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2009-06-18 このエントリーのブックマークコメント

「入って」と言うと

彼は「入って?」と聞き返してきた。

「そう、入って」

私はもう一度、言い直した。

彼は固く勃起しており、もう何回連続で交わったのかわからなかったけれど、

彼はそのペニスを片手でつかみ、もう片手で私のヴァギナを開いた。

「そうだね、入るよ」


何度してもしたくなる。

足りない。

まだしたい。

僕はマスターベーションを覚えた猿だ。

それでもやはり何回も繋がりたい。


「それならば、また入る?」

私はにっこりと笑った。

コンドームはまだ残ってる?

大丈夫。まだあるから、まだ…


彼は私に抱きつき、舌を絡め、そしてすばやく避妊具を装着した。


「なんでこんなに立つのだろうか…」




射精するときのその歪めた顔は、まるでこの世に誕生した瞬間の赤ん坊と一緒ね」

「あなた、私の中に入り、男になりながら、最終的には私から出産されてるのよ」




私は彼の萎れたペニスからゴムを外し、小さくなったそれを口に含み、吸った。


「苦い」



私は髪の毛を耳にかけ、それをまた吸った。

彼は声を上げ、少し体を仰け反らせた気がした。

その反応から私はこれを続けることを判断し、そのまま舌で舐め続けると、

それはいつの間にか本来の姿を誇り、彼は懇願する。

「そのまま、お願い…」

私は何も言わずに続ける。舌で舐め、吸い、根元を手でしごき

時には睾丸を口に含み、彼が達するまでそれをいろいろな手段で刺激し、

彼は私の口中に射精し、私はそれを飲む。


乱れた髪の毛を直していると、彼もまた、私の髪を解してくれる。

「枝毛はあえて切りません。どうせ長さをそろえたりしているうちに

毛先を切ったりするでしょうから、ならばある程度の長さを残すことに専念します。

これはもう、預かり物だと思っていますから」

彼は私を抱きしめ、「ありがとう」と。

「この髪の毛は今はカラーリングをしていませんが、

ここまで伸びる間に何回もカラーリング経験し、さらに縮毛矯正も年に2回されています。

次は私、もう髪を染めません。もちろんシャギーもいれず、なるべく傷まないように伸ばします」






あなたが私に飲ませたこれは、きっと私の髪の毛をつくるでしょう。

私は少しずつ、あなたによって構成されていくのです。

私は今度、ピルを飲もうかと思っています。

そうすれば今度は私の体内にもあなたの精液が入ってきますね。

どんどんと私とあなたは近づいていきます。

私の方が年が上だけれども、幾度も繰り返せば、細胞代謝を繰り返しますから、

私の体のどれぐらいかはあなたによって生み出されるでしょう。

だから、がんばって出してくださいね。

もう一体、あなたは特別な方法で人形を作り出すのですから。




彼は再び勃起していた。

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2009-06-16 決定 このエントリーのブックマークコメント

automate_tomo2009-06-16

写真は顔を渦巻きにしてしまったけれど私。

でも今はもう少し痩せている。




電話があった。


詳しい日取りは決まっていない。

長さもまだわからない。

70センチ人形になる。



私は泣かなかった。

電話越しに涙を流し、肩を固め、首に力を込め、

普段と何も変えぬように装いながら、

涙を流した。



この髪の毛が切られる。

いいのだ。望んだことだ。

彼が私に初めて会った帰り道

「失礼かもしれませんし、気持ち悪いと思うかもしれませんが、

良かったら僕の人形にあなたの髪の毛を使わせてもらえませんか」

このとき、彼への気持ちは決定した。

だから、これは喜ぶことである。

そして何時完成するのかわからない。

だからあと数ヶ月。

私は今までよりも入念にケアしなければならない。


すぐにでも美容室に行き、トリートメントをして来ようか。

やはり毛先の枝毛は自分カットしようか。






切られたあとの私の髪の毛はどれだけ残るのだろう。

腰まで伸びた髪の毛。

機会があればボブにしたいと口では言っていたものの、

いつまでも切れずにいた髪の毛。





大切にしてください。

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2009-06-15 このエントリーのブックマークコメント

