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発信箱:太陽がもったいない=福本容子(経済部)

 今度の日曜は夏至。東京では4時25分に太陽が昇る。北海道の根室はなんと3時37分。寝ていると分からない。

 東京で4時台の日の出は年に114日もある。朝7時に起きる人は、この間、毎日2時間以上の明るい時間を布団の中で過ごす。2×114とざっくりした計算で年228時間。20年続けたら、1年分の昼間を寝たまま失ってしまう。MOTTAINAI!

 102年前、イギリスの建築業者、ウィリアム・ウィレットさんが訴えたことをまねてみた。英国で初めてサマータイムを提唱した人である。

 4月から9月まで80分、時計を進める案だった。午後7時の日没は8時20分になる。「7歳の子供が72歳になるまでに3年分の昼間が稼げる」。それをしないのは「文明の欠陥」とまで言い切ったパンフレットを自費で作り、国会議員らに配って回った。

 温室効果ガス削減が目的じゃない。早朝に乗馬を楽しんでいて「こんなに明るいのにみんな寝てるのはもったいない」というおせっかい精神を起こしたのが出発点。気分、幸せ感の問題だったのだ。

 第一次世界大戦が始まり、結果的に石炭の節約目的で始まった夏時間だったけれど、多くの国で続くのは幸せ感の味をしめたからだろう。

 日本は温暖化とか省エネとか労働時間短縮とかで議論したのが多分よくなかった。20年も「検討課題」で、サミット議長国の年だけ半歩前進するけれど、実現しない。議論ばかりして変化を起こせない日本の政治の象徴のよう。

 「何もしないと何も得られない」とウィレットさんのパンフレット。文句と改良はやってみてから。梅雨の切れ間の晴れた夕方、これが8時だったらと想像してみません?

毎日新聞 2009年6月19日 0時07分

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