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社保庁 市に代わり、着服の元職員告発 宮城・大崎

2007年10月12日14時33分

 市町村職員による年金保険料の着服問題で、社会保険庁は12日、着服した元職員の刑事告発を見送った宮城県大崎市に代わり、宮城社会保険事務局長名で元職員を業務上横領の疑いで県警古川署に告発した。舛添厚生労働相の意向を受けたもので、この問題で社保庁が告発したのは初めて。だが大崎市や告発を見送った他の自治体は、こうした厚労相の姿勢に反発を強めている。

 同事務局の説明によると、30代の元男性職員は旧田尻町(現大崎市)町民生活課に勤めていた00年11月から01年3月にかけ、加入者10人が窓口に持参した国民年金保険料28万100円を社会保険事務所に納めず着服した疑い。元職員は問題発覚後の01年8月に懲戒免職となった。着服した保険料は全額弁済している。

 市町村職員による着服問題では、社保庁が2日、業務上横領罪の公訴時効が成立していない00年以降の分について、自治体側に厳正な対処を要請。大崎市は4日付の回答で、元職員が全額弁済しており、すでに社会的制裁を受け現在は更生しているなどとして、改めて告発しないことを表明していた。

 告発状の提出後、記者会見した辺見聡局長は「年金記録の問題を踏まえ、国民の信頼回復のために告発すべきものは告発し司法に委ねる」と述べた。元職員の氏名や年齢については「人権に配慮する」として明らかにしなかった。

 舛添厚労相は12日夕、記者団に対し「原則をきちんと守ったということですから。ほかの市町村についても(自治体の)告発がなければ、こちらでやるということです」と話し、順次告発を続ける構えを示した。

 一方、大崎市の伊藤康志市長は同日午後、「正直残念という思いだ」と苦々しい表情を見せた。

 伊藤市長によると、前日舛添厚労相を訪ね、理解を求めたが平行線に終わったという。「(懲戒免職は)小さな町としては大変勇気あるもの。地方がきちんと手続きを踏んでいるにもかかわらず、大臣による強権発動が行われたことに失望した」などと述べた。

 村井嘉浩宮城県知事も「国が納得いかないからものを申すというのは、地方分権の姿勢からいかがかなという思いがある」と批判した。

 大崎市同様、刑事告発しない方針を決めていた大阪府池田市の倉田薫市長は「大臣の一連の発言はセンセーショナリズムをあおっている」「社保庁の職員は刑事告発でしゃかりきになっているが、大事なのは消えた年金問題を解決すること。木を見て森を見ないことになっている」と話した。

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