道玄坂ラブホテル、2階の部屋の窓を開けると通りには群がっている若者たち。

彼らはどこへ行くわけでもなく、地面に座り込む者、佇む者、身体を揺さぶる者、

誰もがそこから何かしらの緩みを漂わせ、0時を過ぎた渋谷を構築していた。



こういった場所に滅多に来るわけではない。

感じた総てが印象づき、記憶に残るほど若くはない。

私はバッグから手帳を取り出した。


もちろんそのような場所に私は恋人と訪れているのだし、

そのような場所だからこそ、彼は私とセックスをすることを望んでおり、

私も同様であったが、私は彼と抱き合うよりもまず、

手帳を取り出し、窓から身を乗り出して、目に映るものを書き留めることだけしか頭になかった。

恋人スキニーを穿いた私の足をさすり、私の尻から背中へと手を伸ばし、

私の情感が高まらせようとしていた。

……ような気がする。

私は窓の外の出来事に余りにも夢中になっていたため、

それ以外に注意を払う余裕がなかったのだ。




窓のすぐ正面の地面に座り込んだ4人の少女たち。

誰もが肌を露出し、若いだけで弛みきった腕や背中を恥ずことなく曝している。

それがいったい何を目的とするものなのか、私には検討もつかなかった。

その若いだけで弛みきった腕は、きっと私ならば隠してしまうものだった。

もしかしたら。

その潔さと無恥さが若さというのかもしれない。

彼女たちは地面に座ったまま、他愛もないことを喋っていた。

そこには意味など何もなかった。

誰もが噛みあわない上に意味のない台詞を発し、そこに座っていた。


しばらくすると少年青年?いくつになるのか、もう私にはわからない、

ただ若いことだけはわかる男の子たちが幾人か歩いてきた。

彼らは彼らの集団で流行しているのであろう服装で身を飾っていたが、

やはり私にはそれがただ汚らしいだけのものにしか見えなかった。

こうして自分感覚が年老いていくのだろう。


彼らはすぐ2階の窓から身を乗り出している私に声をかけてきた。


「そこ、ラブホ?」

「一人でいるの?」


一瞬、戸惑いはしたが、すぐに笑顔を作り、手を振って言い放った。

「ええ、ホテルよ。でも一人じゃないわ。三人」


彼らは歓声を上げた。


「まじっすか?!」

「ていうか、お姉さん、すげえ美人っすよね?!」

「3P効果のフェロモン?!」

「気持ちよかった?」


私はクスクスと笑いながら、自分の目つきが彼らを見下しながらも誘うようなものに変化していることを自覚した。

この下衆な男たちは確かにこんなところから身を乗り出している女がいたから、

ノリと弾みで声をかけてきたに過ぎないが、今はもう、私個人に興味が移動している。

それは何故か?

