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正社員の既得権にメスを

大竹文雄氏が、WEDGEで解雇規制について書いている:
整理解雇の4要件のうち、「解雇回避努力」の中には、非正規雇用の削減や新卒採用の停止が含まれており、今回のような不況期には雇い止めという形で、まず「非正規切り」を実施することが司法サイドからも要請されているわけである。[・・・]つまり、非正規社員を雇用の調整弁と位置づけ、正社員の解雇規制と賃金を守っていくという戦略に、経団連と連合の利害が一致したのだ

したがって、労働市場の二極化に歯止めをかけるためには、非正規社員と正社員の雇用保障の差を小さくする必要がある。たとえば「正社員の労務費削減を非正規社員削減の必要条件とする」あるいは、「非正規社員を削減するのであれば、正社員も一定程度削減しなければならない」というルールを、立法措置によって導入することは直接的な手法となる。
大竹氏は、定期借地権をヒントにした10年程度の「任期つき雇用制度」などによって、雇用形態を多様化することを提案している。景気変動のショックを非正規労働者にしわ寄せする現在の雇用制度は、中高年の余剰人員を残す一方で、若年労働者の技能蓄積をはばみ、日本経済の潜在成長率を低下させるおそれが強い。このような身分差別を撤廃し、正社員の雇用保障を非正規社員に近づけることが合理的である。
コメント ( 14 ) | Trackback ( 2 )
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コメント
 
 
 
雑感です (kensho)
2009-01-22 20:23:56
終身雇用を信じて正社員になったのにそれが奪われるというような事態になると、長期契約を結ぶインセンティブが低下するのではないでしょうか。
例えば国民年金や国民保険なども剥奪されるリスクがあると判断され、回避されるかもしれません。

そもそもあらゆる契約にはリスクが付き物のはずなのに、絶対に保証される権利であると認知されていたことが問題のような気がします。
それに、契約相手(企業や国家)が絶対潰れない、絶対保証してくれる、と思い込んで皆が行動するとなると、ノーリスク志向といいますか、無責任な状態が発生するような気がします。

30年〜50年に渡る契約なんて持続できない可能性は十分あるんだから、それを絶対保証する、なんて宣伝しちゃあいけなかったんだと思います。長期契約はCDSと同様規制すべきではないでしょうか。
 
 
 
賛成 (Unknown)
2009-01-22 20:28:07
大竹氏、池田先生の意見に賛成です。
周りを見ても、パフォーマンスの低いバブル世代の中高年が多すぎます。そんな人に限って「派遣は努力が足らない」「仕事なんて探せばある」と言います。
アメリカの大学の図書館司書は重役以外は1年契約でした。
 
 
 
Unknown (jayo2008)
2009-01-22 21:20:34
邪魔なのは肩書きだけ持っている中高年管理職であり、彼等が全員辞めても現場は困らない。どうせ正社員を切るのなら、何もしない中高年管理職以上をまず切るルールにして欲しい。給料は高いし、邪魔ばかりするし、人事権は持っているし、潜在成長率を引き下げているのはこいつらだー。
 
 
 
CSRとしての新卒採用 (dona)
2009-01-22 21:40:30
>中高年の余剰人員を残す一方で、若年労働者の
>技能蓄積をはばみ、日本経済の潜在成長率を
>低下させるおそれが強い。


これってすっごく重要だと思います。よく若年失業者対策として「職業訓練」を叫ぶ人がいますが、基本的に「職業訓練」は技能者、つまりブルーカラーの「技能者」養成であり、高度技術者(エンジニア)のそれではありません。

はっきりいって、技能者養成はさほどコストもかかりませんし、厚労省管轄施設で安価かつ短期で養成できますが、逆に言えば、その程度の人材だということです。

その手の職業に就くのであれば、多くは30歳過ぎから訓練を開始してでも十分に可能です。

しかし、エンジニアや生産性の高いホワイトの養成は、訓練施設では無理で、企業での実務経験を通してでしか身につきません。(少なくとも日本では大手企業しか、それを身につけさせうる手段はないのでは?)

このため、「日本全体の人的資本の向上が潜在成長率を高める」ことが正しいのであれば、大企業が少々無理をしてても、新卒をできる限り多く採用し、エンジニアなり管理職候補としてスキルを高めさせることは、結果的・事後的に外部性をもち、潜在成長率を高め、社会全体をベターオフさせるのではないでしょうか?



