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移植法案可決 議論は十分尽くされたか

 皮膚には張りがある。ほおにはうっすら赤みさえ浮かぶ。心臓は規則正しく血液を体に送り続けている。そっと体に触れてみる。温かい―。脳死とは、そんな「死」だ。

 衆院本会議は、議員立法4案が提出された臓器移植法改正案のうち「脳死は人の死」と位置付けたA案を賛成多数で可決した。年齢を問わず本人の意思が不明でも家族の同意で臓器提供できる、とする案である。

 臓器提供の場合に限り脳死は人の死とする現行の臓器移植法が施行された1997年以降、国内の脳死移植は81件にすぎない。日本移植学会の推計では、法施行後の12年間で約10万人の患者が移植を待ちながら亡くなったという。このため、国外に臓器を求めて渡航する子どもも大人も後を絶たない。

 移植を待つ患者、家族にとっては朗報だろう。内閣府が昨年秋に行った世論調査では、臓器提供の意思表示をするドナーカードを所持している人が8%余りにとどまる一方、国民の4割以上が脳死での臓器提供を希望している。A案の提出者は、こうした潜在的な「意思」を掘り起こすことで移植件数が増えるとしていた。

 だが、可決によって問題がすべてクリアされたわけではない。まず、議論は十分に尽くされたのかどうかだ。現行法が12年間も見直されなかった点は国会の不作為ともいえるが、今回の改正への動きはあまりに急だったと言わざるを得ない。

 世界保健機関(WHO)の指針改定によって日本人が海外で移植を受けることが難しくなったことで、事態が急速に動いた。国会の会期をにらみながら、衆院厚生労働委員会での審議は計2回、9時間のみ。それも議論がかみ合わないままで終了した。委員会採決を省く異例の対応だった。

 百パーセントの国民的合意はあり得ないにしても、脳死を一律に人の死とすることへのためらいはまだ社会に根強く、脳死移植についての理解が十分行き渡っているとは言い難い。さらに死の定義や自己決定の問題を法改正という手法で変えていいかの是非、子どもの脳死診断の困難さ、移植施設の受け入れ態勢、被虐待児の紛れ込みをどう防ぐかなど、議論の中で指摘された問題点も残ったままだ。

 臓器移植は「いのち」を受け渡す無償の行為であり、それを支えるのは透明でフェアな医療だ。参院審議では、その原点にもう一度立ち、十分に議論を交わすことが求められる。


農業再生 生かせ「平成の農地改革」

 コメの生産調整(減反)見直しなど農政改革が混迷する中、「平成の農地改革」といわれる法律が国会で成立した。農地の貸借を大幅に自由化する改正農地法である。

 企業を中心に農業への新規参入を促し、耕作放棄地の増大などに歯止めをかけるのを狙いにしている。農業再生に向け、成果を期待したい。

 法改正の最大のポイントは、基本理念を大転換したことだ。1952年の制定以降、戦前の地主制度が復活しないよう明記されていた「耕作者による農地の所有が最も適当」との文言を初めて削除した。

 「耕作者主義」と呼ばれる理念で、当時としては意義あるものだった。だが、兼業化などが進み営農が負担となる農家が目立つようになっても、耕作者主義の下で農地の貸借は厳しく制限された。その結果、耕作放棄地や休耕地が増える大きな要因になっている。

 改正法は法の目的を所有者保護から農地の有効活用に転換した。企業が借りられる農地を市町村が指定した耕作放棄地などに限る規制を撤廃し、優良農地も利用できるようにする。

 借地期間の制限は20年から50年に延長した。農地を借りやすくした上、長期的な耕作を可能にするという図式だ。弱体化が進む農業の現状を変えるには、やむを得ない対応だろう。

 同時に農地を違反転用した企業への罰金を、最高300万円から同1億円に引き上げた。乱開発などを防ぐ措置といえる。

 改正法を有効に機能させるには、農地を持て余した農家が貸し出そうという「動機づけ」が何より重要だ。政府は貸し手に補助金を支給する制度を新設した。農地の流動化が加速するかどうか、効果をしっかり検証する必要がある。

(2009年6月19日掲載)
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