開発日記其の四拾弐
では、振り返ります。本日は完全なるKey10thフェス日記です。
27日。
会社から4時に新大阪駅へ移動。そこから品川へ。
すぐ、インターシティに向かい、すぐさまリハ的な音響チェックをする、というかさせられる。
いきなりプロのPAを前に、へなちょこギターを弾き、歌うおれ。
すげー! これがおれの弾き語りする環境なのかー!!
とにかく音がいい! すげースピーカーなんだ。
リバーブは予定通り、深めにしてもらう。
これは気持ちよく歌えそうだ。緊張するより、わくわくしてきた。
隣の展示ブースを見て回る。
年表に個人の出来事も書き足してください、と言われたので、いろいろ落書きする。「麻枝 鬱になる」「麻枝 ワンダと巨像に命を救われる」などなど。
その後、ホテルにチェックイン。Keyのメンバーの部屋は同じ階で、大体固まっていた。
修学旅行のようだ。
夜は、中華ヴァイキングのお店で夕食。
ここはあまり美味しくなかった…。
部屋に戻って風呂に入ると、ビールを販売機で買って、Na-Ga氏の部屋へ遊びにいくことに。
だが、どの部屋がNa-Ga氏の部屋だったか思い出せない。
廊下で「Na-Gaく~ん」と名を呼びながらさまよっていると、樋上さんが出てきて、ここ、と向かいの部屋を指さし教えてくれる。
Na-Ga氏に、○○さんからこんなメールもらったんだぜ!?と自慢する。
修学旅行のようだ。
2時になったので部屋に戻って就寝。
翌朝は8時半集合。
その前にNa-Ga氏と待ち合わせをして、朝食をとる。
ハプナというブッフェで食べたんだが、こいつが美味しい!! なんでも人気ランキング日本一のブッフェなんだそうな。
焼きたてのフレンチトーストと、パンケーキにハニーシロップをかけて、食べまくる。最高!
インターシティに移動。
すでに3000人ぐらいのお客が押し寄せてきているのだそうな。
それは壮観な絵に違いない! 是非見ておきたい! といろんな窓から外を覗いてみるが、よくわからなかった。
Keyらじのテーブルに飾る花がない、とのことで、Na-Ga氏としのり~と餅介さんが買いにいくというのでついていくことにする。
もろに並ぶ客たちに対して逆行して歩いていく。
おれの後ろを歩くしのり~は内心ハラハラドキドキしていたそうだ。おれが居ることで。
そうそうばれるもんじゃないって、言ってあったんだけど。
その言葉通り、まったく気づかれることなく、帰ってこれた。 ほっとするしのり~。
客の多さもいまいち実感できなかった。というのも、整理券を配り終えた後だったからだ。時間つぶしをしているお客さんはあちこちで散見されたが、ことごとくPSPをやっていたのには笑った。
結局おれは一度も、今回、客に気づかれることはなかった。都乃河くんや折戸さんは気づかれて、声をかけられたり、サインをねだられたらしい。(羨ましい…有名人のようじゃないか!)
そろそろお客を入れるとのことで、我々は控え室へ移動。
樋上さんがメイクを終え登場。すげー! 見たこともない髪型をし、変貌を遂げていた!
