
一応、これで全ての拘束が終了した。

全裸のアスカ。青い果実のような肉体が、本人の意思を無視して戒められている―――。

出来映えに対する異様な興奮を意識しないまま、シンジにはまだ懸念事項がある。
段ボール箱の中に視線を送り、逡巡。
結局、それを取り出してみる。
ピンポン球の左右にベルトがついているような形のそれ。ピンポン球には、まるでお玉のようなたくさんの穴が開いている。
ボールギャグといわれる拘束具の一種である。
正式名称は知らねど、使い方はシンジは知っていた。
未だ目蓋を閉じたアスカのピンクの唇を押し開くとピンポン球を噛ませ、髪が絡まないよう後頭部でベルトを締める。
きつくないだろうか。
身体を拘束するのとはわけが違う。口の拘束は、顔の部分であること、発言だけでなく呼吸も制限することに成りうる。
なによりシンジが不安なのは、このような拘束行為をするのが初めてなのももちろん、例のマニュアルには口蓋拘束まで記載されていなかったこと。
段ボールに梱包はされていたが、使用するのは彼の独断。
仮に拘束されていたとて、口が解放されていればアスカは黙っているわけがない。
それこそ凄まじい罵声、場合によっては悲鳴を上げるに違いない。
弱ったことに、アスカから罵声を浴びせられた途端、心が挫けない保証はないのだ。
長い同居生活でシンジは罵倒され慣れてしまっている。彼女の怒鳴り声に反射的に身をすくめてしまう自分がいる。
いささか情けないことだが、ゆえにこれらの一連の暴挙は、いわば予防措置と形容できるかも知れない。

―――とにかく、これで全ての準備は整った。

改めて全身を拘束したアスカを見下ろす。
まだ伏せられた長い彼女の睫毛。
あどけなさすら覗かせる白磁の頬。
…そこに取り付けられた、禍々しいまでの黒革の拘束帯。
背筋がゾクゾクするほどの興奮を覚える。
股間はいきり勃ちっぱなしで、射精していないのも関わらず下着の中が濡れているのをシンジは自覚していた。
後ろ手に拘束され、突き出されるようになったアスカの胸に指を這わせる。
緩やかな呼吸にあわせ上下するピンクの小粒の上を人差し指でなぞったところで、ボールギャグの間からくぐもった声が聞こえた。
身じろぎする裸身から、シンジは慌てて手を引く。
睫毛が瞬き、不快そうに眉根がより、ゆっくりと目蓋が開く。
ようやくアスカは目覚めようとしていた。
興奮とは別の理由で、シンジの心臓は不安定なリズムを刻む。
虚ろな青い瞳が天井を見上げている。それが焦点を取り戻すと同時に、大きく見開かれた。

「ふぐっ!? んふっ!? うふぐふふーーーーっ!?」

激しい身じろぎは、手足の拘束が抑制した。
驚愕の悲鳴は、口に嵌められたボールギャグが半減させる。
ただ、青い瞳だけはどうしようもない。
こちらを見て大きく見開かれた直後、鋭い怒りを込めた視線を送ってくる。
幸いにも、シンジはこれなら耐えられた。
いくら少女が藻掻いても、物理的かつ精神的な反撃は許されていない。
後は―――良心の問題だ。
そしてここに至ったシンジは、もはやその呵責をかなぐり捨てるのに躊躇いはない。
もう、後戻りはできない。
道は前にしか開けていない。
決して誇れるものではない道程に思いを馳せる。
不安がないといえば嘘になるのだが、背徳という名の甘美な液体が脳髄を水没させていく。
さあ、これから総仕上げの始まりだ…!
心を落ち着け、冷たくアスカの顔を見下ろす。

「ふぶっ!! ふー! ふーっぐ!! うぐっ!」

ボールの小さな穴から唾を飛ばし、頬を赤く染め、怒りも露わな少女の顔。
拘束されても、理不尽な所行に対する怒りに燃えていても、なお美しいと思う。
その赤くなった耳朶へと言葉を投げ落とす。

「静かにして、アスカ」

自分でも驚くくらい冷たい声が出た。
なのに、アスカはなお暴れている。拘束されて動かぬ四肢を懸命に動かし続けている。怒りに燃えた瞳でシンジを見据えたまま。
もう一度、シンジはいう。

「静かにして」

「うふぐっ!? ぐうふぅぐぐぐっふぐっぐ!! ふーっ! ふーっ!」

―――なぜ、次のような行動をとってしまったのかは、実のところシンジにもよく分からない。

スパーン!

