- 第1章 MPEGの概要
- 第2章 MPEG-1
- 2.1 MPEG1システム - 2.2 MPEG-1ビデオ - 2.3 MPEG-1オーディオ - 第3章 MPEG-2
- 第4章 MPEG-4
- 第5章 MPEG-7
- 付録1. 参考文献
- 付録2. 関連ホームページ
第2章 MPEG-1 - 2.1 MPEG1システム
2.1.1 MPEG-1システムの概要
映像と音声のデータなどからなるアプリケーションをCD-ROMなどのディジタルストレージメディアに記録・再生する場合、映像や音声の符号化されたストリーム(ビット列)と付加データなどのストリームを、同期をとりながら統合化して1本のストリームにする必要がある。MPEG-1システムは任意の数の符号化された映像や音声、付加データなど個別のストリームを多重化し、それぞれの同期をとりながら再生するための方式を規定している。MPEG-1では1本のストリームの中に唯1つのプログラムを構成する。主なアプリケーションとしては、1.5Mbpsまでの転送レートをもつディジタルストレージメディアやコンピュータ・ネットワークなどを想定しており、実用例としてはビデオCDが挙げられる。
2.1.2 多重方式と同期方式
MPEG-1システムではパケットによる多重方式が用いられており、映像・音声・付加データなどの個別のストリーム(elementary_stream)はパケットと呼ばれる単位に分割される。パケットのサイズはアプリケーションにより決めることができる。そして、この映像や音声などのパケットを順次切り換えてつなぎあわせることにより時分割の多重が実現される。パケットにはパケットヘッダが付加され、そこには個別のストリームを識別するコードやパケットのサイズ、同期再生のための時間情報(PTS:Presentation Time Stamp, DTS:Decoding Time Stamp)、その他の制御情報などが記述される。また、パケットを任意の数だけ集めたものをパックと呼ぶ。MPEG-1システムストリームはこのパックが複数個集まって構成される。各パックにはパックヘッダが付加されており、パックの開始コードに続いてSCR(System Clock Reference)と呼ばれる基準時間情報と多重化のビットレート(mux_rate)が記述されている。パックヘッダの後にはシステムヘッダを付加することができ、ここにはストリーム全体のシステムパラメータ(個別ストリームのビットレートやバッファサイズなど)が記述される。このようにシステムストリームがパックを単位に構成されることで、ストリームの途中からの再生が可能となる。
映像と音声を同期再生するためにMPEG-1システムではSTC(System Time Clock)と呼ばれる基準時間が定義されている。MPEG-1システムの復号器は90kHzのSTCを持っていて、符号化した時の基準時間が復号器のSTCで再現されるようにパックヘッダ中のSCRの値が参照される。映像や音声にはそれぞれアクセスユニット(映像は1フレーム(ピクチャ)、音声は1オーディオフレーム)と呼ばれる復号・再生の単位があり、その単位ごとに基準時間のどこで復号し、いつ再生すればよいかを示すタイムスタンプがパケットヘッダのPTS,DTSに記述される。PTSはアクセスユニットを再生する時刻でSTCとPTSが一致したときにアクセスユニットが復号器から出力される。また、MPEG-1ビデオで符号化されたストリームは復号する順序と再生する順序が異なる場合があるため(MPEG-1ビデオ参照)、この場合にはPTSに加えて復号する時刻を示すDTSが付加される。これらのタイムスタンプにより映像と音声を同期再生することができる。 MPEG-1システムの考え方はMPEG-2システムのプログラムストリームに引き継がれているので、同期再生を行うための基準復号器はMPEG-2の項を参照されたい。