身を乗り出した私はTシャツを着ていたけれど、それは身体のシルエットを露にするデザインであり、

私の大きな胸や引き締まった腰の括れを明確にしていた。

地面に座り込んだ少女たちと異なり、明らかに私は引き締まった肉体に、

まるでゴヤの描いたマハのように彼らには手の届かない位置にいる女でありながら、

淫らな目つきを同情のように送ってあげていたからだ。


お姉さん、Sっぽい」

「ていうか、プレイ激しそう」

「俺も混ぜて!」


一人が飛び上がり、その手は窓のふちに届いた。

私は驚いたが、それを顔に臆面も出さず、ゆっくりと彼の額を撫で、

「どきなさい」

とあえて優しい声音で言い放った。


「やめとけよ」

「ずりいよ!」

彼らは口々に喚き、彼の脚を引き摺り下ろした。

そして

「今度は俺も混ぜてね!」

「じゃあ楽しんでね!」

などと言って去っていった。


彼らの後ろにはやはり下着なのか判別のつかないような服を着た、

私よりは10歳は若いのであろう少女がおり、

彼らの一人が思い出したかのように彼女の垂れた尻を撫でた。

彼女は私を振り返り、嫉妬のこもった目つきで睨んでいた。

彼女の身体もやはり弛みきっていた。


「すげえフェロモンだったよな」

「まじであっちとやりてえ」

「胸、超でかくなかった?」

美人だったけど、なんか怖えよ」

彼らの声が遠くまで響いていた。



全てが去った後、ホテル管理人や、飲み屋の経営者らしき初老の男たちだけが

その通りを歩き、残されたものは何もなかった。

音さえも消えたかのようになり、私は深いため息をついた。

全ては去った。

しかし全てを私はかきとめた。

この目にしたもの、この耳にしたもの。



出来事を反芻し、文章を考え、練りたかったけれども、

私は自分の内だけの思考を止め、窓を閉めた。



そして振り返り、「ごめんなさい」と声をかけた。

「こういうところ、早々来ないから、全てを観察しておきたかったの」

「何を書いていたの?」

「全てよ」


「シャワー、浴びて来る」

腰掛けていたベッドから立ち上がると、彼は私に抱きつき、押し倒してきた。

「浴びなくていいよ」

服の上から胸を掴み、

私の腰を抱きながら口の中に舌を入れてきた。

「引き締まっていて、細い」


「僕のほうが弛んでる」

「でも私、もう30歳のおばさんよ。確かに鍛えてはいるけれど、いつかは垂れるわ」

「それでも、やっぱり僕には可愛い女の子にしか見えないんです」



彼はそのまま、私のTシャツをめくり上げ、ブラジャーをずらし、乳房をまさぐった。



今日はあなたの方から頼んでくるまで入れたくない」

そういうと彼は私の股間に顔を埋め、舌を動かし、唇で吸い始めた。

この行為は確かに気持ちよい。

彼とのセックスも大好きではある。

しかし途中でやめるというのならば、別にそれはそれで仕方ないと納得する。

けれどもどうやらそういうことではないようだった。

「いつも僕ばかりな気がするんです」

「僕ばかりあなたのことを求めている気がしてしまうんです」

「私はあなたのことが大好きだし、本当に今までの誰よりも好きよ。

お世辞や一時の感情ではなく、本当にこの30年間であなたは最高なのに」

同じことを彼が言ったとしてもそれは21年という時間であり、まだ社会に出ていない大学生台詞だ。

恋愛における経験はしなくてもいいくらいしてきたと感じる私が

今、本気で言っているのに。何がいったい不安なのだろうか。


不思議そうな顔をしている私を彼は抱きしめてきた。

可愛い

また口から出そうになった台詞;「私はもう30歳の…」



ああ、そうか。

最近の私はどこか変わったらしく、以前にも増して男から声をかけられたりすることが多くなった。

彼と一緒にいるときでさえ、私に向かって手を振ってくる男や

「超可愛い」と言ってくる男たちがいて、

駅で彼と分かれた後、ナンパしてきた男に追いかけられたりしている。


それだけではない。

私は明け透けな性格のため、自分過去の男たちの話をしていた。

それがまだ若く学生の身分である彼に非力さを感じさせていたのだ。

「あなたが過去過去だと割り切っているのはわかるけれど、

いちいち嫉妬してしまう自分が嫌なんです。この弱さが嫌なんです。

僕はあなたより知識もない。

その上、あなたの過去の男たちには地位も知識もある男ばかりで、

いつかあなたに飽きられて捨てられてしまう気がするんです」




「お願い、入れて」


私は彼の背中に立てるために伸ばしている爪で、彼の背中を引掻いた。


あなたが私より知識がないのは当たり前じゃないの。

9歳上なのにあなたより無知だったら、余程私が馬鹿じゃないの。

あなたなんて9歳下なのに、今までの誰よりもセックスが上手で、

確かに多少は私との間に知識量の差異こそあれ、感性カバーが出来て、

その上、あなたは私の夢をかなえてくれるのよ。

あなたしか私の夢をかなえてくれる人はいないのよ。




射精した後の彼のペニスについた精液を舐めとり、

そこに私の長い長い髪の毛を巻きつけ、引き絞った。

「痛い?」


「そんなことをしたら、髪の毛が汚れて…」





「この髪の毛はもう私のものじゃないわ。

あなたが切って、あなたの人形になるのよ。

あなたが私のことを思いながら作った人形の髪の毛になるのよ」

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2009-06-02

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「あなたは彼を愛していたから、その骨を食べたのですか?」


