映画「野良猫ロック」シリーズなどのアクション映画や、ドラマ「あぶない刑事」「西部警察」「相棒」などを手がけた映画監督で演出家の長谷部安春(はせべ・やすはる)さんが、14日午後5時7分、肺炎のため神奈川県内の病院で死去していたことが20日、わかった。77歳。葬儀・告別式はすでに親族のみで済ませたという。長谷部氏は日活でニューアクション路線を支え、その後テレビ界に進出。アクション、刑事もの作品には欠かせない人物として名をはせていた。
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「べーさん」と誰からも親しまれていた長谷部さんが、天国へと旅立っていた。
関係者によると、長谷部さんは1年ほど前、映画「鑑識・米沢守の事件簿」の撮影を終えた後から体調が優れなかったという。今年3月下旬に行われた同映画の初日舞台あいさつに出席した際には、元気な姿を見せていた。映画は、長谷部さんが監督、息子のハセベバクシンオー氏の小説が原作と“親子共演”を果たしたとあって、壇上でうれしそうにしていた。だが、これ以後、公の場への登場はなかった。
直後に体調が悪化し入院。周囲を気遣い「(入院を)漏らすなよ」と、詳しい容体など明かしていなかった。今月14日に帰らぬ人となった。
長谷部さんは、58年に日活に入社し「日活ニューアクション路線」を支えた。80年に独立しテレビ界にも進出。映画で培ったアクションを武器に、「あぶない刑事」「西部警察」「大都会」「相棒」などの刑事ドラマシリーズを多く手がけた。現場では怒鳴り声が絶えず、厳しいと評判の監督だったが、仕事を離れると、シャイな人柄だったという。
81年には、自身が監督を務めた「西部警察」で、主演の故・石原裕次郎さんが解離性大動脈瘤で入院。その際、内容変更や撮影の変更などドラマに関するすべてを仕切り、放送にこぎ着けた。
長谷部さんの手がけた映画やドラマに多く出演した俳優・渡哲也(67)は、都内で取材に応じ「3年前会ったのが最後。『大都会』をやってたとき(松田)優作くんと衝突して『表に出ろ!』とかいうこともあって、血気盛んな監督さんでした。熱血漢で元気なイメージしか残っていないので…。ショックでした」と、信じられないといった様子で話していた。