小気味よい音を立て、少年の右手は、少女の剥きだしの臀部を打擲していた。
正確には、右腰から尻たぶにかけての部分。決して肉付きが厚い場所でないだけに、手にも衝撃の余韻が残る。

「ふぐうっ!? …………ふぐぐぐぐぅううう!!」

スパーン!
もう一度。

「ううぅ、ぐっ!!」

スパーン!
もう一度。

「ふぐっ…!」

スパーン!
更にもう一度。

「…………くふーっ、くふーっ…」

とりあえずアスカは大人しくなる。額に汗を浮かべながらシンジを見上げたのも束の間、恥じらうように視線を逸らした。
今更ながら全裸なことに気づいたのだろう。頬が上気させているのは怒りによるものだけではない。
そんな彼女の目前に、シンジが差し出したのはデジカメだ。
小さなディスプレイに撮影した画像データを表示させる。

「アスカ、これを見て」

チラリと横目でそれを見たアスカは、瞬く間に文字通り目を剥いた。
飛びしそうなくらい大きく見開かれた青い瞳。わななく睫毛。
小さな画面に映るのは、自分自身の全裸の姿。自分自身のもっとも秘すべき場所の大アップ。

「……………!!」

またぞろ手足を激しく動かそうとしたアスカの尻たぶを、またもやシンジは打ち据えた。
汗ばむ少女の頬。頬に張り付いた後れ毛も艶めかしいその赤く染まった耳朶に、ささやくように告げる。

「このデータは、すでにインターネットのあるサーバーにアップしてある」

マニュアルにあった脅し文句。それを一語一句再現する。

「僕が定期的にパスワードを入力しないと、自動的にこのデータはネット上に公開される。
 無作為に知り合い宛てのメールに添付され、送信される。…この意味は、わかるね?」

恨めしげなアスカの目。意味を理解できたのだろう。涙を滲ませながら、それでもなお気丈に睨んでくる。
自分でも不思議なことに、シンジはその視線を真っ向から受け止めていた。
言い聞かせるような感じで、脅迫の言葉の続きを口にする。

「だから、アスカがこのあと自由になって僕をどうこうしても、仕方のないことだからね」

このあと。
自由になって。
自由にする気もないくせに。
…アスカを僕だけのものにするのだから。
半ば無意識のうちに、彼女の胸に腕が伸びる。
激しく身体をよじらす上から、構わず押さえつけるように触れた。
片手にすっぽりおさまる乳房。
力を込めて締め上げるほど、まだシンジは理性をなくしてはいない。
むしろ、優しく揉みしだく。
手の中で形を変えるこの上なく柔らかい感触に酩酊する。
なのに、アスカ自身が身じろぎするため、かなり無茶な力がかかる。
快楽より痛みの方が強くなるだろうに、自業自得とばかりにシンジは乳房に触れ続ける。
次いで、もう一つの手は少女の剥きだしの股間へ。

「むー!! むーーーーーーっ!!」

意図を察したらしく健気にも内腿を摺り合わせるアスカではあったが、如何せん両足を広げる形で拘束されているので、それもままならない。
拍子抜けするくらいあっさりと、シンジの手は彼女の秘所に到達する。
性器全体を掌で覆うようにし、大陰唇の感触と柔らかさを楽しむ。
さらに内側に指を侵入させたとき、少年の表情は驚愕に変わった。
およそ今まで経験したことのないような手触り。
正確に言えば、自身の口腔内の粘膜に触れるような感触ではあったけれども、初めて触れる異性の内臓は、温度が圧倒的に違っていた。
仄かに温かいその場所は、渇いているようにすら感じられる。
つまりはまだ『濡れていない』状態なのだろう。
ややもすれば引っかかるような手触りの膣口の周り。左右のうちの小さなそれを、シンジの指が抓みあげた。

