消えたパチスロ「4号機」が… 「行列のできる」店舗摘発
6月20日14時5分配信 産経新聞
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ゲームセンターにはたくさんの中古パチスロ機が並ぶ。中でも4号機は人気だ(写真:産経新聞) |
色とりどりのネオンが連なる歌舞伎町2丁目。街のシンボル的な存在だった演歌の殿堂・新宿コマ劇場(閉館)や、歌舞伎町のマンモス交番にほど近い雑居ビルの地下1階で、賭博店「レインボー」は営業していた。
5月10日午前2時ごろ。
終電が過ぎても“不夜城”は人通りが絶えない。警視庁保安課の捜査員らがレインボーに踏み込むと、17人の男たちが一心不乱にパチスロ機を打っていた。
捜査員は常習賭博の疑いで、37歳の在店責任者とホール担当の3人、見張り役の「シキテン」と呼ばれる男の計5人を現行犯逮捕した。17人の客のうち15人が釈放されたが、賭博の疑いで2人が現行犯逮捕された。
店には67台もの4号機が置いてあった。予備機も13台あり、警視庁はこの日、全国最多となる計80台を押収した。「4号機」とは特定の機種ではなく、同じシステムを持つ一連の機種を合わせた呼び名で、レインボーには「吉宗」「北斗の拳」など、往年の人気タイトル47種がそろっていたという。
警視庁保安課によると、レインボーは2月に開店。風俗店でチラシを配るなどして宣伝し、午前10時から午後8時と、午後10時から午前8時の「2交代制」で営業していた。「開店前に行列のできるパチスロ店」として業界では有名な存在だった。
昨年10月にも、レインボーから200メートルほど離れた歌舞伎町1丁目の賭博店「ひばり」を保安課が摘発。ここにも「4号機」20台が設置されていた。ほかにも1月に豊島区南池袋で31台を設置した店が摘発され、2月にも札幌・ススキノの店で36台が押収されるなど、全国で「4号機賭博」の摘発・押収が相次いでいる。
パチスロ業界の関係者によると、4号機を集客の目玉にしたこうした賭博店は、1年ほど前から全国の繁華街にじわじわと広がっているという。
捜査関係者によると、こうした店は音が外にもれないようドアなどを閉め切っており、入り口には見張りのシキテンが立っていることが多い。監視カメラをつけたり、窓をベニヤ板で覆うなどして、中の様子がばれないよう気を使っているという。
警視庁保安課の幹部は「客は『4号機が打てるなら行く』という人たちばかり」と話す。その魅力の秘密は何なのだろう。
4号機は、もともとは合法のパチスロ機として、平成19年まで、全国各地の店舗で一世を風靡(ふうび)していた。人気を博したのは、そのギャンブル性の高さが理由といわれている。
人気サイト「チャーリー・ロドリゲス・湯谷のパチンコ、パチスロラブマシーン」を運営するピーアールシー社代表、中田藤生さんは「パチスロは国家公安委員会が定める遊技機規則に基づく試験に合格しなければ設置ができないが、4号機は、規則の『より広義な解釈』で生まれた。1回のBB(ビッグボーナス=大当たり)で獲得できるのは最高771枚で、1時間に5000枚獲得できる機種もあった」と解説する。
パチスロの「基本」をおさらいしておこう。遊ぶにはメダルが必要で、通常、プレーヤーは1枚20円で購入する。メダルは直接現金化できないが、1回店内で景品に交換し、それを店外の所定の場所で「売る」ことによって、実質的に換金できる仕組みとなっている。ちなみにパチンコもシステムは同じで、通常の場合、玉は1個4円で購入する。
換金率は店ごとに異なり、メダル1枚を買値と同じ20円で「換金」できるシステムは等価交換と呼ばれる。つまり、4号機の1回の大当たりで得られる「771枚」というのは、等価交換のお店であれば、1万5400円に換金できることを意味する。1時間に得られる「5000枚」は10万円のことだ。
一方、現行の5号機は、1回のBBで6000円から6400円にあたる平均300枚〜320枚程度獲得できる機種が現在は増えている。「爆発力」では、かなり見劣りがするといえるだろう。
とはいえ、4号機が街からなくなったことにも相応の理由がある。「当たらなければ、速い人だったら1時間で3万円が消える」(パチスロ業界関係者)というように、はずれるときのダメージも大きいのだ。
パチスロにのめり込んだ若者の借金問題がクローズアップされたり、駐車場の車内で置き去りにされた子供が死亡する事件が起きて社会問題化した経緯を受け、4号機は警察庁の通達により、19年7月までに撤去されることが決まった。後継の5号機では、メダルの獲得枚数やゲーム性に厳しい制限がついたので、ギャンブル性は落ちた。
ただでさえ過激な4号機だが、歌舞伎町の「レインボー」ではメダル1枚を一律20円とはせず、40円、100円のレートでも客に遊ばせていたという。
「本業が苦しく、闇のパチスロを始めた」
常習賭博容疑で摘発された歌舞伎町の「ひばり」の経営者だった男(43)は、警視庁の調べに対してこう供述したという。男はもともと、中古パチスロ機を販売する会社の社長を務めていた。
街に大型店が並ぶ光景からは想像しづらいが、パチスロ業界の苦境は現在、深刻化している。「パチスロを設置する店は、5号機になってから売上高が4号機時代の5、6割程度に、利益も3、4割に減少したといわれており、新台が売れない状況がおきている」(中田さん)。
パチスロ愛好家の男性(36)は「4号機は研究すればするほど勝率が上がり、1000円で20万以上を稼ぐ一獲千金の夢があった。5号機はテクニック無用の運任せ。『細く長く遊ぶ』ことに主眼が置かれており、バカバカしくてやっていられない」と4号機と5号機の違いを語り、こう付け加えた。
「お金のためだけではなく、ゲームとして面白いので、今でも4号機をやりたくなる。4号機で遊べる違法店があれば、行ってみたくなるのが人情だ」
それでも、「どうしても4号機を打ちたい」というファンが、合法的に打つ方法もある。中古台の一部はゲームセンターに転売され、改造されて置いてあるのだ。このほか、個人でも「おもちゃ」として購入できる。人気機種でなければ1台1万円程度が相場だが、当然のことながらいくらメダルを出しても換金はできない。
違法店で稼働している4号機については、捜査当局も入手先を解明できておらず、“闇の市場”があるとみられている。
「ひばり」の事件では、経営者の男がもともと中古パチスロ機を扱う仕事をしており、その台の一部を店に並べていたが、こうしたケースはあくまで特殊だと捜査関係者は指摘する。
警視庁保安課の幹部は「4号機を流すブローカーがいる限り、裏スロ店はなくならない。こうした闇の市場の取り締まりを強化していきたい」と、まん延化してきた違法店の撲滅には“元を絶つ”必要性があることを強調している。
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最終更新:6月20日14時5分
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