2009年6月20日20時44分
【テヘラン=吉武祐】イラン大統領選の投開票に不正があったと訴えるため、20日にテヘランで予定されていたデモ行進について、主催者の改革派組織が開催を取りやめた。当局の許可を得ずに大規模抗議行動を続けてきたが、前日に最高指導者ハメネイ師が強制排除を示唆して中止を要求したため、危機を回避する形になったとみられる。
中止はこの日、複数の国内メディアが報じた。改革派がこのまま抗議行動の継続を断念すれば、大統領選をめぐる混乱は少なくとも表面上は収束する可能性も出てきた。
大統領選で敗北を受け入れず、抗議行動の中心となってきたムサビ元首相は20日、声明を発表するという。
中止されたのは、改革派の重鎮ハタミ前大統領ら宗教指導者による政治組織「闘う聖職者たち」が、市中心部のアザディ(広場)周辺で計画していた大規模デモ行進。
目撃者の話では、会場とされた中心部の広場周辺では20日、武装警官を十数人ずつ乗せた車両が多数配置されていた。デモに参加しようとしても近づけず、友人に「来ない方がいい」と伝えている人も多いとみられる。
また、近郊からバスで革命防衛隊傘下のバシジ(志願民兵)が多数集結。バイクで走り回っていたとの目撃談もある。ハメネイ師発言が保守強硬派を結束させ、デモを封じ込んだ側面もありそうだ。
ただ、当初は十数万人が集まるとみられていたこともあり、一部でもデモを強行すれば、衝突の可能性は残る。
ハメネイ師は19日の金曜礼拝で改革派に対し、「法の枠外での極端な行動は慎むべきだ。さもなければ、結果に責任を負うことになる」と発言していた。「結果」とは、デモの強制排除による流血の事態を予告するものと受け止められた。ハメネイ師は、大統領選の活発な議論はイスラム体制の枠内でされたと強調し、無許可の抗議行動は「反体制」とみなすとした。