イベント一発めはKeyらじチーム。
最初は舞台袖で見ていた。
お客さんとの一体感がすげー。大盛り上がり。
空気を満喫したところで控え室へ戻る。
その途中の通路でも、至るところで、Keyらじが聞こえてくる。
すべてのスピーカーからイベントの生中継が行われているのだ。
ただマイクの音しか拾わないので、お客さんの反応がまったく聞こえず、だだ滑りしてるかのように聞こえてしまう(苦笑。
控え室ではテレビをつければ、いろんなところに設置されているカメラからの映像を映しだすことができる。
なんかサスペンスタッチの刑事ドラマを見ている気分であった。
つつがなくKeyらじが終わり、続いては、都乃河くんと魁くんと豪華声優陣によるクラナドトークイベント。
待ち時間の間、都乃河くんは、あまりのプレッシャーに周りの空気を淀ませるほどに、陰鬱としている。魁くんはいつも通りだ。 こちらは肝が据わっている。
開始前、井上さんの「井上喜久子です。17歳です」の後に「おいおい」をみんなで練習していて笑った。
控え室で聴いていたが、ふたりがMCというより、春原役の阪口さんがMCのようだった。
都乃河くんは、進行をとちりまくっていた。またこいつ凹むだろうなーと思ったら、終了後、俯いたまま動かなくなっていた…。
そしておれの出番。
クラナドトークイベントが終わってからは緊張しっぱなしだった。
だって、ひとりですべてをやるんだから。歌も演奏も。
頼れるものがなにもない。その不安さたるや…。
残り五分ぐらいになってきて、腹をくくる。
腕立てをして、体を温める。
「オンタイムでいきますか?」とスタッフに訊かれる。
オンタイム? 社長が代わりに、時間通りにいきます、と答えていた。そういう意味か。
午後4時。おれ弾き語りミニライブ、スタート。
舞台の階段を上った。
椅子に座ると、ライトに照らし出される。
客席が暗かったので大勢に見られている、という緊張感はなかった。
ギターを抱え、今回のライブに至った経緯を話す。
そして、ラスリグからスタート。
サビの声を張り上げる。誰もこんなラスリグ聴いたことないだろう。それぐらい力を、思いの丈を込めた。
歌が下手なおれの精一杯の表現。
だが、ラストのギターフレーズをとちる。
緊張感が解けかけたが、なんとか乗り切った…。
練習じゃ、絶対間違えないようなことろだったのに。
これが本番というものなのか…。
でも、お客さんはすげーーー温かかった。
お客さんに支えられたライブだった。
拍手がものすごく長い。
鳴りやまないぐらい。
受ける側にとっては、それは凄まじかった。
素晴らしいお客さんたちだった。
後にも先にもこんな恵まれた環境で弾き語りをすることなどないだろう、と思った。
立て続けにBirthday song,Requiem。
その後MCで、曲の解説をしていく。
Song for Friendsは学生時代に書いた曲で他にもたくさんその頃の曲が埋もれてしまっていると話すと、「サルベージしてくれー!」という声が。
Hanabiは難曲。とちる!
初日はおれがラストで、1時間を超えてもOKということだったので、歌詞の意味を長々と解説する。
続いて、僕らの恋。
普段ならアルペジオもとちらないんだが、んもうイントロからぼろぼろ。
でも、一番、歌詞の内容通りに歌い上げきることができたと思う。
ここからはクラナドタイム。
ひとひらの桜と、その時ちょうど放映されていたアニメ・クラナドアフターストーリー第16話~第18話に感動、落涙し、その衝動だけで作った、汐のための子守歌。
ラス前、クライマックスに据えたのは、大好きなLife is like a Melody。
そして青空。
弾き終えると客電がつき、ようやく、お客さんの顔が見れる。
目に焼き付けておこうと、隅々まで見回す。
「だーまえ」と書かれた応援看板を持つお客さんもいた。
深く深く礼をして、舞台を降りる。
すぐ巻き起こるアンコール。
颯爽と出ていって、二日前ぐらいに思いついた、夏影をお客さんと一緒に歌おう!タイム。
歌詞表示もないのに、お客さんは一生懸命に歌ってくれる。本当に一体になっている感じがした。
ライブってすごいな。
こんな下手くそでも、感動をもらえるなんて。
後から聞いた話だけど、泣いてくれていたお客さんも結構いたんだそうな。
すごいな。こんなおれでも感動をあげられるなんて。
手を振って、舞台を降りた。
この日は昼も夜も弁当。 スタッフ分山のように積んであった。
すぐKeyスタッフはステラボールのライブ会場へ移動する。
時間がぎりぎりで息切らせながら到着する。
初日は是が非でもオープニングから見たかったからだ。
入るやいなや会場の盛り上がりがすげーことになっている!
ラスリグからライブは幕を上げる。
今回は、バンドメンバーがすごいのね。プロ、セミプロによって構成されている。
歌い手さんたちも、歌いやすかったようだ。
おれの心配事は一点、Karmaで映像と音の同期がずれないか、それだけだ…。
Liaさんが現れ、時を刻む唄を歌う。すげー! こんな難曲をこれだけ歌い上げて盛り上げられるって、どんな歌唱力だ?