この質問は鋭い。

愛していなかったから別れを告げ、その結果として彼の死がある。

それなのにそこで私が彼への愛を持ち出すのは矛盾が生じる。




「彼は愛した私と共に滅ぶことが夢でした。

それが適わないとなったとき、彼は私の身代わりの物たちだけでも連れて、

一人で死んでいくことにしたのです。

彼は私と共にあることを望んでいました。

だからその骨を食べ、彼を私の中に取り込んであげたのです。

そうなると彼は今後、私が別の男に抱かれるところをも見ることになるでしょう。

それでも私の中に取り込むことで、私が死んだとき、彼は私を自分のものに出来るような気がするのです」




「でも、本当は単なる好奇心です。人間の骨がどんな味がするのか」


22:41 2009-06-02 - アンモナイトの対数螺旋 のブックマークコメント

私は思うのです。

人間でも動物でも新たな生命を生みだすとき、

そこにはエロティシズムが存在する。

同じようにそれが生命のないものだとしても、

誕生するからにはエロティシズムが生じた結果だと思うのです。




「その髪の毛、切るときがきたら、僕にくれませんか?」

これを何に使うのですか?

人形の髪の毛に使うのです」

それは何時になりますか?もしかしたら私は切らないかもしれない。

「僕の人形の腕がもっと上手くなったらでいいです」

この髪の毛、染めてはいないけれども少し傷んでいるけれど。

「いいんです」

じゃあ、私はこの髪の毛を今よりも大切に扱わなくてはならないわね。


私はいつかあなたの作る人形の一部となるのだ。

あなたのエロティシズムの産物と一体化する。

そこには性交よりも甘美なエロス存在するように感じられるのだ。


もしも必要になったときは、あなたの手で切り落として。

ふぇじょーーーあwwwwふぇじょーーーあwwww 2009/06/14 12:43
これヤった後でパチ屋に行ったら勝率上がりすぎwwwwww

http://shiofuki.navi-y.net/8SYvV5v/

ただの軍資金稼ぎのつもりでヤってたんだけど、
パチも負けねーもんだから金が余りまくりっす・・(^^;
まー金は余っても困らないからまだ続けるけどねーヽ( ・∀・)ノ
とりあえずBMWでも買うわwwwwwww

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2009-06-01 このエントリーのブックマークコメント

automate_tomo2009-06-01

私のことを単なる飾りだと思っているなら、

きっと彼は彼のオツムの中身が足りないのだろう。

そして彼は私の発言を理解できていないのだろう。

理解できないことを流してしまうのは、進歩に繋がらない。

そういう者を「馬鹿」と呼ぶ。


私にただ可愛らしく、愛らしくあることを望んだ男。

そのミーハーな振る舞いが逆に新鮮で、たまにはこういうものも面白いかもしれないと思ったが、

それは3日で飽きてしまった。


「あなたのことが本当に好きなのかわからないわ」

私は言った。

「そういうふうに言われてしまうと関係を続けていくのは難しいね」

そう彼は言った。

「お互いの理解を深めようとも試みない人間とは、確かに関係を続けるだけ無駄でしょうね」

きっと彼は無駄プライドが高い男なのだろう。

「別れよう」

自分からそう言い出したことで勝ち誇ったようである。

「だいたい、君の人目を気にしない奇抜な行動は、ちょっと気にかかってたんだ」

私は笑った。

「そこが私の魅力なのよ。オタク風に言ってあげる。」


『単なる人間には興味ありません!!』





さて、どうしようか。

人形を作っている男性のことである。

彼との対話が非常に快楽なのである。

知識を動員し、考察し、それを交える。

しばらく味わっていなかったこの悦楽。

セックスよりも気持ちがいい。


それでも私は彼を欲しくなる。

もし相互に相互を手にしてしまえば、

アベラールとエロイーズの如くになってしまうのではなかろうか。


彼が私へと認めた書簡を読む快楽

私が彼へと文章を書くか快楽

ああ、これは…テクスト快楽


あなたがまるで「こころ」のKのように振舞うほどに

私はエロイーズと化してしまう。

それは私がインキュバスだから。

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2009-05-29 このエントリーのブックマークコメント