「ふーっ!! ふううううううううっ!?」

顔を下げ凝視すれば、アスカの性器の裂け目から鶏の鶏冠のような、いや、それに比べればあまりにも可憐で桃色の小陰唇が覗いていた。
嬲るにはまだ充血すらしておらず、愛撫はダイレクトな痛みとなって持ち主を襲ったらしい。アスカの反応を見れば一目瞭然である。
それを離した指は、その輪郭をなぞりながら恥丘よりの付け根へと到達する。
そこから陰唇が袂を分かつ。その頂点に存在するであろう陰核は、地面に穴を穿ったばかりの筍の赴きで、幾重もの肉のフードで覆われていた。
思わずシンジはそれをまじまじと見つめてしまう。
暴れるアスカの太股をおさえつけ、さらに股間を割り裂くように広げながら。
こうやって女性器を鼻先に見るのは初めてである。
もちろん、情報としては知ってはいたが、彼にとってその詳しい形状はいまだ未知のものだった。
勃起していない状態のクリトリスの詳細など、知るわけもない。
親指で、肉のフードごと押しつぶすように触れた。

「ふぐっううっ!?」

アスカの上半身が反り、下半身が右に逃げるように跳ねる。
それが痛みによるものか快楽によるものか、シンジには判断が付かない。
おそらく前者である反応であったが、そこが急所であると知らしめるのには十分だった。
親指を密着させたまま、円を描くようにこねる。

「…!!……っ!!!!」

まるで白魚のようにアスカの全身が跳ねる。
ずり上がり逃げようとする全身を、シンジは押さえつけ、逃がさない。
こねる指の下に、抵抗が産まれる。
小さな塊があるような感触。
フードの奥にある様子。
塊を潰すようにこねると、更にアスカの反応は強まった。
人差し指も戦線に投入される。
固い、おそらく自慰もしたこともないであろうアスカの女性器。
そこで幾重もの鎧に護られ、本人ですら見たことがないであろう部分。
今、その護りが、無惨にも二本の指にジワジワと剥がされつつある。

「うううううっ!! うう…ひっく、うう…!!」

アスカの青い瞳から涙が一筋こぼれたのを、夢中のシンジは気づいただろうか。
当然痛みがあるのだろう。ここもまさしく処女地である。
そしていつも、処女は男性に蹂躙される存在なのだ。
小さな器官でもあるゆえに四苦八苦していたシンジであったが、ようやく包皮を剥がすことに成功した。
産まれて初めて外気に触れたクリトリス。まるで痛々しく震える真珠のよう。
剥きだしにされた、彼女の最も敏感な部分。
周囲に白い恥垢も見受けられたが、それらが瑕瑾にならないほど、可憐な光景だった。
不意に匂いをシンジは意識した。
アンモニア臭とも、アスカ自身の体臭とも違う、青臭い匂い。
いわば、アスカが初めて発した女性の匂いなのであるが、今のシンジは女性器そのものに夢中だった。
嫌々するように暴れる少女の腰を抱え込むように、彼女の股間、剥き上げたクリトリスに視線を集中させている。
ここが男性器の亀頭にあたる場所で、とてつもなく敏感らしいことは情報で知っていた。
実際にそうかどうかは―――試してみるのが一番良い。
直接指で触れる前に、シンジは息を吹きかけてやる。
ざわっとアスカの全身が毛羽立ったような気がした。
ほくそ笑みながら、ちょんと指で突いてみる。

「くぅうん!?」

全身を、背骨を電流で貫かれたかのようなアスカの反応。
その反応が面白く感じたらしい。
まるで新しいオモチャを手に入れたかのように、シンジの指先が彼女のもっとも敏感な部分を責める。
触れる。
撫でる。
決して強く握ってはならないことも知っているから、優しくつまむ。
心地よい弾力。手触りは、幾分しっとりとしていて、いつまでも触っていたくなるような…。
全身に汗を滲ませるアスカを見て、シンジはようやく手を止めた。
そこで、彼は思う。
道具をここに使えば、アスカはどうなってしまうのだろう? どれだけ狂ってしまうのだろう?
裸体を奮わせる少女を前に、シンジは段ボール箱を漁った。
中から取り出したのはピンクローターだった。
スイッチを入れる。
小型の、うずらの卵ほどのローターは、振動音とともに手の中ではね回った。
ぐったりとした感じのアスカであったが、ローターを見て顔色を変える。
シンジのやろうとしていることは、火を見るより明らかだ。

