【ボン大場あい】京都議定書に定めのない2013年以降の温暖化対策を話し合う国連の特別作業部会で9日、温室効果ガスの削減目標の基準年に関する日本提案に異論が相次いだ。日本は同議定書に盛り込まれた90年比に加え、05年比など複数年からの削減率併記を提案した。だが、欧州連合(EU)や中国など90年比を主張する国から「数字遊びはやめるべきだ」と厳しい批判を浴びている。
京都議定書の目標期間は08~12年で、90年比で温室効果ガスの削減目標を示している。しかし、特別作業部会で日本政府代表団は「90年比では特定の国に有利なので変更すべきだ」と主張した。削減努力が早くから進み、90年比の方が削減率が大きくなるEUを念頭においたと見られる。
日本の場合、2020年時点の排出目標を数値化した中期目標は90年比より05年比の方が削減率が大きくなる。麻生太郎首相は10日、05年比の中期目標を公表する見込みだ。米国でもオバマ大統領が今年2月、05年比で14%減との目標を提案。日本は、議定書から離脱した米国も含め、排出量の増減傾向が時期によって異なるすべての主要排出国が不公平感なく目標設定し、13年以降の次期枠組みに加われるよう、削減率併記を提案した。
一方、EUや中国、韓国などは、議定書の目標と比較しやすいことなどを理由に、90年比の継続を支持。中国は日本提案に対し、「複数年基準は混乱を招く。基準年を変えれば削減率はよく見えるかもしれないが、(この会議は)本当の削減について議論している」などと難色を示している。
毎日新聞 2009年6月10日 東京朝刊