そして、Karma。今回の隠し球。動画付きなのだ。これもすげー! Liaさん、さらに歌、上手くなってないか? サビの盛り上げ方が尋常じゃない。
映像とのマッチングも凄まじい。それは映画でもPVでもライブでもない、新しい何かだった。それが生まれた瞬間だった。
誰もが身じろぎせず見て聴き入っていたように見えた。
そして、Ritaさんの登場によりロックモードに。
圧巻だったのは、Little Busters!-Little Jumper Ver.-。ものすごい盛り上がりだった。こんなにライブ映えする曲だったんだ! 特に、「頬には涙を一滴の涙を」の後のブレイク明け。ものすごいパワーが炸裂していた。瞬間最大風速の盛り上がりが客席と一体となって生まれていた。 素晴らしいライブだった。
ライブ後、あれだけ落ち込んでいた都乃河の野郎が、すげー元気になってはしゃいでいるではないか!
Ritaさんに励ましてもらったかららしい。なんて単純な奴だ!!
ホテルに帰り、シャワーを浴びると、またビールを持って、Na-Ga氏の部屋に遊びにいく。
そして携帯で、おれの弾き語りの感想を探してみる。
悪くない評価のようだ。わーい!と調子に乗って歌を歌ってたら、他の部屋の人たちもどやどやとやってくる。
ここら一体の部屋に響き渡っていたようだ…(汗
就寝。
二日目。
昨日と同じく、朝食はハプナで、フレンチトーストとパンケーキとスクランブルエッグとウィンナーをもりもり食べる。
インターシティのトイレは、ウォシュレットなのがありがたい! 心おきなく食べられる。が、絶対太るな…。
今日はイベントではトップバッター。
コスプレイヤーさんが着替え終えた後の小さな控え室で、朝から、ひとり発声練習をして喉を温める。
昨日のように緊張はしなかった。
うし!と舞台への階段を上る。
調子がいい!
声の出が、断然昨日よりいい。
「今日のおれならいける気がする!」と言って、歌ったHanabiは、連日とちる。
だが、温かい拍手に包まれつつ、歌い進めていくことができた。
アンコールの、夏影をみんなで歌おうタイム。スタッフが頑張って、一日で歌詞がモニターに表示されるようにしてくれたのだ!
そして最後にどっきりのようなものが待っていた。
ラストのフレーズを歌っていたら、おれの歌に被ってくる女性の歌声…。
弾き終えた途端、肩を叩かれる。振り向いた先、そこに居たのは、Liaさん。
ホワーイ!?
頭が真っ白になる。
だが時間が押していたので、何かし始めようとするLiaさんを必死に嗜めるおれ。
手を繋いで、客に礼をして、それでなんとか収まった。
そして、やりきった。
正月休みから始まったおれの弾き語りライブへの挑戦…
それがその時、終わった。
夜は、昨日と同じくステラボールでのライブを見る。
ただ、この日はラストに我々が舞台上で挨拶することになっているのだ。1700人以上の前で!!
出だしから異常な熱気。
Little Busters!も盛り上がる!
でも、アンコールのjumper ver.は聴けないのだ。アンコールの間に舞台裏へと移動して、控えておかなくてはならないからだ。
後ろから回り込まなければならないので、一度表に出て、遠回りをする必要が。
寒い中、みんなでひたすら歩く。驚くほど遠かった。
中に入ると通路で、Ritaさんがスタンばっていた。 都乃河の奴がハイタッチをしてまた上機嫌になっていた。
おれたちは、控え室で横一列となり、挨拶の練習をする。
ほんとはMCはなしで、礼だけをしてはける予定だったんだけど、あまりに決まりが悪いと思い始め、仕方なく、おれが喋りることに。
舞台に続く階段で待機。おれは裸足。
鳥の詩が終わり、バンドメンバーがはけてくる。
お疲れさまでした!