「ふーーーっ!! ふぐぐぐふぐっー!!」

アスカ自身、叫んでも無駄なことは承知している。でも叫ばずにはいられない。
更に、必死で太股を摺り合わせる。
物理的に戒められている以上、それも無駄な抵抗なのだが、その果てに内腿に浮かびあがる筋肉は妙に艶めかしい。
恐ろしいことに、シンジの顔はいまだ無表情であった。
そして、なんの躊躇いもなく、小さな遊具をアスカの股間へと押し当てたのである。

「――――――――――――っ!!!!!!」

少女の裸身が反り返る。
まるで弓のように反り返り、紅茶色の髪は暴風にあったように振り乱される。
しかし、シンジの手は、アスカの股間を覆うようにガッチリと掴み、ローターが外れるのを許さない。
痛い、痛い、痛い―――!!
アスカの口が戒められていなければ、おそらくこう悲鳴が発せられただろう。
ところが今の彼女にはそれすら許されていない。
だから、痛みが快楽物質を分泌させ、それゆえに尿道が弛緩したのか、それとも激痛そのもののためか、他者には判断は付きかねる。
一際鋭くアスカの身体が反り跳ねた。
生暖かい感触を感じて、シンジは思わず彼女の股間から手を離す。
途端に噴水のような黄金色の飛沫が迸り、葛城邸のリビングに見事なアーチを描き出した。

……そのアスカの醜態もデジタルカメラにおさめ、ようやくシンジは彼女の口の戒めを解放した。
涎でしとどに濡れたそれをはずすと、彼女の半開きのままの口元からも、唾液が長い糸を引く。
とりあえずタオルでまき散らされた尿を拭き取るシンジの耳に、弱々しいアスカの声が響く。

「……あんた…なんでこんなことするのよ………」

なじる声にも力がない。かなり気力を消耗したのだろう。
むしろ細い肩が震えている。泣いているのかも知れないが、背をむけたシンジには分からなかった。

「…ふざんけんじゃないわよ、ばかぁ…!!」

語尾にえぐえぐといった声が混じる。
ここまでアスカを陥落させたことに罪悪感はない。むしろ、いまだ満たされない感情が、シンジを振り向かせた。

「ふざけていないよ。…アスカ、僕はきみの全てが欲しいんだ。きみの全てが見たいんだ」

それは愛の告白だったのだろうか。
捧げられた当人には、むしろ悪魔の宣告に等しかったかも知れない。
本心が歪んで投影された、邪悪な宣言。
それでもなお、邪悪とて純粋たり得る。
シンジはこういったのだ。
純粋に、欲望のまま、きみを手に入れると。
きみを手に入れてみせると。

「……だったら!」

こんな風に無理矢理しておいて――――!!
と、アスカは続けようとして絶句した。
理由は、シンジが段ボール箱の中から取り出したもの。
それを目の当たりにしたとき、誇張抜きで彼女の顔面から血の気が引く。

「……嘘でしょ?」

絞り出すようなアスカの声に、シンジは平静な顔と表情で応じた。

「僕は、アスカの全てが見たいんだ」

アスカの絶叫に、身体をうつぶせにされる音が被さる。
こちらにさらけ出された形の良い双丘。真っ白い、染み一つないお尻。
足の拘束と棒はまだ解かれず、従ってひっくり返すほうは至極楽な操作だった。
未だ後ろ手の戒めも解かれていないので、うつぶせ状態のアスカは身じろぎもままならない。
それでも逃れるように全身を伸縮させるが、ささやかな抵抗も足の棒を掴まれればあとはどうしようもなくなる。

