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【長野】

リニア3ルート試算提示、知事は静観姿勢 県内関係者は賛否両論

2009年6月19日

会見する村井仁知事=県庁で

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 JR東海がリニア中央新幹線計画で想定する3ルートの工事費や所要時間の試算を提示した18日、村井仁知事は「試算にすぎない」と静観する姿勢を示した。県が主張するBルート沿線の関係者からは積算根拠を疑問視する声などが上がる一方、飯伊地区では「Cルートの優位を示した」と歓迎の声も。今後、ルートをめぐる協議や、各地区での調整に影響を与えるとみられる。 

 「JRからよく説明を聞いて情報を共有するようにしようと言っているだけ。それ以上でも以下でもない」

 村井知事は18日の会見で、B、Cルートの工事費の6400億円という差額にも淡々とした口調を変えなかった。

 中間駅設置に加えて、Cルートによる早期開業を求める声が高まっている飯田市。今回の提示を、宮島八束飯田商工会議所会頭は「Cルートが『早くて安くできる』ことが、全国に発信できるのが喜ばしい。単純な比較であっても、誰もがその方が良いと思うのでは」と歓迎。牧野光朗市長は「県としっかりと連携を取って、リニアの実現と飯田駅の早期着工を求めていく」と従来通りの姿勢を強調した。

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 Bルート沿線の関係者からは、一斉に反発の声が上がった。有賀昭彦諏訪商工会議所会頭は「工事費の積算根拠が分からない。Bルートもそんなにかかるのかという印象だ」と疑問視。「時間差もわずか7分ではないか」と、直線路線の優位性に首をかしげる。山田勝文諏訪市長は差額について「ずいぶん小さい。ほとんど変わらないじゃないか」と受け止めた。

 小坂樫男伊那市長は「『距離が短く、早く行けるCルートが一番安い』と出してくると思っていた」と冷静。地元負担の可能性もある工事費の差額は「JRが負担するのが当然」とした。菅谷昭松本市長も「金額も考慮しないといけないのは確かだが、『お金がかかるからダメ』と言うわけにはいかない」と述べ、Cルートへの世論誘導を狙うJRの思惑があるとの認識を示した。

 県によると、県内の期成同盟会を対象にした試算内容についてのJRの説明会が29日、松本市で開かれる予定。B、Cルート沿線4地区での個別説明会の開催も調整する方向だ。

◆県議会でのBルート決議案、修正や見送り模索

 この日、6月定例会が開会した県議会でも、足並みの乱れがある。最終日の7月3日に議決する方向で調整が進められていたBルート推進決議案は、飯伊地区の情勢を考慮し、修正や提案見送りを模索する動きが出ている。

 野沢徹司氏(改革・緑新、岡谷市、下諏訪町)は「県全体から見ればB。もう一度、県として一本化する必要がある」と飯伊地区の動きをけん制。一方、リニア中央エクスプレス建設促進議員連盟会長の古田芙士氏(自民党県議団、飯田市)は「数の力で押し通すのはいかがなものか」と決議案に否定的な見方を示した。提案を検討している公共交通対策特別委員長の木下茂人氏(同、伊那市)は「各会派で調整中だが、今回の試算が出たからどうこうという意見は今のところない」と話す。

◆県選出代議士、慎重協議求める

 B、Cルート沿線の衆院小選挙区から選出されている県内の衆院議員は冷静に受け止め、ルート決定に慎重な協議を求める声が上がった。

 自民党リニア特命委員会に出席した宮下一郎氏は、中間駅の「1県1駅」を原則とするJRに「Bルートを検討するなら、複数駅を設置した場合のデータも算出してほしい」と要望。JRからは「個別案件だから」として明確な返答はなかったという。

 委員会ではCルートを推す声はなかったといい、今後の県とJRの意見調整には「お互いに主張と経緯がある。どっちかが、何かをたてに押し切るようになるとまずい」と懸念した。

 後藤茂之氏は「新幹線整備の枠組みでやるのだから、県とJRだけではなく、幅広い関係者で話をする必要がある」と話した。(リニア中央新幹線取材班)

 

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