 
 
 
既得権はモラル崩壊の元凶 (kensho)
2009-01-22 22:18:12
「既得権」は何のとりえが無くても享受できる、何も生産しなくても利益にあずかれるという点が非常にまずい。こんなのが蔓延っていたら、会社でも国家でも古今東西を問わず、モラル崩壊しますよね冷静に考えて。

その結果が例えば大して働かずに高給をもらうのを「年功序列なんだからあたりまえ」とかいった上、優秀なロスジェネ世代をゴミのように扱い特等席でふんぞりかえって「ゆとりが入社してくる」とか言ってるオッサン連中であったり、世代間で最大18倍もの税金負担をかけてきて「義務なんだから強制徴収。払わないと困るのはあなた達ですよ?」とかいってレクサス乗って悠々自適、介護は低賃金でヨロシクね、嫌なら責任もって移民でも何でも連れてきてよ、とかほざいてるご老人達なわけです。
 
 
 
Re:CSRとしての新卒採用 (bobby)
2009-01-22 23:01:27
>よく若年失業者対策として「職業訓練」を叫ぶ人がいますが、基本的に「職業訓練」は技能者、つまりブルーカラーの「技能者」養成であり

そう思われがちですが、実際には「貿易実務科、経理事務科、介護サービス科等ホワイトカラー等の職種を中心に多様なコースがあります」だそうです。

http://course.ehdo.go.jp/
ただし検索ソフトにバグがあるようで、具体的なコース名がわかりませんが...
 
 
 
Unknown (かも)
2009-01-23 00:08:08
>非正規社員を雇用の調整弁と位置づけ、正社員の解雇規制と賃金を守っていくという戦略に、経団連と連合の利害が一致したのだ。

 これは私はその通りだと思います。
 その上で、問題とすべきは、技能も、経験も、知識も学歴も必要としない生産ラインのワーカーの処遇だと思います。
 ラインワーカーの多くは、単純で、単調で、延々と続く作業を、決められた手順通りに忠実に厭きることなく繰り返すことを求められます。その繰り返しに間違いが無く、手抜きが無く、信頼に応えられることこそ必須です。
 だから、変わりは幾らでもいると、何時でも切られることを前提されてしまうのが、製造業における派遣や、期間工です。この階層は、同時に、海外からの労働力の流入の危機にもさらされています。その彼らを、能力がないとか、意欲がないとか非難したり、自己責任と誹謗することも出来ません。

 
 
 
 
現代版 『下放』 (ABC)
2009-01-23 00:19:35
>周りを見ても、パフォーマンスの低いバブル世代の中高年が多すぎます。

バブル世代が「使えない」という指摘はよく耳にしますね。本人達も自覚しているのではないでしょうか。

若者の失業対策としてではなく、彼ら「使えない」バブル世代を「農業」や「介護」に誘導した方が、よっぽど正しい選択だといえそうですね。「若者を農村へ」では、文化大革命時の愚策「下放」と同じになってしまいます。http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8A%E5%B1%B1%E4%B8%8B%E9%83%B7%E9%81%8B%E5%8B%95 毛沢東もあの世でびっくりしているのではないでしょうか。

「現代版『下放』政策」http://job.yomiuri.co.jp/news/jo_ne_08122203.cfm
 
 
 
Unknown (kk8n53m)
2009-01-23 00:23:05
日本は敗戦の'反省'の捌け口を反戦・反競争思想に求めたので、「人命は云々」と言うばかりで、長期的・超世代的な人口構成健全化策を取れませんでしたね。結果割ととんでもないことになってますが。
 
首が切れない高齢正社員を大量に抱える大企業はそもそもバランスシートが崩壊していると思うので、若年技能者が必要なセクターははアウトソーシングしようとすると思います。もうここまでくると、施策ではなく実験的に解決させるとしかないと思いますが。
 
 
 
Unknown (放浪者)
2009-01-23 02:33:12
これには賛成ですね。
もう少し解雇規制を緩和してもいいと思います。
ただ、緩和しすぎると最終的に安易な解雇により財政負担が増えると思われ、ある程度の規制も残しておくべきだと思います。
経団連が法人税率の引き下げを主張していることを考慮すると、法人税収が減少し、不況期には財政負担が重くなるような気がするのです。

