【北京・西岡省二】北朝鮮の朝鮮労働党指導部が、核やミサイル実験に先立つ今年2月下旬、全党員に対し、軍事分野で「先進国だけが独占する最先端技術を我々式に開発する」と通知する内部文書を配布していたことが分かった。核・ミサイル実験の準備を進めていた時期に、党指導部が軍事力強化の方針を正当化する内容を通知し、党員の士気高揚を図ろうとしていた様子が見て取れる。
毎日新聞が入手したのは、党中央委員会が2月26日付で出した「全党員に送る秘密の手紙」と題する「秘密」扱いの文書。弾道ミサイル実験(4月5日)前に、北朝鮮が「衛星をロケットで打ち上げる」との談話(2月24日)を発表した直後に作成された。
文書は冒頭で「我々の偉大なる祖国に、最も重要で決定的な時期がやってきた」「ついに強盛大国の入り口に足を踏み入れた」と宣言。金正日(キムジョンイル)総書記も不眠不休で精力的に現地指導を続けていると紹介し、これに歩調を合わせるよう指示している。
また、金総書記については「我が国を、誰も手出しできないような核強国に押し上げた」「5000年の民族史の宿怨(しゅくえん)をはらされた」ことを「功績」として挙げてたたえた。
そのうえで「世界が全く知らず、我々がいまだ明らかにせず、我が人民も見ることがなかった、実に優れた経済力が我々にある」と前置きして「我々の国家経済力の柱をなす国防工業は、先端技術革命の入り口に確かに立った」と強調し、核・ミサイル技術力が向上したと暗示。そのための核実験実施などを念頭に「(軍需工業部門では)既に足を踏み入れた先端技術の入り口で、もう一度、大胆に飛躍しなければならない」と呼びかけた。
さらに、日米韓との関係悪化を意識しながら「帝国主義列強の兵器を、我々式の先端兵器で断固粉砕できるよう、軍事生産を高度に主体化・現代化させよう」と訴えた。
毎日新聞 2009年6月22日 2時30分