--- 大学合格直後に、創刊されたばかりの雑誌『月刊OUT』の第二号に参加されますが、その経緯はどのようなものだったのでしょうか。
「『OUT』は当初、サブカルやアメリカのカウンターカルチャーを強く意識した雑誌でした。雑誌名もアウトサイダーのアウトからですし。創刊号にはSFパルプ雑誌も紹介されていましたが、二号ではより現代的なSFとして『宇宙戦艦ヤマト』を特集しようということになり、私のやっていたヤマトのファンクラブに話がきたんです。
当時はヤマトについて知ってる人というのがそれほどいないし、その中で文章を書いたことがある人というのは限られちゃう。使える人は誰でも使うという状態で、振り返ってみると現地徴用兵という感じです(笑)。
僕らは僕らで『ヤマト』を世の中に残したい、広く認知させたいという想いがあったから、話があれば何でもやる。それはファンとして当然でした」
--- 同じ年に『ヤマト』の劇場版も公開されますが、『OUT』の特集はそれを踏まえてのことですか?
「いえ、これは偶然同じタイミングだったはずです。ヤマトのプロデューサーの西崎義展さんにヤマト特集号を作るという話を編集部が持ちこんだら、劇場版を準備中なんだよと。そういう経緯のはずです。ヤマト特集号はすごく売れて劇場版も当初規模より拡大し、大ヒットしました。僕が大学に入学したばかりの77年は、そんなお祭り騒ぎでした。
それまで、テレビアニメは “テレビまんが” と呼ばれていましたが、ヤマトほど作り込んであったらもう別ものでしょ、ということで積極的に使っていた “アニメ” という言葉が定着していき、アニメブームと呼ばれるものがやってくるわけです」
--- 大学時代には今につながるようなアニメ・特撮関係のお仕事を数多くされたということですが、具体的にはどういった内容だったのでしょうか。
「雑誌の仕事全般ですよね。文章のライティングだけでなく、自分で放送用のフィルムからカメラで複写撮影したり、誌面全体を構成したりと、なんでもやりました。カメラマンとアニメのスタジオに出向き、雑誌掲載用のセル画をカット袋から選んで組む仕事もしました。それは “撮出し” というアニメ演出の仕事とイコールですが、それを通じて一番いい画を選ぶ方法も学べました」
--- レコードなども手掛けられていますよね
「レコードは、ライナーの構成・執筆はもちろん、アルバムの収録内容の構成もしています。ひとつの作品に使われる曲は、テレビシリーズなら50~70曲あるので、一枚のレコードに入りきらない。そこで取捨選択して順番を決め、曲タイトルをつけ、頭から順番に聞くことで端的に作品の世界を味わえる構成を考えるわけです。
作品本編の音声を収録した"ドラマ編"と呼ばれるレコードにも携わりました。ここからここまでの音声を使い、ここはカットで、とミキサーさんに指示を出すわけですが、これって作品を演出していることにすごく近いんです。アニメ本編の演出をしたことはありませんが、レコードや誌面構成を通じて、演出というものが何なのかは学んでいたんです」
--- 大学を卒業されてからは?
「83年に電機系メーカーに就職してからは会社の仕事に一生懸命だったので、アニメ特撮関連の仕事は少なくなります。とはいっても、友だち付き合いは続いていたし、87年に出張でアメリカに半年行っていた間も日本からビデオや雑誌を送ってもらったりしたので途絶えることはありませんでした。
ただ90年代に入ると、出版の様相も徐々に変化しますよね。80年代までは、アニメなら作品画像やイラスト、特撮ならスチールが載っている資料的なものがほとんどでした。90年代には『磯野家の謎』に始まる謎本ブームなど、アニメ画像を使わない無版権ものも出てくる。あるいは学者さんたちが科学的に世界観を再構築する『ウルトラマン研究序説』のような、角度の異なる本も出てくる。そんな中で、僕は大きなズレを感じたんですね……」
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