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<2007年9月11日朝刊総合1面>

出張法廷/戦隊長下の軍命訴え/金城さん体験証言
軍曹が手榴弾配布/兵事主任から聞く

 高沖縄戦時に慶良間諸島で相次いだ住民の「集団自決(強制集団死)」をめぐり、住民に命令を出したという著作への記述で名誉を傷つけられているとして、旧日本軍の戦隊長とその遺族が作家の大江健三郎氏と岩波書店に、出版の差し止めや慰謝料などを求めて大阪地裁で争われている訴訟の所在尋問(出張法廷)が十日、福岡高裁那覇支部の法廷であった。渡嘉敷島で「集団自決」を経験した金城重明氏(78)が被告岩波側の証人として出廷。兵器軍曹から住民に手榴弾が配られ、「一個は敵に投げ、もう一個で死になさい」と訓示があったと、後になって当時の兵事主任からじかに聞いたと証言。自身の経験とも併せ、戦隊長指揮下の軍命令なしに「集団自決」は起こり得なかったと訴えた。

 一方で原告・戦隊長側は、島にいた金城氏自身が手榴弾が配られた現場に呼ばれていないなどとして、兵事主任の話の信用性に疑問を提起。金城氏が指摘する軍命令について、何を軍命ととらえ、具体的にどう伝えられたか証言するよう求めたという。

 法廷は非公開で、原告と被告双方の代理人が終了後に記者会見した。

 被告代理人によると、金城氏は、当時の兵事主任だった富山真順氏から「米軍が上陸する約一週間前に、兵器軍曹が役場に青年団や職員を集めて手榴弾を一人二個ずつ渡した。『一個は敵に投げ、もう一個で死になさい』と訓示していた」という話を聞いた、と証言した。

 また米軍の上陸時に、軍が住民を危険な陣地のそばに集まるように命じたことは、逃げ場のない島で住民を死に追い込んだことになると指摘。集まった住民の間で軍による「集団自決」命令が出たとささやかれる中、軍の伝令が村長に伝えられたとする元職員の証言などを軍命令の存在の根拠に挙げた。

 渡嘉敷島では、村長の発声で「天皇陛下万歳」が三唱され、手榴弾による「集団自決」が始まった。

 金城氏は「村長が独断で住民に『集団自決』命令を出すことはあり得ず、軍の命令なしに、『集団自決』は起こり得ない」と強調。「住民は軍の命令によって死んだのであり、その責任者は戦隊長」と訴えた。

 同訴訟は十一月九日に原告と被告の本人尋問があり、座間味島の戦隊長だった梅澤裕氏や大江健三郎氏らが証言。十二月二十一日の最終弁論で結審し、来年三月までに判決が出る見通し


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