automate_tomo2009-05-29

2009年の5月27日の深夜、私は品川駅からほど近いホテル

交際を始めたばかりの恋人と初めての交接を試みていた。

幾つかの弦楽器を弾く彼の指先は柔らかく、

私は日付も時間も忘れていた。


精を出し、私の身体にもたれて果てた彼の肩を少しどけ、

時計に目をやったとき、その時刻は私にフラッシュバックを引き起こした。



私に一目惚れしたという彼は、私の人格を完璧に二の次にしているという時点で素敵だ。

私のネガティブさを非常に嫌っているということは、

なぜ、私を愛していると言えるのかという疑問に繋がる。


「俺はもう、君のものだから、いくらでも痕をつけて」

華奢な身体を差し出した彼に再びフラッシュバック。

幾つも幾つも身体に赤い内出血を作り上げると、彼は安心したように眠り、

私は小さな声で歌を歌った。


一億と二千年経っても愛してる





あのころ、私は言ったんだ。

「その曲、何かのアニメ?」

彼はすぐに音楽を止め、その曲を聴かせてくれなかった。

だから私はほんの1フレーズしか耳にしなかったし、

彼は死ぬ前にパソコンの中身を綺麗に消去していたけれど、

後日、彼が死ぬ前に繰り返し聴いていた曲が何だかわかることになった。


『創世のアクエリオン』

パチンコのCMで流れていたこの曲を聴いたとき、すぐにわかった。

彼は菅野よう子が好きだった。

この曲を死ぬ前まで聴いていたはずだ。

そして次の世のことを願い、その次の世とは私との世であり、

まだ暗い道を一人歩いていった。






仕事があるからと品川駅で彼と別れたときに、彼は私に訊いた。

「何線を使うの?満員電車、大丈夫?」

「えっと、東海道線で東京!大丈夫!(本当ならば横須賀線で千葉方面)」

なぜ、私はうそをついたのだろう。

わからない。

品川駅の電光掲示板には「小田原行」とたくさん表示されていた。



彼が生きていた頃、小田原まで向かう道のりは遠く感じたというのに、

品川から小田原は驚くほど近く、私はおそるおそる小田原駅の改札を出た。


そこはもう、知らない場所だった。


改札口の前にベンチがあって、帰りの電車がやってくる時間まで

そこに座って抱き合ったりキスしたりしていたのに、

そのベンチはもう見当たらない。

駅ビルは私の見知らぬものに変わっている。


それでも駅を出てロータリーに出ると、記憶の奥底にある街だった。

けれども一人で歩く不慣れな街はわかり辛く、

あの背の高い金色の髪の青年がもうどこにもいないことを私に理解させるのに十分だった。



彼がよく行っていたところ、パチスロ…。

あと、そのパチスロの前にあるつけ麺屋さん…。


私は墓参りにふさわしくない、彼に見せるための可愛らしいだけの

機能を考慮していない服装だったため、余計に時間をかけ、

彼がよく行っていたはずのパチスロにたどり着いた。

慣れない轟音とタバコの臭いと柄の悪そうな人間と、

とにかく自分とは異質な嫌な空間に吐き気を憶えながら、

店員に話しかけることにした。


「あの…、少なくとも3年くらい働いている人はいませんか?

