○国産の豚、牛について、輸入の飼料を使っている農家が多い。飼料を国産でということで、米
等で代用しているが、千葉県ではどのようにしているのか?
(答)千葉県では、今年度から飼料米に実践的に取り組んでいる。リキッドフィード製造工場
に、ある程度乾燥した状態の玄米等を供給し、豚用飼料で利用している。
また、ソフトグレインサイレージ(籾のみ)や、ホールクロップサイレージ(樹、葉、実を
全部サイレージにし、牛に給餌)、米の籾殻つきの状態の玄米を豚・鶏に給餌する等、
総力をあげて試験研究に取り組んでいる。一方でこれらは使う農家がいて初めて役
に立つ。その橋渡しを行うため、市町村と一緒に取り組んでいる。
さらに堀江さんから「飼料米は、籾殻を砕く機械の導入、工場等の施設を必要とするなど問題点があるが、一番は価格の面。お米を作っている農家が飼料米のために作っても収入になるのか。消費者がプラスα分も含めて負担してくれれば。」と話す。
○「ちばエコ」について、千葉県内の企業や事業者の独自の基準をどのように考えていけばいいのか?
(答)ちばエコと企業との基準の整合性については、ちばエコの農薬・化学肥料の使用は慣
行栽培の2分の1以下を基準。環境負荷の軽減が端緒で始まったもので、安心農産物
を消費者に届けていくことを目的にしている。民間にもコープの取り組み等色々あり、
企業の基準もそれぞれ異なるため整合性がなかなかとれないが、今生産者の中でGA
Pへの取組みが進んできている。取引先(企業)との条件・内容が整理されないと(GA
P取り入れた)生産者との有効性が見出せない。今後は生産工程の管理も含めて検討
したい。
○千葉県のエコフィードについて、利用したい農家と提供する者をつなぐ仕組みはどのようなものか?
(答)千葉県畜産協会が生産者の利用希望調査等を取り、利用したい人の情報を収集し、
エコフィード工場等とのマッチングを行っている。
さらに堀江さんから、「アグリガイアの工場ができる前、資源の循環を取り入れなければならないと感じ、平成17年から始めた。しかし、当時は利用者を募ったものの、興味を示す人が少なかった。今では手を上げる人が増えたが、逆に原料が少ない。1ヶ月170tのエコフィードが必要だが、
現状は25t程度しかない。マッチングを行いたくても、その利用を大々的に行えない。」との現状説明があった。
大学生の皆さんの御意見・御感想
今回の意見交換会には、農畜産業を勉強されている大学生の皆さんにも参加していただきました。提出してもらったレポートの中から主な御意見・御感想を紹介いたします。
○
意見交換会に参加して、主婦の方々の関心が非常に高く終始圧倒された。訪問先の方々に熱
心に質問している姿を見て、こんなにも農業に強く関心を持っている人がいることを知り少し安
心した。しかし、一方で若い人はどう思っているのか知りたいと思った。農業や食への関心を多
くの若い人が持たなければ、農業や食にさほど明るい未来があるとは言えないからである。
○
日頃の学習を通じて、地域循環型の農業が、生産者・消費者双方にメリットのあるものとして大
切であると感じている。堆肥化、エコフィードは、地域循環型の農業の実現に重要な役割を担っ
ている。
○
料理への満足感は、料理の味や香りだけではなく、食事への期待を高めることも重要との研究
結果がある。食材の味や形などは、生産者やエコフィードを作る人たちが努力して改良できる。
行政は、彼らを支えてエコフィードやエコ農産物の認知を広げ、食材あるいは食事への期待を
高めるよう取り組んでもらいたい。
○
アグリガイア飼料化センターを訪問したとき、「もったいない」を原動力に食品残さのリサイクル
を行っているという話を聞き、本当にその通りだなと実感した。まずは、リサイクルの前に、食
べ残し、賞味期限切れになってしまうような買い過ぎや注文のし過ぎをなくすことが大切である
と思った。
○
エコフィードは、食品残さの量を減らせる上に、畜産農家の飼料コストを節約できるというメリッ
トもあり、今後さらに注目されていくと思います。また、今回訪問した堀江ファームさんのダイヤ
モンドポークのようにエコフィードで育った豚のお肉がブランドものとして確立し、付加価値を得
て流通されていることも、他の畜産農家がエコフィードに取り組む切掛けにつながるものと思い
ます。
○
エコフィードの問題の一つは消費者のイメージです。従来から使用されてきた飼料に対して、安
全性やおいしさといった観点からの疑問にどう答えていくか。消費者にどのようにして受け入れ
てもらえばよいのか。まず、はじめは消費者にとって受け入れやすい価格設定にすることや、
エコフィードのロゴを作って広めていくなどの工夫が必要になると思います。
○
地球は世界で一つしかない、地球資源も少なくなっている。今の世界の人口数は70億であり、
年間穀物生産量が2億トン前後である。しかも、半分以上の穀物は家畜の餌になっている。こ
のため、貧乏な国などでは、穀物さえ食べられないところもある。昔の農業大国である中国は、
現在食糧輸入国に転落した。特に、中国国内の飼料用穀物の不足問題が益々厳しくなってい
る。遠くない将来(2030年)、中国の人口は16億人になり、食糧需給量7.34億トン、飼料用食糧
飼料3.67億トン
※)が推測されている。それに、資料からの予測では、2050年世界の人口は90
億前後になり、その時代に食糧不足問題は当然なこととなるだろう。
人間は経済発展に無理な要求をするため、耕地が工場に変わり、地下水資源が枯渇化、
大気汚染、と種々の問題が新たに生じている。その結果、地球が「病気」になり、住み難くなっ
ている。人間として基本的な目的は生きることであり、食糧に依存することである。経済発展は
豊富な食糧の基盤の中で、考えられるものである。
※)「中国三農問題の報告」 3-2 中国発展出版社 2004年4月
○
高橋ファームさんを見学させていただき、人参の葉の鮮やかさと土の黒さが印象に残った。高
橋さんには、土地の話を聞かせていただき、土地の成り立ちやお祖父様の頃と今では作ってい
る作物が違うなど、現地で話を聞けたことで、よく理解でき興味深く思った。
○
訪問先を回り、行政、消費者、生産者の人たちと意見交換をして感じたことは、見学先ではお
互いの距離がなく、とても話しやすかったが、意見交換会という会議の場で、立場を分けて話す
と距離を感じてしまい、緊張して上手く意見が言えなくなってしまった。それでも普段私が感じて
いるような距離を行政側には感じず、意見を言えたのが良かった。このように立場の違う人か
らの意見が交換され、お互いが理解していくことが、これからの農業や社会でうまく生活してい
く上で必要なのではないかと感じた。
このような機会を作ってくださったすべての方々に感謝したいと思います。
○ 食品残さの再利用を行う工場や農場を見学し、話を聞くことでより現実に近いことを学ぶことが
でき、また、それをもとに多くのことを考える機会を得た。消費者の一人としてこれらの取組み
に関して、理解を深めていきたい。
日本農業新聞の掲載記事
この意見交換会の内容が平成20年11月14日付日本農業新聞の南関東版(11面)に掲載されましたので、ご紹介いたします。
