愛する息子の一言でタバコを卒業した。
去年の暮れに情報番組で肺ガンの特集をやっていたのを観た。
肺ガンを宣告された年配の男性に密着していた。
その男性が喫煙者であるというのもまたよくある話しである。
小学校1年生の息子がそのテレビを観ていた。
その後ろでタバコに火をつけて煙を吐き出しながら私もテレビを観ていた。
今まで生きてきて何回くらいこの類(たぐい)の番組を観ただろうか。
喫煙のリスクについて専門家がわかったような顔で解説をする。
タバコを吸ったら肺ガンになりやすいとか、胃がんや心筋梗塞、脳梗塞のリスクだって大きいんだよとか・・。
聞き飽きた、もううんざりだ・・・。頼むからそんなに喫煙者を責めるなよ・・・。
私の思いとは裏腹にテレビでは摘出されたグロテスクな内臓を映し出している。
それはタバコのヤニで真っ黒になり、見るに耐えられないほど気持ち悪かった。
と、突然に息子が振り向きざまにこんなことを言った。
「とうちゃんはもういっぱい吸ってるやんか・・・。このテレビがもっともっと前にやってたらよかったのに・・・。」
一瞬ナニを言っているのかよくわからなかったが、すぐに彼の言葉を理解した。
タバコを吸ったら肺ガンになりやすいという話しを”とうちゃん”・・・すなわち私が今はじめて聞いたことだと思ったようだ。
みると息子が涙目になっている。
妻が「そうだね、タバコは身体に悪いよね」と息子をなだめている。
やめた。
もうやめた。息子のあんな顔をもう見たくない。
とうちゃんタバコやめるわ・・と言ったときの息子のうれしそうな顔が目に焼きついている。
20年以上吸い続け、一度も禁煙したことの無かった私だったがその日からきっぱりとやめることが出来た。
あの日から4ヶ月が経つが1本たりとて吸っていない。
われながら感心する。
どうだろう・・・。
もうそろそろ卒業証書をもらっても良いかと思うが・・・。
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