コラム

2009年06月20日号

【検察と政治】
民主党第三者委員会の「法相指揮権」に対する見解はおかしいのではないか?


●読売新聞記事
 読売新聞は19日付朝刊で、<「法相指揮権」で波紋 民主第三者委が言及 与野党ともに「疑問」>という見出しで次の記事を39頁トップで報じた
「西松建設の違法献金事件を受けて民主党が設置した「政治資金問題を巡る政治・検察・報道のあり方に関する第三者委員会」が、今月10日にまとめた報告書の中で「法相の指揮権に」に言及したことを巡り、与野党から疑問の声が上がっている。その後の記者会見で、森法相は「看過できない」と不快感を示し、民主党の岡田幹事長も「我々の考え方と全く違う」と述べた。19日に東京地裁で開かれる西松建設前社長らの初公判を前に、戦後一度しか発動されたことがない「法相指揮権」を考える。

「指揮権発動はしない」。民主党「次の内閣」で法相を務める細川律夫衆院議員は、同党が政権を担った場合の自身のスタンスをそう語った。弁護士でもある細川議員は「時の政府による恣意(しい)的な介入は避けなければならず、報告書はおかしい」とも話した。
 細川議員を含む「次の内閣」の歴代法相7人のうち、読売新聞の取材に応じた4人は指揮権の発動に慎重な姿勢を示している。

 自民党の法相経験者も批判的だ。森山真弓衆院議員は「法相を務めた際、指揮権発動を考えたことや議論したことは一度もない」と振り返り、長勢甚遠衆院議員も「在任時に指揮権発動を検討しようと思ったこともない。法相は検察の捜査について、基本的には関知しないのが不文律となっている」と語った。
 「個別の事件の捜査や起訴・不起訴の処分については、検事総長のみを指揮できる」。検察庁法14条は法相の権限をそう定めている。この指揮権について、京都産業大法科大学院の渥美東洋教授(刑事法)は「捜査が暴発しないよう、抑制・均衡を図るのが法の趣旨だが、日本の社会や経済が大混乱に陥る可能性があるとき以外は使ってはならない」と指摘する。

 戦後、法相の指揮権が発動されたのは、1954年の造船疑獄事件だけで、佐藤栄作自由党幹事長への捜査は事実上頓挫、犬養健法相は辞任に追い込まれた。
 検事総長経験者の一人は「造船疑獄の経験から、指揮権の発動そのものが極めて制約的に行われるべきだという考え方が歴史的に定着してきた」と解説し、「発動がその時々の政治状況に影響されていては、検察の厳正・公正さが揺らいでしまう。報告書の指摘は大変心外だ」と言う。
 1988年から90年まで検事総長を務め、総長在任中に多くの政治家や官僚が摘発されたリクルート事件の捜査を指揮した前田宏弁護士は、「自分の在任中、指揮権が発動されそうになった事態は一度もない」と証言する。そのうえで、「法に定められている以上、指揮権発動をめぐる議論があってもおかしくはないが、発動は慎重であるべきで、やはりないことが望ましい」と話している。

 第三者委員会の座長を務めた飯尾潤・政策研究大学院大教授の話「報告書は、検察の行動に制度として歯止めがないことを問題にしている。指揮権発動は一般的には慎重であるべきだと思うが、今回は非常に例外的な事件だ。一般の刑事事件とは違い、法解釈に争いも起こっている。そうしたことを踏まえ、きちんと指揮権について考えなければいけない。言葉が出た瞬間に反応されるというのは、そのこと自体をタブーにしているということだ」


〈第三者委員会の報告書〉
 東京地検特捜部は今年3月、小沢一郎・前民主党代表の政治団体が、西松建設からの献金を同社のダミーの政治団体からの献金と偽り、政治資金収支報告書に虚偽の記載をしたなどとして、公設第1秘書を政治資金規正法違反容疑で逮捕、起訴した。第三者委は同党に提出した報告書で「違反が成立するのか疑念がある」とし、「今回のように重大な政治的影響のある事案では、法務大臣は高度の政治的配慮から指揮権を発動し、あえて国民の判断にゆだねるという選択肢もあり得た」と記した。委員は、飯尾潤・政策研究大学院大教授(政治学)、郷原信郎・名城大教授(元検事)、桜井敬子・学習院大教授(行政法)、服部孝章・立教大教授(メディア法)。
 ◇「指揮権発動」に関する各国会議員の見解=表略

●民主党民主党第三者委の言及を斬る
「造船疑獄の際の法相の指揮権発動は犬養法相が検察行政に素人、むしろ兼務だが、法相経験を持つ吉田首相、東京地検に人間関係を持つ緒方副総理の方がくわしいという背景があり、佐藤藤佐検事総長は判事出身、検察部内掌握する能力に欠けていたことにより起きたという背景があった。佐藤栄作、池田勇人氏以外にも犬養氏も捜査線上に名前が取り沙汰されており、犬養氏が法相としてふさわしかったか、どうかも疑問があった。捜査状況は東京地検だけが握っており、東京高検、最高検は十分把握していたか、どうか疑問があった。特殊例外的前例だ。。

 小沢氏の秘書の政治資金規正法違反事件は民主党第三者委員会の見解「今回のように重大な政治的影響のある事案では、法務大臣は高度の政治的配慮から指揮権を発動し、あえて国民の判断にゆだねるという選択肢もあり得た」は小沢代表の言動を正当化するためのこじつけだ。小沢氏は逮捕される状況にあったわけでもなく、あくまで公設第一秘書兼政治資金管理団体の会計責任者を立件したにすぎない。民主党は小沢続投のみを目的に過剰反応したように感じる」

戻る