「…止めて!! お願いだから…!! 」

なりふり構わぬアスカの懇願を、シンジは薄ら笑いで跳ね返す。
この時になって、やたら愉快な自分に気づく。
普段は気の強く振る舞っているアスカも、こうなってしまえばどうしようもない。
泣きべそをかきながら懇願する姿は、全裸であるという扇情感も加えて、シンジの中の新たな嗜好を呼び覚ます。
もっと苛めてみたい。もっと蹂躙したい。もっともっと汚してしまいたい…!!
いつもとは正反対の立場にたったとき、彼の中の加虐性は、もはや歯止めがきかないほどに燃え上がってしまっている。
髪を振り乱しながらのアスカの必死の懇願は、罵倒に変わる。


「ふざけないでよ、止めてっていってるでしょ! 殺すわよォォ!!」

それすら黙殺し、シンジは手に持ったそれを彼女の排泄孔へと近づけた。
いわゆるイチジク浣腸である。
さきほどの自分の打擲後も鮮やかな白い臀部。
その割れ目に息づく小さな蕾。
これから施される暴虐に、わなないている。
半ば暴走しているシンジであったが、浣腸器の嘴をいきなり突っ込むほど無謀ではない。
ローションやオイルで濡らしてから挿入するのが常道である。
躊躇いなくシンジは嘴を舐めた。微かに甘い。
わずかながら容器を握る力に手が入り、グリセリンが洩れだしたからだろうか。
否。
これがきっと背徳と加虐の蜜の甘さなのだろう。
甘美さに酔いながら、たっぷりと嘴に唾液をまぶし、シンジはそれを容赦なく小さな蕾に差し込んだ。

「やあああああああああああああああっ!!」

悲鳴すら心地よい。すかさず浣腸器を握り潰し、中身を注ぎ込む。

「……ああ、いや……入って…くる…………」

絶望的なアスカの声。
この後に展開される避けられぬ光景。
想像するのもおぞましい極限の羞恥。
歯を食いしばる彼女の両眼から、とうとう大粒の涙がこぼれ落ちる。
不可避の近未来。
直腸に染み渡る冷たさが、アスカの背筋を駆け上がり、脳髄をわしづかみにする。

あたしは、どうなっちゃうの? どうされちゃうの…!?

ショックによる一時的な想像力の欠乏。
どうなるかなど、分かり切っている。しかし、それを是とすることを理性が否定するゆえの矛盾思考。

「……あああっ!!」

唇を噛み、アスカは悲鳴を堪える。お腹の中が鳴動する。注入されたグリセリンが、敏感な内臓に爪を立てている。
水っぽい感覚が、出口を求めて暴れ出している。
必死で括約筋に力を込めるが、いつまで堪えられるか。
苦痛と絶望が、アスカの全身に鳥肌を立てた。
更なる恐怖が、彼女に悲鳴を上げさせる。

「いやーーっ!! アンタなんかに見られるのは死んでもいやーっ!!」

左右に振られる尻も、もはや排泄を堪えてモジモジとしているようにしか見受けられない。
その痴態を、シンジは無言で見守っている。

「…く…!ふーっ…ふーっ! くううう…!!」

やがてアスカの全身に、脂汗が滲み出てくる。
とりもなおさずそれは生理現象に逆らい続けた証ではあるのだが、限界が近づきつつあるのもまた誰の目にも明らかだった。
耳をつんざく悲鳴を聞いても微動だにしなかったシンジが、そこで初めてアクションを起こす。
なんとアスカの足枷を解放したのだ。

「……?」

荒い呼吸を繰り返しながら、アスカは即座に解放された両足をちぢこませている。
ぴったりと両膝を閉じ、尻たぶをすぼめるが、事態が好転するわけではない。
便意は、すぐそこまで迫っている。
後ろ手の戒めは解かれず、なお四つんばい状態のアスカの正面に、シンジは回り込む。
顎から汗と涎をしたたらせ、たっぷり絨毯に染みをつけたまま、それでもアスカは上目遣いで睨んできた。
この期に及んでその眼差しは、もはや気高くすら思えた。
戒められながらも屈服しないと訴えてくる青い瞳。
瞳は涙で彩られてはいても、誇りは失わないと声高に主張している。
そんな彼女は、シンジの目には一匹の美しい獣に見えた。―――だからこそ、調教のしがいがあるというもの。

