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【激論・国と地方】対談:橋下徹大阪知事 中田宏横浜市長 (2)

システムとして歯止め必要

【世襲問題】

 橋下氏 国会議員の先生も「イベントに来てほしい」「どこどこの歩道の幅を広げてくれないか」など細かい話をしてくる。選挙がそういう仕組みだからだ。小選挙区には賛成だが、エリアを小さくすべきでない。エリアを小さくすれば、そういう地元だけの議員になってしまう。世襲にしても公募制などに制限した方が国民は納得する。

 中田氏 政党がルールを決めるべきだ。世襲はいかんという話ではないが、(親と)同一選挙区で(の出馬)は党公認について制限する必要がある。

 橋下氏 理想論かもしれないが、世襲を容認する党と、対抗して世襲制限する党があって、有権者が選べばいい。

 中田氏 システムも重要だ。選挙はハードルが高い。それを越えるには、(立候補するときに)世襲(であるということ)は大きなアドバンテージ(有利な点)。システムとして歯止めをかけるべきだ。たとえば任期制限があってもいい。どっぷりつかると新陳代謝がなくなる。民間企業は創業者だろうがワンマン社長だろうが長く続けたっていい。なぜなら、客が選択できるから。気にくわなければ、客はほかの店に流れる。だが、国も地方も税金で運営されているところは、客は税金を払わないという選択ができない。だから、(国会議員や知事のような)税金で営んでいる所は、システムとして新陳代謝を行えるようにしておく必要がある。

 橋下氏 市場にさらされない代わりのシステムとして新陳代謝が必要というのは同感。人が流動しない、固定化された組織は衰退の一途をたどる。そういう意味で官の組織は非常に風にさらされにくい。

国政に影響力持つ存在に

【選挙への関与】

 中田氏 国の直轄事業について言えば、直轄で地方が国から補助金をもらうときは、面倒な手続きが必要。それこそひとつひとつ詳細に算出する。(それなのに)国が(負担金を)求めるときは紙っぺら一枚で、内訳は全く見えなかった。たとえば、横浜市の道路や港湾での直轄事業(に対する負担金)では車両購入費で車1台1000万円とあった。1000万って、ベンツで作業するのかなというような感じ。

 橋下氏 地方分権については、こないだも全国知事会や近畿ブロック知事会で「やり方を変えよう」という話をした。政治って結局、力なんですよね。知事会は文章をまとめることがすべてになっている。それじゃ何も進まない。紙じゃなくて力だ。物を言うには、必要なのは政治パワー。国民からしたら地方分権なんて言っても、地方(自治体)も霞が関も同じ。「目くそ鼻くそを笑う」だ。地方自治体は、国民から後押しを受けるような行動を起こさなくてはいけない。

 中田氏 さすが、その通り。知事会などには霞が関から来ている人がいっぱいいる。知事会などは既存の枠組みの中でしか意見を言えない仕組みだから、既存ではない構造を求めるのならば、既存ではない声の出し方をしなければならない。

 橋下氏 行政と政治の仕組みを変えるのは、力しかないと思っている。ぼくらは、国民からの後押しを受けていくしかない。国会議員の先生が何を一番恐れるかといえば、選挙じゃないですか。だから、地方自治体の首長は選挙にちゃんと影響力をもてるようなポジションに就かなければ、国に何をいっても聞いてもらえないと思う。一人だったらぼくもかなわないけど、何とか自治体の長で集まって、右か左か決めて、党議拘束をかけれれば。政党の力というのは、党議拘束をかけたパーティーの力で、ぼくらもパーティーで党議拘束をかければ、政治パワーを持てると思う。

 中田氏 われわれが今までの構造ではない新たな枠組みや運動論を作らなければいけない。それをだれが、どこから始めるかということだと思う。

 橋下氏 組織は危機感を持たなければいけない、危機感が地方分権の原動力になる。ぼくが地方分権を言い出したのは、「国があと30年したらどないなるんやろう」と思ったからだ。

 中田氏 国民にも危機感がない。中国が軍事力で世界第2位、経済力ではこの2、3年の間にも日本を抜いて世界第2位となる。それでも日本は外貨を稼いできたビジネスモデルを続けようとしている。危機感がない国でどれだけ声を出してもだめ。

 橋下氏 大阪府がそうだった。府民は財政状況なんて知らなかった。「これだけ借金です」という話をすれば危機感を持つようになった。

 中田氏 (知事会のような大きな組織ではなく)小さな中でも本気でやる人たちが、声を上げていかないと(国を変えようという運動は)広がらない。国民も同じ。このままでは日本は滅びるという危機感を持っているかどうか。持っているなら声を上げていかないと。われわれも一国民以上の役割を果たさないといけない。どうやって来るべき総選挙にのぞむのか。首長たちの新たな声の出し方を組織していくか。

 橋下氏 声を出すだけだったら知事会も市長会もある。霞が関は国会議員だけを見ている。国会議員は選挙を見ている。次の選挙に対してどう働きかけをするのか。何もしなければ、何十年も動かせなかった地方分権の運動になってしまう。アピールや提言だけではダメ。自治体の長が今までタブーだった国政選挙にどこまで声を上げるのかに尽きる。

 中田氏 しないといけないというのはわかっている。どういうふうに具体的な運動論につなげるかが問われている。

 橋下氏 次の選挙で、一気に変わるとは思わない。こちらが政治パワーをつけないと国は聞いてはくれない。パワーの源泉は国民の後押し。自治体の方が先に国民の後押しを受けるような行動を仕掛ける。

 中田氏 次の総選挙は大きな節目だが、それだけでは面白くない。その後にどう形にしていくかも含めてやっていかないと。(政党の)マニフェストもしっかりと評価していく。

中田宏(なかだ・ひろし)中田宏(なかだ・ひろし)昭和39年9月20日、横浜市出身。平成元年、青学大経済学部卒業後、松下政経塾入り。4年に日本新党旗揚げに参画し、細川護煕参院議員(当時)の秘書を経て、5年の衆院選神奈川1区に日本新党から出馬し、初当選。衆院議員は3期務め、新進党、無所属の会を経て、14年の横浜市長選に出馬して当選、現在2期目。市政のさまざまな改革に取り組んでいる。

 

橋下徹知事橋下徹(はしもと・とおる)昭和44年6月29日、東京都生まれ。平成6年、早大政経学部卒業後、司法試験に合格し、9年に弁護士登録、10年に橋下綜合法律事務所を開設。その後、テレビ番組などに出演し、歯にきぬ着せぬ発言で人気を集めた。20年1月の大阪府知事選に自民、公明両党の推薦などを受け出馬し当選。府政の大胆な改革を行う一方、国の直轄事業廃止など国政にも厳しく注文をつけている。

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