このお店に2年前まで背の高い金髪の男性が毎日のように来ていたはずなんです」


そのような店員は二人ほどいた。

明らかに店から浮いていた私をいたわり、彼らは事務所に私を連れて行ってくれ、

「そういうお客様は確かに以前よくいらしてましたけれども、

最近では見かけなくなりましたが、何かあったのですか?」



私はそこで初めて涙が溢れた。

膝を折って嗚咽を上げた。

彼は2年前に亡くなったんです。私、ようやくここまで来れたんです。

お葬式のとき、ここのお店で親しくしていた方々がいらしてたから、

何を話すわけでもないけれど、ただその方々にお会いしたかったんです。



「ああ、同じ年齢くらいの人と一緒にいましたけどねえ、

彼らのような人たちは朝早く着て、あとは夜までいなくなってしまうから、

夜になれば来ると思いますよ。そうですか、亡くなったんですか」

まだ朝の10時半なのに、なのに。


次はラーメン屋さん…。

ここはちょうどお店の人が出勤してきたときだった。

「あ、あの…」

「ああ、××の彼女だ!そうか、5月だからなあ…」


彼を覚えていてくれた人がいた。

私のことまで覚えていてくださって、私はここで彼の食べていたつけ麺をご馳走になった。

本当によくしていただいた。

わざわざ小田原の町に寄ったというのに、彼のことを覚えている人が誰もいなかったら、

私はその後、沼津まで行くことが出来なかったかもしれない。



沼津に花屋があるかわからなかったため、

小田原の花屋で店員の方と相談してお花を購入した。

仏花は寂しいから嫌だ。派手好きだったから、寂しくないものじゃなきゃ嫌だ。

「若い男性なんです」

そう言って、一緒に選んでいただいた。

青紫の小さめなトルコキキョウと薄い黄緑の大輪のトルコキキョウ、

そしてお店の方は値段がしてしまうと言っていたが、ピンク色のカサブランカを入れてもらった。

そしてお墓に鉢植えを置いても良いか訊き、青いアジサイの鉢を購入した。

思ったよりもお金がかかってしまったが、これで全てそろった気がした。



小田原から先はSuicaが使えないという。

熱海行きに乗り、そこから再び沼津行きに乗り換える。

一駅一駅が離れており、トンネルを幾つも抜け、海が輝き、

山肌に張り付くように宿が建っている。

真鶴、湯河原、熱海…。

なんでもない旅行だったら簡単に来れるのにな…。

小田原だって思えばそれほど遠くないのに、どうして今まで行けなかったのだろう。

熱海で乗り換え、沼津行きの3両編成の電車の中で、

抱えた花束の百合の香りを嗅ぎながら歌が口から漏れた。


一億と二千年後も愛してる 君を知ったその日から♪


愛したもの全て…今はどこを彷徨い行くの?


愛したもの全て?それは私?

世界が終わる前に 命が終わる前に?