そして、Liaさんに呼ばれて、チーム・Key入場。
折戸さんがおれの前で、シールドに足を引っかける。そして、回る。回る。巻き起こる折戸コール。
先に行ってくれないと順番が崩れるので、待つ。
一列に並び、Liaさんからマイクを渡される。
…歓声で喋れない。
収まるのを待つ。
そして、
「これまでの10年間はみなさんのおかげでした! ありがとうございました!」
と発する。
…すごい歓声で続きが喋れない。
「これからもずっと続いていくKeyをよろしくお願いします!」
…すごい歓声で続きが喋れない。
「本日はどうもありがとうございました!!」
みんなで手を繋ぎ深々と礼をする。心の中で10数えることになっている。
1、2、3、4、5、6、7、8、9…10。
顔を上げる。歓声は収まらない。
巻き起こるおれコール。収め方がわからない。折戸さんに訊く。手でこうしろと言われるが、よくわからない。
もう、このまま行こう、と肩を押される。
おれは最後の最後で期待に応えられず、申し訳ない気分になるが、そのまま舞台を後にする。
Key 10th Memorial FES.終了。
中打ち、なるものに参加する。本番の打ち上げに参加できないライブ関係者の方々が参加できる、ライブ会場で行う打ち上げのことだという。
広い通路に集まって、乾杯。
Liaさんに挨拶すると、昼間の弾き語りライブ直後にも言われたのだが、「ぜったいに、ライブでコラボしましょうね!」と念を押される。
いやいやいや!と返すおれ。
1st placeの村山さんも混じってきて、おれのライブすごくよかったと言ってくれる。青空をパンクバージョンで歌ってみてほしいとのこと。おれの声はパンクに合うらしい。まじっすか…。でも青空はどうかと…(汗。
タクシーで大移動。
場所をしゃれた飲み屋さんに移し、本打ち上げ。
ボーカルさんの方々は、バンドメンバーたちと話していて、なかなか入っていけなかった。
トイレにいく途中にRitaさんとすれ違う。おれが話しましょうよ!というと、快諾してくれて、その後は、Ritaさんとずーーっと話してた。
隣に茶太さんがいて、茶太さんはふたりの話をずーーっと聞いている形だった。
途中社長に、「おい、麻枝! 茶太さんのアルバム作ったれや!」と言われる。簡単に言うな、と思うが、そうなのだ。茶太さんは、持ち歌がだんご大家族だけなので、とても申し訳なく思っているのだ。これほど貢献頂いてるのに。次のライブまでにはアルバムとはいかずとも、何曲かは是非ご用意したい。
その後、なぜか、絶対私を避けてる、嫌われてると思ってましたと誤解が生まれていたのでRitaさんとメル友になる。
午前3時ぐらいにお開きになる。さすがにこの時間からNa-Ga氏の部屋には遊びにいけず、大人しく部屋に戻る。
就寝。
翌朝。11時半に集合。
日本一のハプナで昼御飯。
やはりハプナは美味い!!
長い列ができていたステーキを四枚も食らう。すげー腹一杯になった! なぜそんなに食らったかというと、前に並んでいた都乃河の食いしん坊が、5枚も切ってもらっていたので、ならおれは4枚ぐらいはいけるだろうと軽く見積ったのだけど、後で聞けばその5枚はふたりぶんだったという…。
食後、社長と社員ほぼ全員は帰路へ。
おれ、折戸さん、都乃河の野郎の三人はG’sマガジンさんの取材を受けるため移動。藤井くんも同行。ほんとは樋上さんもだったのだけど、体調不良で不参加に。
超でかいビルの展望のすごい会議室で今回のイベントの取材を受ける。
とにかく温かなお客のみなさんに支えてもらったイベントでした、こちらが感動をもらいました、と語る。それに尽きる。
取材が終わると、折戸さんと都乃河くんも帰路につく。
おれと藤井くんはアニメ制作チームのみなさんと夕飯を食べることになってたので、時間が夜まですっぽり空くことに。やることもないので、ホテルに戻り、藤井くんのノーパソを借りて、弾き語りの感想をまた探してみる。
悪く書いてる人なんてほとんどといっていいぐらいいなかった。
でもやっぱり、まず感想の頭に「決して上手くはないけど」「ぶっちゃけ下手だけど」と付くのね(苦笑
それを前提に、「けど、良かった」「けど、感動した」といった感想が並ぶ。嬉しい。
帰りの新幹線の中、藤井くんがぐーすか眠る横で、おれはささやかなる自分へのご褒美にと○○さんにメールしてみる。レコーディングの日以来のメール。イベント終了しました、という旨を伝える。すぐ返事が来る。素晴らしいご褒美だ。そして、このささやかな幸せ気分を抱いて、今は眠ろう。
『汐のための子守歌』
いつかでいい 聞いてほしい 闇の中にいた日を
どんな希望も光もなく ただ過ぎゆく悲しみの日
いつかでいい 聞いてほしい 君のママと過ごした日
すべてが輝いて見えた つまらないことも喜びに変わった
唐突に降る雨からも ママは守ってくれたよ
その手を信じて生きたら
君がいたよ
君といたよ
渚に描いた 君の名は今でも
いつかでいい 君がずっと大きくなったとき
パパと海に行ってほしい
きっとママとよく似た 君のそばで波を
あの日のように見たい