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2009-06-21
■[読書][ラノベ]90年代的傾向とゼロ年代的傾向を比較する
前回書いた、90年代とゼロ年代の主人公像の話をもっと普遍化して――
葉鍵系に代表される90年代美少女ゲームブームから派生した「90年代的な作品群」と、新本格ブームを原点とすると思われる「ゼロ年代の作品群」の全般的な傾向を図表化して比較対象してみました。
ここでは仮に「90年代的」「ゼロ年代的」という表現を使っていますが、これはあくまでほかに言いようがないゆえの便宜上の表現であって、2008年〜09年においても、電撃の『とらドラ』、ジャンプの『To Loveる』など、「90年代的傾向」を持つ作品は十分な成功を収めています。
その一方で、たとえば『ラブひな』と『ネギま!』の差異を鑑みるに、「普通の主人公から特異な主人公へ」「情報量の抑制から情報量の過剰へ」「ご都合主義から厨設定へ」などといった傾向は確かに存在していると思います(人命軽視の流れまで受け入れなかったのは良識でしょう)。
こういう傾向の存在が、どういう「意味」を持つのか、まだ整理できてないのですが、とくめーの考える「90年代」と「ゼロ年代」の違いを中間報告的にまとめてみました。
90年代的なものとゼロ年代的なものを比較する | ||
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90年代的作品の傾向 | ゼロ年代的作品の傾向 | |
ムーヴメント | 90年代葉鍵系ブーム | 00年代異能バトル系諸作品 |
原風景 | 能天気な80年代・バカ騒ぎのバブル | 暗い90年代・空虚な00年代 |
ベースとなった文化 | サンデー・少女漫画 | ジャンプ・新本格 |
ファンの世代 | オタク第三世代 | オタク第四世代 |
理念 | ヒューマニズム | ヒロイズム |
思想 | (戦後)民主主義 | (新)自由主義 |
キーワード | 萌え | サヴァイブ |
よくあるスタイル | (ハーレム系)ラブコメ | 異能バトル |
典型的な小説レーベル | MF文庫J | 講談社ノベルス(メフィスト) |
代表するアダルトゲーム | Kanon | Fate |
アダルトゲームメーカー | 葉鍵・Navel・オーガスト | ニトロ・型月・age |
最近のヒット作アニメ | とらドラ | コードギアス |
代表するキャラクター | 福沢祐巳 | 夜神月 |
主人公の性格 | 篤実な博愛主義者 | 怜悧な決断主義者 |
主人公の設定 | (初期状態では)普通の一般人 | 選ばれた/悲劇の英雄 |
エンディング | 概ねハッピーエンド | 死亡・離別エンド多め |
目的のための犠牲 | 断固として許容しない | 積極的に許容する |
命の価値 | 重たい | 軽い |
情報量 | 不足 | 過剰 |
ありがちな問題点 | 安易なご都合主義 | 厨設定の大量投入 |
代表的論者 | 東浩紀 | 宇野常寛 |
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