「立って」

短くシンジは言う。
激しい便意に襲われているだろうに、それでも不審な眼差しで見上げてくるアスカに、更に言い募る。

「ここでされちゃ、後かたづけが大変だからね。トイレでしてもらうよ」

一瞬だけ、青い瞳に安堵の色が浮かぶ。
ああ、ここで醜態をさらさなくていいのだ。文明人に相応しい場所で排泄できるのだ。
束の間、感謝の色にさえ推移しようとした瞳の色は、目蓋ごと固く結ばれる。
なにゆえ感謝する必要があるのか。
今、現実に、自分を苦しめているのは、このような苦境に陥れたのは、他ならぬ目前の少年なのだから…!!
歯を食いしばり、アスカは上体を起こす。
後ろ手に縛られているので大変だったが、シンジが背後から持ち上げてくれた。
ようやく二本足で立ち上がったアスカであったが、どうしても上体を丸めてしまう。
立ち上がったことにより、便意は重力も味方に付けた。あとは流れ落ちるだけとばかりに、腸内で出口を求めて荒れ狂っている。

「ふぅうううううっ……!!」

思わずため息とも苦痛ともつかない息がアスカの口から漏れる。
その声が耳に届いていないわけはないだろうに、シンジは憎らしいまで平静に彼女を促した。

「ほら、こっちだよ」

肩を掴まれ、押される。

「………くっ!!」

横目で睨み付けながら、アスカは震える足を動かす。
上体を丸めているのに、肛門はすぼめなければならず、さながらその移動は千鳥足のような感じである。
そろそろと移動するアスカの全身は、更なる脂汗にまみれて艶々と光っていた。
激しい便意との格闘の末、後ろ手を戒められたままの少女は、ようやくトイレまで辿り着く。
シンジがすでにドアを開け放っていてくれたので、スリッパを履くのももどかしく、便座に腰を降ろそうとして―――冷たい声に遮られた。

「ダメだよ、アスカ。こっちにお尻を向けてくれなきゃ、僕からよく見えないじゃないか」

「…………っ!!!」

予想できないわけじゃない。もともとリビングで排泄させようとしていたのだから、シンジの意図が痴態の鑑賞にあるのは明らかだ。
だけど……!!

「この…変態っ!!」

わななくアスカの唇が、非難の矢を射放つ。
怒り、苦痛、羞恥、それら全てがない交ぜになった感情を込めて。
しかし、シンジは微動だにせず、アスカはもうそれ以上感情を解き放つことは出来なくなった。
もはや便意は限界ギリギリに達し、無駄な抵抗と知りつつも、それをなお留めようとする彼女。
排泄衝動を抑えるのに全身全霊を傾注した今、それ以外のことは全て意識できなくなっている。
苛烈なまでの我慢の根元は、彼女の比類なく高いプライド。
天才少女の名を意のままにした自分が、もっとも恥ずべき排泄行為を他人に鑑賞される羞恥と恐怖。
それは、今まで培ってきたプライドの瓦解に繋がる。彼女自身を否定してしまうこととも同義だ。
なのに、時間と薬品は、容赦なく彼女を破局へと導いていく―――!!

「…いやあ、こんなのいやよ、うそよでたらめよこんなのって、こんなのって……!!」

こちらに背中を向けたまま尻を戦慄かせるアスカ。
口から零れる台詞も、ともあれば呂律を欠いており、もはや誰に向けられているものか定かではない。
正面の何もない壁を見つめる虚ろな瞳は急速に理性の色を失っていっているのだか、シンジには看取できないだろう。
彼が見て取れたのは、全身を震わせる彼女の後頭部。痙攣するように波打つ髪。背中。尻。そして便器にまたがる格好で大きく開かれた太股。
均整のとれた肉体は、このような状況下においてもなお美しい。
驚くほど優しげな瞳でそれを見守るシンジの口元には、父親譲りの歪んだ笑みが張り付いている。
そのことに少年自身は気づいてない。






彼は、ただ静かに少女の限界を待った。
それはおそらく、終わりにして始まり―――。













序章・完