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きょうのコラム「時鐘」 2009年6月20日
石川五右衛門を名乗る泥棒が金沢に現れた。そう名前を記し、「2度と入りません」と置き手紙をした。天下の義賊も安く見られた
五右衛門といえば、釜ゆでの刑が有名である。作り話だろうが、豊臣秀吉暗殺を図って捕まった。子どもと一緒に釜ゆでにされたとき、子を高々と持ち上げて息絶えるまで守った。義賊の最期である。そうではなく、熱さのあまり、子を踏み台にしてあがいたという話もある。こうなると化けの皮がはがれる 日本郵政社長人事をめぐる騒ぎを泥棒の釜ゆでに例えるのは失礼だろうが、釜の底に社長を沈めようとしたのが前大臣で、逆に社長を持ち上げたのが首相であろうか 話はそこで終わらず、正義を叫ぶ前大臣は内幕暴露に忙しい。高々と持ち上げたはずの首相の足元も、ふらつき始めた。しまりがつかぬ。こうなると、火の手の上がる政府の中に飛び込んで、助太刀を買って出る有能な人材など、誰もいまい 元をただせば、膨大な赤字施設を作らせ、不祥事の温床を放置してきた政治家と官僚の罪である。「天下の悪人はほかにいる」と、芝居の五右衛門なら、そう叫ぶ。 |