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きょうの社説 2009年6月21日
◎空飛ぶオタマ 「科学する心」育てる一助に
オタマジャクシが空から降ってくる現象が全国で目撃されています。新聞はもとより、
テレビの情報番組でも報道されない日は珍しいほどの過熱ぶりです。子どもたちがいる家庭では、「なぜ」「どうして」の攻勢にお父さん、お母さんがタジ タジになっている光景が目に浮かびます。好奇心は、自分で探索し、考えるという自発的な行動を引き出します。試したり、失敗したりを繰り返す遊びの中から「科学する心」が芽生えてくるのです。いつの時代も子どもはオタマジャクシが大好きで、よき遊び相手です。梅雨の晴れ間に、散歩がてら親子でオタマジャクシを探しに出掛け、「空飛ぶオタマ」の不思議に思いをはせてみませんか。 一連のニュースは、今月4日、七尾市中島市民センターで起きた不思議な現象を本紙が 記事にしたのがきっかけでした。100匹のオタマジャクシが空から降ってきた「事件」を、若い記者が首をひねりながら報じたものです。それ以降、全国でも目撃情報が相次ぎ、テレビや新聞各紙で特集が組まれるほどになりました。雨は降りやんでも、オタマジャクシが降りやむのは、当分先のようです。 「鳥が運んだ」「風に飛ばされた」「いたずらでは…」。空飛ぶオタマの珍現象に専門 家も首をひねり、大人も子どもも空想を膨らませ、ああでもない、こうでもないと言い合っています。 「鳥がはき出したのだろう」「それにしては消化の跡がないのは不思議」「一度に10 0匹ものみこめるかしら」「サギじゃなくて賢いカラスの仕業では?」「小さな竜巻に吹き上げられてとばされたのかもね」 一種の「超常現象」のようで、簡単に説明が付かないから、いろんな解釈ができるから 、話が弾むのでしょう。石川発の空飛ぶオタマの不思議は、絵本の題材にもなりそうです。 目撃情報は北陸3県を飛び越え、秋田県から広島県までの13県に広がりました。その うち海外から空飛ぶオタマの目撃談が届くかもしれません。年を重ねて夢失わず、自然に対する畏敬の念と、子どものような好奇心をいつも忘れずにいたいと思います。
◎農政局職員処分 モラルの低下も甚だしい
事故米の不正転売事件を契機に改革論議が進む農林水産省で、また不祥事が発覚した。
地方農政局や農政事務所の職員の中で、コメの在庫量調査で虚偽のデータを報告したり、調査対象の農家への謝礼を着服するなどしていた者が続出し、大量の処分者を出す事態になった。農水省職員の著しいモラルの低下ぶりをあらためて示すもので、同省に対する国民の不信は深まるばかりである。信頼の回復には抜本的な体質改善が必要である。事故米問題を受けて農水省の改革チームは昨年11月、懺悔(ざんげ)録ともいえる緊 急提言書をまとめた。その中で「かつての農水省は、農村の貧困追放と都市へのふんだんな食料供給という使命感の下に職員一丸となって職務にまい進していた。しかし、時代とともにそのような使命感が薄れ、誰のため、何のために仕事をしているのかという基本的な行動倫理が失われてしまった」と反省している。 その上で、事なかれ主義や縄張り意識、国民利益の追求よりも組織内で波風が立たない ことを優先する組織風土など、農水省の根本的な問題点を指摘した。 農業は古来、国の大本といわれてきた。職員は国民のために農業を守り、育てる気概、 使命感を取り戻してほしい。日本の農政はいま大きな転換点にあり、農政事務所の廃止といった農水省改革案も示されているが、堕落した職員の職業倫理を立て直さないと、組織の再編や目先の不正防止策をいくら講じても、失われた信頼を取り戻すのは難しかろう。 コメの在庫量調査は生産調整(減反)の基礎データとなる。虚偽の報告は繰り返され、 常態化していたという。一部とはいえ、減反制度自体を揺るがすことになりかねない問題である。 地域では農産物の「地産地消」や食育が推進され、農業人材を育成する取り組みも強化 されているところである。ヤミ専従問題を含め農水省職員の度重なる不祥事は、こうした現場の意欲的な取り組みに水を差し、国の農業政策そのものの信頼性まで損なう恐れがあると認識してほしい。
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