デリケートな問題なので触れなかったのですが、やっぱりエントリしておきます。
先月、サンプロに加藤紘一氏が出演した際、竹中平蔵氏に小泉改革の影の部分として「今や社会全体がイライラしている」と述べた理由のひとつに、自殺者数を上げていました。
よく「小泉改革で自殺者数が増えた」といわれますが、本当でしょうか?
■内閣府>共生社会>自殺対策>平成20年版「自殺対策白書」(http://www8.cao.go.jp/jisatsutaisaku/whitepaper/w-2008/pdf/gaiyou/pdf_gaiyo/g04.pdf)
○自殺者数の推移
○男性の年齢階級別(10歳階級)の自殺者数の推移
○平成18年までの職業別の自殺者数の推移
○平成18年までの原因・動機別の自殺者数の推移
オレンジは加藤氏が宮沢内閣官房長官(平成3年11月)、自民党政務調査会長(平成6年7月)、自民党幹事長(平成7年9月)と、政権と党の政策中枢にいた時期。グリーンが小泉政権です。
自殺者数が劇的に増加し、年間3万人を超えるようになったのは、平成9年から10年にかけてです。
「男性の年齢階級別(10歳階級)の自殺者数の推移」を見ると、45歳から64歳までが多くを占めます。
また「平成18年までの職業別の自殺者数の推移」を見ると、無職、被雇用者、自営業の順ですが、その他も平成9年から10年にかけて僅かながらの変化があります。
「平成18年までの原因・動機別の自殺者数の推移」を見ると、健康問題が圧倒的に多く、次いで経済・生活問題が続きます。その他もやはり平成9年から10年にかけて僅かながらの変化があります。
平成9年から10年にかけて、いったい何が起こったのか?
秋頃からの経済危機として北海道拓殖銀行、山一證券の破綻はよくいわれるところです。が、この約8,000人にも上る劇的な変化が、「経済・生活問題」だけの理由だとすれば、経済がよくなれば自殺者数は減少するはずです。実際に平成15年をピークに「経済・生活問題」が原因・動機とする自殺者数は減っています。
しかし、今なお全体的には高止まりを続けている。
■厚生労働省>統計調査結果>平成20年「人口動態統計の年間推計」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suikei08/index.html)
○出生数及び合計特殊出生率の年次推移
昭和22年〜24年にかけての第一次ベビーブーム世代(いわゆる団塊の世代)が、平成9年には48〜50歳を向かえました。その数約800万人にも上り、様々な面で日本社会に大きな影響力を及ぼしてきた世代が、年齢階級別自殺者数が最も多い45〜54歳の領域に突入していることが分かります。この世代の人口は他の世代を圧倒します。自殺による死亡率が今までと同じであれば,必然的に自殺の実数は大幅に増加するはずです。
もう一度「男性の年齢階級別(10歳階級)の自殺者数の推移」を見てみましょう。45〜54歳の自殺者数の増加の兆しは、平成2年から見られます。第一次ベビーブーム世代は41〜43歳でした。つまりその世代が、各年齢階級を引き継ぎながら自殺の自然増に作用しているのではないか、とも考えられるのです。
自殺の動機の筆頭原因は健康問題です。その中には「心の病」など、経済・生活問題による間接的な動機もあるのかも知れません。不幸にも自ら命を絶たなければならなかった方、ご家族は、誠にお気の毒で、悲しいことです。当事者でなければ分からない、止むに止まれぬ事情もあったのでしょう。
しかし、すべてを「小泉・竹中構造改革」にしてしまうと、事の本質を見失うと思うのです。それは自殺予防への対処を見失うことに他なりません。
自殺者数を減らすには、健康問題への不安を取り除くこと。そして、特に男性の45〜64歳の年齢層には、ご家族、職場、企業、地域が注意を払ってあげられるような環境の整備が、社会や政治には求められるのではないでしょうか。
※参考──「日本における自殺の精密分析」(http://www.tokyo-eiken.go.jp/SAGE/SAGE99/sage.html)
by 向日葵のら
卵チャーハン