県内の周産期医療の現状を取材した際、県立中央病院の新生児集中治療室(NICU)に入れてもらった。保育器の中にいる手のひらに乗るほどの赤ちゃんの小ささは、私の想像をはるかに超えていた。
看護師たちは、赤ちゃんに異常がないか常に目を光らせていた。「赤ちゃんを救っているのは医者ではなく看護師です」。新生児科の内藤敦医長の言葉が印象的だった。
眠りに就く前に酒を飲みながらその日の取材を振り返り、NICUに偶然いた知人の看護師にメールで取材協力への謝意を伝えた。返ってきたメールには「あの小さな子供たちが、元気にお酒を飲む日が来ることを夢見て私も頑張らなくっちゃ」と書かれていた。
将来、成長した赤ちゃんと年を取った私がどこかで再び巡り合って酒を飲んでいる光景を想像したら、なんだかうれしくなった。
医師と看護師の並々ならぬ努力があってこその周産期医療であることを思い知らされた。【沢田勇】
毎日新聞 2009年6月19日 地方版