西松建設の巨額献金事件で、政治資金規正法違反罪などに問われた前社長国沢幹雄被告の初公判が東京地裁であった。
国沢被告は違法と知りながら2006年10月ごろ、二つの政治団体名義で小沢一郎民主党代表代行の資金管理団体「陸山会」などに計500万円を献金したとされる。被告は罪状認否で起訴内容を認め、検察側は禁固1年6月を求刑し結審した。
注目されるのは、検察側の冒頭陳述の内容だ。岩手、秋田両県の公共工事の談合で、小沢氏の事務所の意向が「天の声」となり、業者選定に強い影響力を及ぼしたと指摘。西松建設の多額献金を目立たせないため分散するよう要請したこと、「天の声」を得て、計約122億円に上る四つの公共工事を受注したことも明かしている。
国沢被告の「小沢先生の歓心を買い、工事受注のために違法な献金をしていた」とする供述調書の一部も読み上げられた。
検察側は西松事件の一方の当事者である小沢氏の公設第1秘書大久保隆規被告の役割についても説明。建設業者と献金額の交渉を行い「天の声」を出す業務をしていたなどと具体的だ。大久保被告が「政治団体の献金が実際には西松建設からの献金と知っていた」と認めた供述調書も提出し、証拠採用された。
検察側の指摘が事実とすれば、政治資金処理上の「単なる形式犯」と説明し、検察の捜査を「国策捜査」と呼んで批判してきた小沢氏の主張は覆る。西松建設と小沢事務所との癒着の構図を描くことで、多額の献金に理由があったことを示そうとしたといえよう。
大久保被告側は「検察官の主張は抽象的で、ゼネコン関係者の一方的な供述に基づくものにすぎず、そのような事実は一切ない」と反論している。
民主党の鳩山由紀夫代表は「小沢代行は(関与は)ないと言っているから、信じている」と述べた。個人の法廷闘争の問題として批判をかわす基本戦略のようだ。しかし、小沢氏が西松建設から十数年で数億円の献金を受け取ったのは否定できない事実である。「政官業癒着」を批判してきた党の立場から、あらためて小沢氏に説明責任を果たすよう求めるべきだ。
西松建設の献金は二階俊博経済産業相ら自民党議員にも及んでいる。検察は二階派の政治団体がパーティー券を購入させた問題で不起訴処分としたが、検察審査会は不起訴不当を議決した。検察は重く受け止め、捜査の手を緩めてはなるまい。
政府は、追加経済対策の目玉として導入した省エネ家電の購入を支援する「エコポイント」制度で、ポイントと交換する計271件の商品やサービスなどを発表した。肝心の中身が煮詰まらないまま見切り発車していた同制度は、ようやく形を整え本格的に動きだす。
対象となる製品は、環境性能を5段階で表示する「統一省エネラベル」で原則四つ星以上のエアコン、冷蔵庫、地上デジタル放送対応テレビ。制度がスタートした5月15日以降、来年3月31日までの購入分について、出力や容量などに応じてエコポイントが付与される。ポイント登録や商品交換の申請受け付けは7月1日から。
交換商品は、今月1011日に公募して選んだ。百貨店や地域の商店街が発行する商品券、電子マネー、地域産品など多彩だ。当初は省エネ製品に限定する予定だったが、衆院選を控えて自民党内から地域振興への要望が出され、範囲は大幅に広がった。環境配慮型製品はわずか9件にとどまった。
家電量販店などの売れ行きは好調だという。景気浮揚策と地球温暖化対策が相乗効果を高め、さらにエコポイントが地域に波及効果をもたらすことができれば結構なことである。
しかし、政府が描く「一石何鳥」の思惑通りにいくかとなれば疑問だ。とりわけ懸念されるのが環境面への効果である。出力が大きい大型家電ほどポイントが高いため省エネ効果を疑問視する声もある。買い替えが進めば大量の家電廃棄物が生じ、環境への負荷が増しかねない。
エコポイント制度の意義は、環境に配慮した産業を育てて新たな需要や雇用を生み出す出発点ということだろう。環境への軸足を、もっとしっかり踏ん張らなければならない。
(2009年6月21日掲載)