あと、少子化も深刻ですね。
少子化対策と叫び、大臣席を用意しているにもかかわらず、実際は少子化は解決されていません。
この点はどうやって解決すればいいのか難しいですが、結婚をした人に数百万円単位での助成をしてもいいんじゃないかと考えます。将来的には総労働時間の増加にもつながるわけですし。。。
 
 
 
要するに株価の低い上場会社が解散すればよい (shousiminjp)
2009-01-24 00:12:55
会社の清算コストに余計なものが含まれなければ、
不経済な期雇用を行う会社は株価が低くなり、結果、会社を解散して株主の利益にあてることになるので自然に淘汰されていくんじゃないでしょうか?
 
 
 
生産ラインに日本人が必要 (極楽蜻蛉)
2009-01-24 06:10:40
日本の会社が正社員を守って来たのは、規則や制度を越えた家族感覚がその源をなしていると思うのですが。一つ釜の飯を食べる。それは、徳川以前の時代から遡る我々の血の中にある、お家に対する家来の忠信。実際に所謂日本の由緒ある大会社で何べんもそんな人事を見てきました。言いも悪いも、それが日本人。

生産ラインがどんどん安い人件費の場所と移される中で、これから地球を人間のごみから救済するには、耐久性があり、また、UPグレイド、リデザインが可能な製品が必要になると思うのです。私が今まで経験した生産ラインに携わるメキシコ人、アメリカ人、中国人中で、物づくりの大切さや意味を心から思う時、日本人にまさる人種はいません。

2昔前に3Kをやる日本人はいなくなったと言われました。それは、お金一番主義で仕事の意味や価値が見失われた為と思います。今の子供達に今から働く事の社会的重要性、職業の選択の自由と喜びを教えていかなければ、この狭い日本に外国人生産ラインワーカーがあふれる事になってしまいます。(実際には、もうそうなりつつ)

正社員も派遣社員も基本的人権が憲法で保護されているのだから、仕事の選択も入社時期の選択も個人の自由であるべき。解雇規制ではなくて、就業規制緩和として、会社も個人も選択余地を相互にもてるようにすれば良いと思うのですが。情報が寸時に手に入る時代に、柔軟性の無い規制や制度は、即座に変身する経済や消費トレンドにはついていけない気がします。この小さい日本が、世界で残れる道を早め早めに対処しなければならないのでは無いでしょうか。
 
 
 
ノンワーキングリッチから収奪せよ (ravenoftime)
2009-01-24 10:57:14
>Re:CSRとしての新卒採用 (bobby)
>http://course.ehdo.go.jp/

私が思いますに、職業訓練に外国語の講座が殆ど無いのはなぜなのでしょうか。
グローバルで戦うには英語は必須、出来れば中国語やヒンドゥー語が分かれば引く手あまたといったところでしょうが、それ無しでは結局ローカルでしか通用しないブルーカラー育成訓練以上のものにはならないのでは?


ところで私の疑問の一つとして、食い逃げようとするノンワーキングリッチや年金生活者にどうやって若者の犠牲の代償を払ってもらうかということがあります。
経済成長時代に未開で豊かな市場を相手に仕事をし、付き合いと称しては酒を飲んだりゴルフをしたり、年功序列で賃金を貰って悠々と引退する中高年に対し、前の世代に荒らし尽くされた市場を爪で岩を削るように成果を集め、能力主義と成果主義に追われるように自己研鑽を求められながらもろくに賃金は上がらず、中には疲れ切り心を病んでしまう若者世代。
盲目的に仕事をすればよかった中高年世代に対して今の若者の方がずっと苦労しているのに、中高年世代は今の若者は覇気が無いだのハングリーさが無いだの言いたい放題。
お前らのツケを払っている若者に何ていい草だよと思ってしまいますよ。
 
 
 
WEDGEの記事 (ペンギン)
2009-01-24 12:50:37
大竹さんの案として出ている、
「正社員の労働費削減を非正規社員削減の必要条件とする」または「非正規社員を削減するのであれば正規社員も一定程度削除しなければならない」
というルールに興味を引かれました。

このままでは監視機構が無いのでうまく実施できないと思いますが、何かアイデアを付け足せば議論として乗せられるのでは?
連合が反対するのと、政治バイアスをどう処理するかなどの問題もあるので簡単ではありませんが、方向性は合っているように思います。
 
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