沼津駅には実は彼と一緒に行ったことがある。

彼のふるさとだ。

けれども私はそのとき、とても酷いことをしたのだ。

それはまた後日の話だが。


実は私は納骨まで立ち会ったのだが、寺の名前など教えてもらっていない。

家族らしいことを何一つしてあげなかったくせに、

やはり彼の死の直接の原因になった女は疎ましいのかもしれない。

ただ、告別式のとき、会場の人がかなり私に同情してくれており、

「日蓮宗で沼津でも割りと大きなお寺だからね」と言っていたのを覚えていた。

それだけを頼りに、タクシーの運転手に寺を回ってもらった。


一番目は外れだった。

それもそのはずで法華宗だった。

素人からすれば法華宗もまた、日蓮宗と同じか。

その寺の人は私の様子があまりにも必死なのを見て、

「沼津で大きめの日蓮宗の寺」を二件教えてくれた。

タクシーに戻り、その寺の名を告げると運転手は言った。

「下河原だけど、わかるかな?」

「下河原!そこで告別式があったんです!とりあえずそこにお願いします!!」



二件目にしてようやく私はたどり着くことが出来た。

僧侶に「最近、Mさんという方が…享年が数えで25歳なんですが…、

その方のお墓で…」

私はここで貧血を起こし、倒れてしまった。

気がつくとタクシーの運転手と僧に抱えられていた。

最近、家族の方がいらっしゃいました」

良かった、良かった、本当に良かった。

もしかしたら彼の家族は彼の命日にすらお墓に来ていないかもしれないと心配していたのだ。

それならば私がもっと早くに来れば良かったのだけれども。

良かった。確かに彼のお母様は非常に後悔していた。

彼が亡くなったのは、そういう思想を抱くようになったのは自分に原因があると泣いていた。

まだ子供だった彼を他人に養子にやっておいて、他の男と再婚した母親だけれども、

やはり彼女は彼の母親だったのだ。亡くなった後では遅いが、

それでもやはり彼のお墓にお花の一本も供えられていなかったら悲しすぎる。


土日の休みのどちらかに訪れたのだろう。

枯れている花といかにも仏花といった風情の菊の花を取り除き、

私の買ってきた花を足して、綺麗に生け直すと、

生前、愛されていた人物のような墓であるかのようだった。

邪魔にならないようにアジサイの鉢も置くと、

私の中の彼の骨が疼いた。



お墓の中には彼の骨と一緒に私の髪の毛が入っているんだよね。

私の髪の毛は毛先以外は切られず、いまだに長く長く伸ばされているよ。

ごめんなさい、はさみを持っていないから、これは君にあげられない。

ごめんなさい、ごめんなさい。

どこのお寺かわかったから、また来ることが出来るようになったよ。

誰よりも私に会いたかっただろうに、ごめんなさい。

遅くなったけれど、会いに来たから。

今日の私は可愛かったのよ。

でも、随分と泣いてしまって、マスカラもつけまつげも何処かに行ってしまって、

それでも今日は暑いけれど、こうしてBABYのワンピースでロリータで来たのよ。


やっと、会えたね。



あなたが亡くなったあと、毎日20錠はお薬を飲むはめになったのに、

今はもう、生活のリズムを乱さぬように飲む睡眠導入剤だけ。

あの大量の薬の山は消えた。




私を知った日から君の地獄には音楽が絶えない?

まるでヒエロニムス・ボッスの「快楽の園」のように。

あの「音楽地獄」という別名を持つバロック絵画の地獄の中で

あなたはどのクリーチャーに八つ裂きにされているの?


私が死んだそのとき、君はその地獄から解放されるのでしょうね。

D

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2009-05-28

私を誰だと思ってるの?


私、ウッドベースを弾く指とそれを抱える腕が好きよ。

DCPRGのライブなんか、私、あのウッドベースを見ているだけで濡れてたもの。





弾くならスコット・ラファロのように。


あなたがベースを弾くのなら、シドのように私を適当に壊して

それを格好良いことだと吹聴するようなことはしないでね。

指で弾かれた乳房は緩やかな起動を描いて振動した。

柔らかくかき回された膣は何回も何回もそれを求めた。

細い身体が私の背後から手を回すと

私は、嗚呼、今、見られている。

濡れた股間を弾いては鳴り響く音、

ステージの奥でひっそりと奏でられるウッド・ベース。

それにしてはずいぶんと高い声で私は調子を取っていた。



わかったら右手がお留守なのをなんとかして。


01:05 2009-05-28 - アンモナイトの対数螺旋 のブックマークコメント

僕を思い出して自分でするといいよ、なんて

私は楽器が弾けないというのに。


華奢な身体には弦が張られていて、まるでバイオリン。

そのアバラの浮いた球体関節人形の絵葉書をプレゼントしたら喜んでくれた。


本当にバイオリンを弾いていたのを見たから。


楽器を弾くように簡単に鳴らせるでしょう、私は。

そんなふうにされたら、もう。


17:29 2009-05-28 - アンモナイトの対数螺旋 のブックマークコメント

幾度も幾度も射精させたとしても、

それを口で受けたとしても、

尽きることのない愛欲をあなたはきっと否定するわ。


勘違いしないで。

私はただ抱かれたいわけじゃない。

性欲などないわ。

私が欲しいのは愛。

その華奢な身体にいくつでも痕をつけて良いというのなら、

それはまるで「カーマ・スートラ」。

インドの性典。

歓喜天のように収まりつかない憤怒のような

私の情熱を後悔するまで受け止め続けなければならない。


ただ愛して。

ただの愛はいらないわ。

尋常ならざる愛で壊して。

私の首を締め付けて。

嫌いだけれどあの人のように首に南京錠をかけても良いというのなら、

私の首をきつくきつく締め付けて。

コルセットで腰を締め上げられる快感のお話はもうしたでしょう?

同じことなの、私の中では。

ただ私の命がいつまで持つか。




命の火に油を注いで、それこそがコイトゥス。

最後には消えて無くなる。

どちらかが死んでしまうまで。

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