2009年6月22日10時0分
名古屋城本丸御殿の復元工事現場から望む天守閣。鉄筋コンクリート製で、エレベーターもある=名古屋市中区
名古屋市の河村たかし市長が最近、金のシャチホコの乗る名古屋城天守閣の「木造での建て替え」を公言し始めた。着工した本丸御殿の復元でさえ、「不況下で続けることが適当かどうか」と議論を呼んでいる中で、500億円かかるとも言われる天守閣改築を、「本気度は百%」と宣言。開会中の市議会6月定例会で、独自の財政論を披露し、実行可能の根拠を示すという。
河村市長が天守閣への熱意をあらわにしたのは、14日にあった本丸御殿復元事業の賛否を問う公開討論会。終わり近くに、司会を務めた市長が突然、「名古屋を訪れても『行く所が無い』と言われるのはいかんこと。わしは天守閣を木造で再建しようと言う意見ですけど。賛成の方どれくらいいますか?」と、参観者150人に挙手を求めた。
市長は「8割以上が賛成ですよ」と満足そうな表情。翌日の会見で「本気度は百%。都市として自慢できるものが欲しい。今のコンクリート製の天守閣では『名古屋人として寂しいんでないの』と強調したい」と宣言した。
天守閣の木造復元は、衆院議員時代からの持論。戦前、宮内省(当時)が管理していた当時の図面が残っていることから、「完全復元が可能」と熱意を見せていた。
市長就任後も、会見時の背景に使用する看板に戦災で焼失する前の名古屋城の意匠をあしらうなど意思表示をしていた。
最大の壁は500億円といわれる建設費。市長は「銀行は不況で預金の貸出先が無く、金余りの状況。政府が仕方なく銀行に国債を買わせて預金を引き受けており、日本は財政危機ではない」と持論を展開する。
天守閣の再建に当てはめると、建設費のために市債を発行する→市債の利子を市が銀行に支払うことで銀行は利子収入を得る→銀行の利子収入は預金の金利という形で市民にも還元される。元本の建設費で建てた天守閣は、市民にとっての財産であり借金ではない――との論法で、「定例会でぜひ財政論を戦わせたい」と意気込む。